【ネタバレ無し感想・評価】『WAVES/ウェイブス』音楽が感情に寄り添う”青春体感映画”
- Fan's Voice Staff
A24が発掘した気鋭トレイ・エドワード・シュルツ監督による『WAVES/ウェイブス』。本記事では、公開に先立ち開催された試写会に参加した日本のファンの感想とともに、本作の見どころをご紹介します。
フロリダの高校生タイラーは、レスリング部のスター選手。厳格な父親のプレッシャーを重荷に感じながらも、優等生として生きてきました。ところがある日、肩を負傷したことなどから人生の歯車が狂い出し、やがて決定的な悲劇が起こります──。
ある夜を境に、幸せな日常を失った兄と妹を主人公とした青春映画『WAVES/ウェイブス』は、2019年のトロント国際映画祭で上映され、『パラサイト』や『ジョジョ・ラビット』などアカデミー賞を争う注目作が集まる中、同映画祭始まって以来最長のスタンディングオベーションを浴びました。「一生に一度の傑作」「今年、最もまばゆい体験」と一躍話題となり、北米限定公開のオープニング(NY/LA)では、第91回アカデミー賞で作品賞を受賞した『グリーンブック』を超える成績を記録しました。
A24の秘蔵っ子トレイ・エドワード・シュルツの新たなる挑戦
子どもの頃から映画製作を始めたトレイ・エドワード・シュルツは、ビジネス・スクールを経て映画界に飛びこみ、テレンス・マリック監督の『ツリー・オブ・ライフ』(11年)、『ボヤージュ・オブ・タイム』(16年)などに製作スタッフとして参加し映画製作を学びました。
「WAVES/ウェイブス」試写で。
ルベツキのアシスタントとしてテレンス・マリックの現場にいた、31才の監督が撮った”プレイリストムービー”。
片時もじっとしてないカメラと鳴りやまない音楽と点滅し続けるライトと狭まっていく画角。
物語の世界に力づくで引っ張り込まれる感。すごい。#WavesMovie pic.twitter.com/pclbdB0WGi— Teatro dell’asino (@robasuke2015) March 17, 2020
自身の短編を元にした長編デビュー作『クリシャ』(15年)は、SXSW長編ナラティブ部門で審査員大賞と観客賞をW受賞。米国のインデペンデント映画祭を席巻したこの作品を買付け、配給したのが、『ムーンライト』(16年)、『レディ・バード』(17年)、『へレディタリー/継承』(18年)といった話題作を次々と世に送り出し、映画ファンの注目を浴びている米国の映画会社A24でした。
『WAVES / ウェイブス』@FansVoiceJP 独占最速試写にて
音が物語を引き出し、画が心をざわつかせる。徹底した音楽-映像-台詞の三位一体が導く、観客と主人公の完璧なるシンクロ。気付けば心がズタボロに引き裂かれる青春体感映画だが、しっかり希望も感じられる。A24だから作れた良作!#WavesMovie pic.twitter.com/M1U7QpdwFu— じぇれ@映画垢 (@kasa919JI) March 17, 2020
A24はシュルツ監督の長編第2作目となる心理スリラー『イット・アット・カムズ・ナイト』(17年)を製作し、批評家から絶賛されました。そして両者の蜜月を象徴する第3作目となったのが、『WAVES/ウェイブス』です。シュルツ監督のパーソナルな体験も反映された本作は、10年間に渡って温めてきた渾身の企画。アイデンティティが形成される多感な季節の光と闇をエモーショナルに描き出した珠玉の青春映画は、才能溢れる監督にとっても、今だから描けた、また一生に一度しか描けない傑作です。
『WAVES/ウェイブス』試写。フロリダに住む若者たちの青春を描いたトレイ・エドワード・シュルツ監督作品。パトランプの美しさに感動する日が来ようとは。五感プラス三半規管を刺激される光と音のマジック。二宮健、山戸結希、グザヴィエ・ドランといった同世代の監督に通じる感性と才能を感じた。 pic.twitter.com/hww4EY4PLj
— だよしぃ (@purity_hair) March 17, 2020
“人生の浮き沈み”を表現する、革新的な映像の魔法
誰もが体験する青春の挫折、恋人との出会いと別れ、親子の確執、家族の絆、そしてすべての傷を癒す愛といったさまざまなテーマを、実験的かつ現代的な手法で鮮烈に描き出す本作。特に独創的なカメラワークは、特筆ものです。
WAVES
寄り添う音楽、浴びるように変化する色彩、揺れ動くカメラワーク、映像表現がエモい。あの時あの瞬間のたった数秒の感情さえも伝わってくる、こんな魔法があったなんて!!
それぞれの人生がひとつの波のように押し寄せる。この波を浴びる体験をぜひ!!#WavesMovie@fansvoicejp pic.twitter.com/2goF7EfPB1— ゆっきーな (@yu__TA1206) March 18, 2020
これまでもシュルツ監督はアスペクト比やレンズサイズを駆使して、登場人物たちの感情を伝えようとしてきました。本作でも、朋友であるドリュー・ダニエルズと協力して、兄タイラーや妹エミリーを始めとする若者たちの揺れ動く感情を見事に捉えています。「物語の冒頭、タイラーはどんな人生でも歩めるように感じている。彼は自由で恋をしていて開放的な気分。だから画面のアスペクト比は1.85:1になっている。でも、状況が悪くなるとアスペクト比は狭くなる。人生の浮き沈みを表す、というモチーフを保ちながら、タイラーの心理状態の変化に伴ってカメラワークやアスペクト比は変わっていく」(シュルツ監督)。フロリダの光と海。レインボーのスペクトル。息を呑むほど美しい色彩と独創的なカメラワークは、斬新でエキサイティングです。
「#WAVES/#ウェイブス」@fansvoicejp試写鑑賞。
ある兄妹の物語をベースに、傷ついた若者たちの物語。
とっても良かった!凄く好き!
カメラワークや音楽が主人公の心情を上手く表現していてそれがなんとも素晴らしい!心に響く!
話は重いが、いまを生きる再生の映画でもある。#WavesMovie pic.twitter.com/ErjmRwtEnx— otoboke (@otoboke1717) March 17, 2020
登場人物の感情に寄り添う31の名曲
スクリーンいっぱいに躍動するサウンドは、この映画の大きな魅力。オリジナルスコアは、ナイン・インチ・ネイルズのトレント・レズナーと音楽プロデューサーのアッティカス・ロスが手掛けていますが、特に、本作で重要な役割を果たしているのは、フランク・オーシャンをはじめ、ケンドリック・ラマー、アニマル・コレクティヴ、カニエ・ウェスト、レディオヘッド、テーム・インパラなど、多様なアーティスト達の、今の時代を映す31曲です。
「WAVES/ウェイブス」最速試写会!#プレイリスト・ムービー と銘打ってるだけあって135分の長尺MVを観てる感覚なんだけど、決してそれだけじゃない裏切りとメッセージが込められてる辺りさすがA24…メインビジュアルに騙された…特にeuphoria好きは必見…!#WavesMovie @FansVoiceJP pic.twitter.com/vY53Jcwzd9
— けーぴー (@K_Parrrrr) March 17, 2020
トレイ・エドワード・シュルツ監督が事前に本編に使用する楽曲のプレイリストを作成し、そこから脚本を着想したというだけあり、全ての曲が登場人物の個性や感情に寄り添うように使用され、時には音楽がセリフの代わりに登場人物の心の声を伝えます。“ある意味でミュージカルのような作品”とシュルツ監督は語っていますが、ストーリーと音楽の斬新で洗練された融合によって生まれた、主人公たちの感情に同化するような没入感は、これまでにないエモーショナルな体験となるでしょう。
試写『Waves』
歌詞と音楽に煽られ揺さぶられ癒され泣かされた“プレイリスト・ムービー”。普段聴く曲をいつもと違う感覚で感受する不思議な経験をして、一曲一曲にキャラクターの魂がこもり思い出の曲になった。プレイリストを聴くと彼ら/彼女たちの生きる姿が浮かぶ。#WavesMovie @FansVoiceJP pic.twitter.com/DDtVSUemYh— 🍊Yuko (@yukorangel) March 18, 2020
ハリウッドの未来を支える新進俳優たちの競演
主人公タイラーを演じたのは、『イット・カムズ・アット・ナイト』に続きシュルツ監督とタッグを組むケルヴィン・ハリソン・Jr。大学ではジャズを学び、音楽と演劇に秀でた才能を持つハリソンは、繊細な感受性とテコンドーの黒帯を持つ鍛え抜かれた肉体を活かし熱演しました。
タイラーの妹エミリーを演じるのは、Netflixドラマ「ロスト・イン・スペース」で注目を集めたテイラー・ラッセル。過酷な運命に向き合う少女を、繊細さと凛々しさを併せ持ちながら演じ今年のブレイクスルー俳優の一人に躍進しました。
#WavesMovie @試写会
エミリーを演じるテイラー・ラッセル。良かった。カメラとスクリーンに愛されてる!@fansvoicejp— Too Shy Key (@Pit_t_weet) March 17, 2020
そんなエミリーに救いの手を差し伸べるルーク役を演じているのは、ルーカス・ヘッジズ。『マンチェスター・バイ・ザ・シー』を始め、“出演作にハズレなし”と言われる彼は、本作でも父親との確執を抱えた青年の役を内省的な演技で見事表現。今最も輝いている若手実力派の本領を発揮しています。
押し寄せる波の如く感情を揺さぶられる。鮮やかで眩しい映像と31曲の音楽が絡み合い、真っ直ぐに彼らの感情を伝えてくる。愛も憎しみも紙一重であり、だからこそやり直せると。兄と妹の循環が心の琴線に触れていき、ルーカス・ヘッジズの光ある温かさに涙が止まらなかった@FansVoiceJP#WavesMovie pic.twitter.com/8BmL802th6
— ichico→no time to sleep🍯 (@youone_sleep9) March 17, 2020
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『WAVES/ウェイブス』(原題:Waves)
傷ついた今日も、癒えない傷も、愛の波が洗い流す──
高校生タイラーは、成績優秀なレスリング部のエリート選手。美しい恋人アレクシスもいる。厳格な父親ロナルドとの間に距離を感じながらも、恵まれた家庭に育ち、何不自由のない生活を送っていた。そんなある日、不運にも肩の負傷が発覚し、医師から選手生命の危機を告げられる。そして追い打ちをかけるかのように、恋人の妊娠が判明。徐々に狂い始めた人生の歯車に翻弄され、自分を見失っていく。そしてある夜、タイラーと家族の運命を変える決定的な悲劇が起こる。
一年後、心を閉ざして過ごす妹エミリーの前に、すべての事情を知りつつ好意を寄せるルークが現れる。ルークの不器用な優しさに触れ、次第に心を開くエミリー。やがて二人は恋に落ちるが、ルークも同じように心に大きな傷を抱えていた。そして二人はお互いの未来のためにある行動に出る…。
楽曲一覧(31曲)
「FLORIDADA」「LOCH RAVEN (LIVE)」「BLUISH」アニマル・コレクティヴ
「BE ABOVE IT」 「BE ABOVE IT -EROL ALKAN REWORK」「BE ABOVE IT – LIVE」テーム・インパラ
「MITSUBISHI SONY」「SIDEWAYS」 「FLORIDA」「RUSHES」「RUSHES (BASS GUITAR LAYER)」「SEIGFRIED」 フランク・オーシャン
「WHAT A DIFFERENCE A DAY MAKES」ダイナ・ワシントン
「UNKNOWN」 ケルヴィン・ハリソン・Jr
「LVL」 エイサップ・ロッキー
「AMERICA」 ザ・シューズ
「BACKSEAT FREESTYLE」 ケンドリック・ラマー
「IFHY」 タイラー・ザ・クリエイター feat. ファレル・ウィリアムス
「FOCUS」 H.E.R.
「LOVE IS A LOSING GAME」 エイミー・ワインハウス
「SURF SOLAR」 ファック・ボタンズ
「U RITE」「U-RITE (LOUIS FUTON REMIX)」 THEY.
「I AM A GOD」 カニエ・ウェスト
「GHOST!」 キッド・カディ
「MOONLIGHT SERENADE」 グレン・ミラー・オーケストラ
「THE STARS IN HIS HEAD(DARK LIGHTS REMIX)」 コリン・ステットソン
「HOW GREAT」 チャンス・ザ・ラッパー
「PRETTY LITTLE BIRDS」 SZA feat. アイザイア・ラシャド
「TRUE LOVE WAITS」 レディオヘッド
「SOUND & COLOR」 アラバマ・シェイクス
監督・脚本/トレイ・エドワード・シュルツ
出演/ケルヴィン・ハリソン・Jr、テイラー・ラッセル、スターリング・K・ブラウン、レネー・エリス・ゴールズベリー、ルーカス・ヘッジズ、アレクサ・デミー
作曲/トレント・レズナー&アッティカス・ロス
2019年/アメリカ/英語/ビスタサイズ/135分/PG12
日本公開/2020年7月10日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
配給/ファントム・フィルム
公式サイト
©2019 A24 Distribution, LLC. All rights reserved.
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『WAVES/ウェイブス』(原題:Waves)
傷ついた今日も、癒えない傷も、愛の波が洗い流す──
高校生タイラーは、成績優秀なレスリング部のエリート選手。美しい恋人アレクシスもいる。厳格な父親ロナルドとの間に距離を感じながらも、恵まれた家庭に育ち、何不自由のない生活を送っていた。そんなある日、不運にも肩の負傷が発覚し、医師から選手生命の危機を告げられる。そして追い打ちをかけるかのように、恋人の妊娠が判明。徐々に狂い始めた人生の歯車に翻弄され、自分を見失っていく。そしてある夜、タイラーと家族の運命を変える決定的な悲劇が起こる。
一年後、心を閉ざして過ごす妹エミリーの前に、すべての事情を知りつつ好意を寄せるルークが現れる。ルークの不器用な優しさに触れ、次第に心を開くエミリー。やがて二人は恋に落ちるが、ルークも同じように心に大きな傷を抱えていた。そして二人はお互いの未来のためにある行動に出る…。
楽曲一覧(31曲)
「FLORIDADA」「LOCH RAVEN (LIVE)」「BLUISH」アニマル・コレクティヴ
「BE ABOVE IT」 「BE ABOVE IT -EROL ALKAN REWORK」「BE ABOVE IT – LIVE」テーム・インパラ
「MITSUBISHI SONY」「SIDEWAYS」 「FLORIDA」「RUSHES」「RUSHES (BASS GUITAR LAYER)」「SEIGFRIED」 フランク・オーシャン
「WHAT A DIFFERENCE A DAY MAKES」ダイナ・ワシントン
「UNKNOWN」 ケルヴィン・ハリソン・Jr
「LVL」 エイサップ・ロッキー
「AMERICA」 ザ・シューズ
「BACKSEAT FREESTYLE」 ケンドリック・ラマー
「IFHY」 タイラー・ザ・クリエイター feat. ファレル・ウィリアムス
「FOCUS」 H.E.R.
「LOVE IS A LOSING GAME」 エイミー・ワインハウス
「SURF SOLAR」 ファック・ボタンズ
「U RITE」「U-RITE (LOUIS FUTON REMIX)」 THEY.
「I AM A GOD」 カニエ・ウェスト
「GHOST!」 キッド・カディ
「MOONLIGHT SERENADE」 グレン・ミラー・オーケストラ
「THE STARS IN HIS HEAD(DARK LIGHTS REMIX)」 コリン・ステットソン
「HOW GREAT」 チャンス・ザ・ラッパー
「PRETTY LITTLE BIRDS」 SZA feat. アイザイア・ラシャド
「TRUE LOVE WAITS」 レディオヘッド
「SOUND & COLOR」 アラバマ・シェイクス
監督・脚本/トレイ・エドワード・シュルツ
出演/ケルヴィン・ハリソン・Jr、テイラー・ラッセル、スターリング・K・ブラウン、レネー・エリス・ゴールズベリー、ルーカス・ヘッジズ、アレクサ・デミー
作曲/トレント・レズナー&アッティカス・ロス
2019年/アメリカ/英語/ビスタサイズ/135分/PG12
日本公開/2020年7月10日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
配給/ファントム・フィルム
公式サイト
©2019 A24 Distribution, LLC. All rights reserved.