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2020.06.18 12:00

『WAVES/ウェイブス』感情の動きを画面変化で表現した撮影監督&監督が語る奇跡の撮影

  • Fan's Voice Staff

注目の気鋭スタジオA24の最新作『WAVES/ウェイブス』の撮影監督ドリュー・ダニエルズとトレイ・エドワード・シュルツ監督が驚きの撮影秘話を明かすコメントが到着!日本版ポスターのビジュアルにも採用されている、本作の美しさを象徴するような奇跡の一瞬の撮影背景などを語りました。

トレイ・エドワード・シュルツ監督、主演ケルヴィン・ハリソン・Jr.

ダニエルズは初タッグを組んだシュルツ監督のデビュー作『クリシャ』で、『ラ・ラ・ランド』でアカデミー賞撮影賞を受賞したリヌス・サンドグレン、『ムーンライト』のジェームズ・ラクストン、『沈黙 -サイレンス-』のロドリゴ・プリエトに並んで、ヴァラエティ誌による“必見の10人の撮影監督”に選出。現在、若い世代から圧倒的な支持を得ているA24制作のドラマ『ユーフォリア/EUPHORIA』でも撮影監督を担当し、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いです。

『イット・カムズ・アット・ナイト』に続き3度目のタッグとなる本作で、お互いを知り尽くしたダニエルズとシュルツは脚本初期の段階からビジュアルの構想を入念に打合せ、登場人物たちの心情を映像の変化で表現する事に心血を注いだといいます。登場人物の心に寄り添って変化していく画面は、監督が語るように登場人物の頭の中に入ったような圧倒的な没入感を観客に与えてくれます。

ダニエルズとシュルツは、本作の撮影を下記のように語りました。

ドリュー・ダニエルズ(撮影監督)

トレイと計画したビジュアルを達成する為に、映画撮影のさまざまな要素をすべて使用しました。アスペクト比の変化や、様々なレンズを使用し、キャラクターの心の高揚を大胆な動きで表現させる時もあれば、カメラの動きを少なくし固定する事で心が下向きに動いている様を表現する事もありました。

照明についても美しいフロリダの光を映画に取り込む為に、なるだけ自然光に拘って撮影を進めました。フロリダの太陽は日差しも強く、時折嵐にも見舞われます。撮影は正にその日の天気次第で、良い方向に働くこともあれば、そうでない時もありました。緻密に計画していても、雨や嵐、俳優、場所による制限など、外的要因すべてが撮影に影響を与えます。ですので、臨機応変に計画を変え、ジャズセッションのような状況に応じた撮影スタイルを進めました。

そのお陰で生まれた奇跡のような1シーンもあります。2台のカメラで撮影したタイラーとアレクシスがビーチで親密な時間を過ごすシーンです。実はあのシーンは、一日の終わりに、「時間があれば撮ろう」というスタンスのシーンの一つだったです。時間ができたので、夕方の薄暗い中で景色が黄金色に輝く黄昏時を撮ろうと思って、俳優たちに衣装を着たまま水の中に入るように頼みました。僕らも一緒に水の中に飛び込んで、15分くらいかけて撮影ポイントに移動したんですが、その頃には日が落ちかけていて、光が消えてなくなる寸前だったんです。ですがその直後、日が完全に落ちる直前の少し青みがかった空にピンク色が混じり、稲妻の嵐が離れたところで光っている瞬間が訪れ、その最高に美しい一瞬をカメラに収めることができたんです。嵐と雷が迫る中で、水の中にいるのがギリギリ危険ではない最後の瞬間だったんだけど、全員の力と素敵な偶然によって魔法のようなシーンを撮ることができました。

トレイ・エドワード・シュルツ(監督)

ドリューと僕が目指したのは、タイラーやエミリーのありのままの姿を映し出している、主観的で表現主義的な没入型の映画を作ることでした。アスペクト比(の変化)や360度カメラは、登場人物の頭の中に入り込んでもらうのが狙いでした。例えばオープニングシーンでは、タイラーとアレクシスの間で360度カメラを回転させているのですが、あれはタイラーの感情、2人の関係、10代の恋を表しています。自由で美しく、少しだけ恐怖もある。タイラーとアレクシスは、思い切り愛し合っていて、思い切りケンカもする。若くて、自由で、ワイルドで、美しい2人だから、生の感情や恋心を表現するには、カメラを回すしかないと思いました。また、360度カメラを若い恋のモチーフとして、エミリーが旅に出るシーンで再び用いました。

アスペクト比も登場人物の心情を感じてもらうには効果的だったと思います。映画の冒頭はワイドレンズを用いて1.85:1にし、タイラーの充実した忙しない世界をたくさんの動きを入れて撮りました。その後、彼の世界が崩れていくにつれて、心情を表すかのように、アスペクト比も変わります。医者から人生を一変させるニュースを聞いたあとは2.40:1になり、タイラーがクスリをやっている時はアナモフィックレンズを用いて2.66:1にしています。悲劇が起きた直後に1.33:1にしたのは、閉塞感が増すし、顔をアップでとらえるのに美しい比率だから。兄から妹にバトンが渡る瞬間には適していました。対象がエミリーに切り替わってからも、彼女はまだ深い悲しみに浸っていて、周囲と距離を置いているから、しばらく1.33:1を保ちフォーカスを浅くしています。エミリーが心を開き、恋をしようと決めた瞬間、彼女の感情に合わせて2.66:1に戻ります。そして最後の3分の1で1.85:1に戻し、エミリーの傷は次第に癒され、周りの人々との絆も強まっていきます。

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『WAVES/ウェイブス』(原題:Waves)

傷ついた今日も、癒えない傷も、愛の波が洗い流す──
高校生タイラーは、成績優秀なレスリング部のエリート選手。美しい恋人アレクシスもいる。厳格な父親ロナルドとの間に距離を感じながらも、恵まれた家庭に育ち、何不自由のない生活を送っていた。そんなある日、不運にも肩の負傷が発覚し、医師から選手生命の危機を告げられる。そして追い打ちをかけるかのように、恋人の妊娠が判明。徐々に狂い始めた人生の歯車に翻弄され、自分を見失っていく。そしてある夜、タイラーと家族の運命を変える決定的な悲劇が起こる。
一年後、心を閉ざして過ごす妹エミリーの前に、すべての事情を知りつつ好意を寄せるルークが現れる。ルークの不器用な優しさに触れ、次第に心を開くエミリー。やがて二人は恋に落ちるが、ルークも同じように心に大きな傷を抱えていた。そして二人はお互いの未来のためにある行動に出る…。

楽曲一覧(31曲)
「FLORIDADA」「LOCH RAVEN (LIVE)」「BLUISH」アニマル・コレクティヴ
「BE ABOVE IT」 「BE ABOVE IT -EROL ALKAN REWORK」「BE ABOVE IT – LIVE」テーム・インパラ
「MITSUBISHI SONY」「SIDEWAYS」 「FLORIDA」「RUSHES」「RUSHES (BASS GUITAR LAYER)」「SEIGFRIED」 フランク・オーシャン
「WHAT A DIFFERENCE A DAY MAKES」ダイナ・ワシントン
「UNKNOWN」 ケルヴィン・ハリソン・Jr
「LVL」 エイサップ・ロッキー
「AMERICA」 ザ・シューズ
「BACKSEAT FREESTYLE」 ケンドリック・ラマー
「IFHY」 タイラー・ザ・クリエイター feat. ファレル・ウィリアムス
「FOCUS」 H.E.R.
「LOVE IS A LOSING GAME」 エイミー・ワインハウス
「SURF SOLAR」 ファック・ボタンズ
「U RITE」「U-RITE (LOUIS FUTON REMIX)」 THEY.
「I AM A GOD」 カニエ・ウェスト
「GHOST!」 キッド・カディ
「MOONLIGHT SERENADE」 グレン・ミラー・オーケストラ
「THE STARS IN HIS HEAD(DARK LIGHTS REMIX)」 コリン・ステットソン
「HOW GREAT」 チャンス・ザ・ラッパー
「PRETTY LITTLE BIRDS」 SZA feat. アイザイア・ラシャド
「TRUE LOVE WAITS」 レディオヘッド
「SOUND & COLOR」 アラバマ・シェイクス

監督・脚本/トレイ・エドワード・シュルツ
出演/ケルヴィン・ハリソン・Jr、テイラー・ラッセル、スターリング・K・ブラウン、レネー・エリス・ゴールズベリー、ルーカス・ヘッジズ、アレクサ・デミー
作曲/トレント・レズナー&アッティカス・ロス
2019年/アメリカ/英語/ビスタサイズ/135分/PG12

日本公開/2020年7月10日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
配給/ファントム・フィルム
公式サイト
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