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2020.06.03 12:00

『アングスト/不安』日本初公開に向けて大ファンの鬼才ギャスパー・ノエよりメッセージ動画が到着

  • Fan's Voice Staff

1980年にオーストリアで実際に起きた殺人鬼ヴェルナー・クニーセクによる一家惨殺事件を映画化した実録スリラー映画『アングスト/不安』の日本劇場初公開にあたり、本作の大ファンであることを公言しているギャスパー・ノエよりメッセージ映像が到着しました。

これまでの映画製作において強烈な影響を受けたという『アングスト/不安』の魅力と、これから劇場で観賞する日本の観客へ向けたメッセージを寄せるノエ。自身の作品では無いにも関わらず、日本初公開のためにここまで語るのは異例の事態です。

公開当時、あまりにもサイコティックな内容にフランスでも上映が禁止され、後に発売されたVHSも極わずかしか出回っていない中、“今までに60回は観た”というノエ。当時からこの作品に打ちのめされ、『カルネ』(94年)や『CLIMAX クライマックス』(18年)など、自身の作品で本作へのオマージュを捧げています。

世界各国で上映が禁止されたことにより、「この映画は観た人がほとんどいない、全く無名の作品であることもこの映画の魅力だ」と語るノエ。「常に素晴らしい作品が影を潜めていて、再評価されるべきものがある」と、本作が再び日の目を浴びることに、喜びと期待を寄せました。ちなみにノエが過去に人生ベスト5にピックアップした映画は、『アルゴ探検隊の大冒険』(63年)、『2001年宇宙の旅』(68年)、『イレイザーヘッド』(76)、『ソドムの市』(75年)、そして『アングスト/不安』。

注目すべきところには斬新なカメラワークを挙げ、「見事なテクニックと映像の捉え方は絶対に観てほしいところだ。映画史上最も重要なカメラワークと言えるだろう」と、撮影を担当した世界的な映像作家ズビグニェフ・リプチンスキの技術を絶賛。アカデミー賞最優秀短編アニメ賞を受賞した『タンゴ』(81年)やジョン・レノン、ミック・ジャガーのMVで知られる彼の独特なカメラ表現は、『ブラック・スワン』(10年)のダーレン・アロノフスキー監督にも影響を与えるなど、スリラー映画におけるカメラワークの根幹を築いたともいえます。ドローン撮影などない時代に、一体どこから撮影したのかと思うほどの高度なショットや俳優の体にカメラを取り付ける撮影手法は、主人公の感じる不安や焦燥を観る者にも感じさせ、そのリアルな表現と芸術性の高さに、世界中の映画監督らを虜にしました。

『アングスト/不安』撮影風景 

公開から37年経った現在でも、本作が世界で再上映された例は少なく、今回の日本劇場公開はかなりレア。すでに配給会社にクレームが入るなど、とにかく残虐な殺人鬼映画では?と噂されますが、これから劇場で観賞する日本の観客へ、ノエは「暴力行為を目の当たりにする一方で、加害者(=主人公)からの被害を耳にする。とても複雑で魅力的な映画だ」と、単なる殺人鬼映画ではないことを主張。また日本独自のチラシのデザインも「素晴らしい!」と絶賛。「遂にこの映画史上に残るマスターピースが日本で公開されることを知りとても嬉しく思う」と語りました。

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『アングスト/不安』

刑務所を出所した狂人が、とたんに見境のない行動に出る。

監督/ジェラルド・カーグル
撮影・編集/ズビグニェフ・リプチンスキ
音楽/クラウス・シュルツ
出演/アーウィン・レダー、シルヴィア・ラベンレイター、エディット・ロゼット、ルドルフ・ゲッツ
1983年/オーストリア/87分/カラー/ビスタ/R15+
原題:ANGST(不安)/英題:FEAR(恐怖)/仏題:SCHIZOPHERENIA(統合失調症)/日本VHS発売時題:鮮血と絶叫のメロディー/引き裂かれた夜

日本公開/2020年7月3日(金)よりシネマート新宿ほか全国順次公開
提供/キングレコード
配給/アンプラグド
©1983 Gerald Kargl Ges.m.b.H. Filmproduktion

※本作は、1980年にオーストリアで実際に起こった事件を描いています。当時の司法制度では裁ききれなかった為に発生した事象であり、本映画をきっかけとして以降大きく制度が変わりました。劇中、倫理的に許容しがたい設定、描写が含まれておりますが、すべて事実に基づいたものです。本作は娯楽を趣旨としたホラー映画ではありません。特殊な撮影手法と奇抜な演出は観る者に取り返しのつかない心的外傷をおよぼす危険性があるため、この手の作品を好まない方、心臓の弱い方はご遠慮くださいますようお願い致します。またご鑑賞の際には自己責任において覚悟して劇場にご来場ください。