News

2020.07.30 17:30

『ジョーンの秘密』イギリス史上最も意外な女性スパイが直面したジレンマを監督&プロデューサーが明かす

  • Fan's Voice Staff

イギリス史上最も意外なスパイの実話から生まれた衝撃作『ジョーンの秘密』の時代背景を、トレヴァー・ナン監督とプロデューサーのデヴィッド・パーフィットが語るインタビューが到着しました。

世界がミレニアムに浮かれていた2000年、ロシアのKGBに核開発の機密を漏洩していた“核時代最後のスパイ”がMI5の手によって暴かれたという驚愕のニュースが、英国を駆け抜けました。ただ、人々に衝撃を与えたのは、その事実よりも容疑をかけられた“その人物”。まさに隣に住んでいそうな80代の老女は、信じられないほどの過去を隠し続けて静かに生活を送っていました。この数奇な実話をもとに英国の作家ジェニー・ルーニーが書き上げたベストセラー小説を映画化したのが、『ジョーンの秘密』です。

若き日のジョーン(ソフィー・クックソン)が過ごした1930年代のケンブリッジ、さらには才能豊かな科学者となった彼女が、世界をより良い場所にするために自分にできることをすると誓った1940年代はどのような時代だったのか。

“私たちは女だから、絶対に疑われない”

「全編を通してテーマの一つになっているのが、当時の女性たちが、とるに足りない存在として背景におしやられ、無視されていたこと。だからこそ女性たちが、スパイ活動、あるいはそれ以外のことにも簡単に手を染められる存在だったことが示唆される」と語るのは、プロデューサーのデヴィッド・パーフィット(アカデミー賞受賞『恋におちたシェイクスピア』など)。

「今回(映画化するにあたり)信じられないようなことをいろいろと知ることができた。ニューナム・カレッジ(ケンブリッジ大学の、女性だけで構成されているカレッジ)で学んでいた数多くの優秀な女性たちが、卒業時にもらったのがまさか証書だけだったとは!ケンブリッジにこういう世界があったなんて全く知らなかった。男たちが取得する学位は彼女たちには与えられなかった。びっくりだよ。しかもそれが戦後まで続いていた」

監督のトレヴァー・ナンも、「そんな区別が行われなければならなかったなんてショックだ。調べたら、それが1951年まで続いていたことがわかった。同じ試験を受けたにも関わらず、低く評価されていた」 と続けます。

そんな時代背景を知り、ジョーンのような女性が直面した現実やジレンマを本作に反映させたいと考えたデヴィッド。「この作品は、ケンブリッジ・スパイ自体を描いたものではないけれど、史実には忠実だと思う。大戦の大部分を追っているし、観客はあの時代に関して、より多くの知識を得ることができるはず。でも、僕らがみんなに理解してほしいのは、これが非常に道徳的なジレンマであり、この極めて重要な仕事に多くの女性たちが関わっていたということ」

ナン監督も、「これはものすごく大きなテーマについてのスケールの小さいストーリー。彼女らが携わっているのは、世界史の流れを変えるようなもの。あるいは、世界史が破滅的に悪い方向に行くのを阻止するもの。彼女らの弱点や夢や切なる思いに、観客はみな共感できると思う」と、作品に込めた思いを語りました。

トレヴァー・ナン監督

皮肉なことに、女性であるがゆえにスパイである秘密を約50年間隠し通せたジョーン。祖国を裏切ったのか、KGBに利用されたのか、それとも──スリリングな謎解きに息をのみ、今を生きる私たちに深くつながる物語であることに気づかされる衝撃作『ジョーンの秘密』は8月7日(金)公開。

==

『ジョーンの秘密』(原題:Red Joan)

夫に先立たれ、仕事も引退したジョーン・スタンリー(ジュディ・デンチ)は、イギリス郊外で穏やかな一人暮らしを送っていた。ところが、2000年5月、ジョーンは突然訪ねてきたMI5に逮捕されてしまう。半世紀以上も前に、核開発の機密情報をロシアに流したというスパイ容疑だった。ジョーンは無罪を主張するが、先ごろ死亡した外務事務次官のW・ミッチェル卿が遺した資料から、彼とジョーンがロシアのKGBと共謀していた証拠が出てきたというのだー。彼女の息子で弁護士を務めるニック(ベン・マイルズ)立ち会いのもと、次々と明かされるジョーンの驚くべき真実──。仲間や家族を裏切ってまで、彼女は何を守ろうとしたのか。そして、ジョーンを突き動かしたものとは?

出演/ジュディ・デンチ、ソフィー・クックソン、トム・ヒューズ、スティーヴン・キャンベル・ムーア、ベン・マイルズ
監督/トレヴァー・ナン
原作/ジェニー・ルーニー著「Red Joan」
2018/英語/イギリス/101分/5.1ch/カラー/スコープ/PG12/字幕翻訳:チオキ真理

日本公開/2020年8月7日(金)TOHOシネマズ シャンテ他ロードショー
配給/キノフィルムズ
公式サイト
© TRADEMARK (RED JOAN) LIMITED 2018