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2020.03.13 20:00

【ネタバレ無し感想・評価】『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』デビュー10周年、グザヴィエ・ドランの転機となる記念碑的な野心作

  • Fan's Voice Staff

若きカリスマ監督グザヴィエ・ドラン監督初の英語作品として注目される『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』が3月13日(金)に日本公開。本記事では、劇場公開に先立って開催された試写会でひと足早く鑑賞したファンの感想とともに、映画の見どころを紹介します。

アメリカの人気俳優、ジョン・F・ドノヴァン(キット・ハリントン)が若くして逝ってから10年。新進俳優ルパート・ターナー(ベン・シュネッツァー)はプラハで、有名ジャーナリスト、オードリー・ニューハウス(タンディ・ニュートン)のインタビューを受ける。かつて俳優を目指していた11歳のターナー少年(ジェイコブ・トレンブレイ)は、ドノヴァンに憧れファンレターを書いたことがきっかけで、彼と文通をしていた。ある時、ニューヨークに住むTVスターとイギリスに住む少年との秘密の文通が発覚、スキャンダルに……。ターナーは、手紙を通して知ったドノヴァンの真実をジャーナリストに語り始める。果たして、ドノヴァンの謎の死の真実とは──?

ジョン・F・ドノヴァン(キット・ハリントン)

『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』は、カナダの気鋭グザヴィエ・ドランが構想10年の末に撮った注目作です。子どもの頃から子役として活躍していたドラン少年は、大ヒット作『タイタニック』でスターとなったレオナルド・ディカプリオに憧れ、ファンレターを書きました。本作は、その思い出にインスパイアされた、ミステリアスかつ感動的なヒューマンドラマです。

“恐るべき子供”と呼ばれた神童がハリウッドへ!

高校時代に書いた小説を元に19歳で脚本・監督を手掛けた『マイ・マザー』(09年)がカンヌ国際映画祭の「監督週間」で上映、絶賛されるという衝撃の監督デビューを果たしたグザヴィエ・ドラン。長編第3作目となる『わたしはロランス』(12年)で日本上陸を果たして以来、日本でも多くのファンを得ている若きカリスマです。

キット・ハリントン、グザヴィエ・ドラン監督

『トム・アット・ザ・ファーム』(14年)はヴェネチア国際映画祭で国際映画批評家連盟賞、『Mommy/マミー』(14年)はカンヌ国際映画祭で審査員賞、さらにギャスパー・ウリエル、マリオン・コティヤール、レア・セドゥらフランスのスターのアンサンブルが話題になった『たかが世界の終わり』(16年)ではグランプリを受賞と、輝かしいキャリアを築いてきたドラン。そんな映画界期待の“神童”が30歳を目前に挑んだ新たなチャレンジが『ジョン・F・ドノバンの死と生』です。これまでのすべての作品を撮影していたホームグラウンドのカナダ・ケベックを離れ、舞台となるニューヨークやイギリスでのロケを敢行。初の英語映画に挑戦しました。

物語は、少年時代にドノヴァンと文通していた若手俳優ターナーが、過去を回想しながら、ジャーナリストにふたりの交流を語るスタイルで展開されます。ドノヴァンの悩みと葛藤、ターナーの夢と現実。“親友”となったふたりの人生を通して、自分らしく生きることの大切さ、難しさ、そして希望が語られます。

構想10年、集大成としてのドラン映画

ルパート(ジェイコブ・トレンブレイ)

グザヴィエ・ドランがこの作品のアイデアを思いついたのは、デビュー作『マイ・マザー』を製作中の10年前。「それから5年間、頭の中で構想を練り、脚本を書き始めた」とインタビューでも語っています。「撮影に2年かけたことも初めてだけれど、それだけ今回は僕にとって特別な作品なんだ」 

憧れのスターと少年の物語という縦軸に対して、「母と息子」という横軸がこの映画に深みを与えます。キット・ハリントン演じるドノヴァンとスーザン・サランドン演じる母親、ジェイコブ・トレンブレイ演じる少年時代のターナーとナタリー・ポートマン演じる母親。この二人の「母と息子」の感動的な葛藤と絆のドラマは、まさにデビュー以来「母と息子」というテーマを追求してきたドランの集大成です。

感情を揺さぶる、ドランならではの演出に感涙

愛していながらも、ぶつかり合う。大切な人なのにわかりあえない。繊細な感情の機微を通して、人間の優しさ、愚かさ、孤独、そして業を描いてきたドラン。卓越した感情の演出力は、これまで「母と息子」との関係に象徴されてきましたが、本作ではその枠を大きく押し広げています。

ショービジネスの世界で孤独を深めていくドノヴァン。学校でも打ち解けず、母にも理解されずに苦しむ少年ターナー。ひりひりするような感情のぶつかり合いを越えて、自分らしい生き方を求める人たちの姿には、心を揺さぶられ、涙を禁じ得ません。

映画ファンのハートを鷲掴みにする映像と音楽

ドラン監督と、挿入歌「Rolling in the Deep」を歌うアデル

脚本・脚本だけでなく、カメラワーク、音楽、衣装まですべてにこだわるのがドランの流儀です。本作の撮影監督であるアンドレ・デュルパンは、「グザヴィエは、フィルムがとにかく好きです。この映画のいくつかのシーンは70ミリでも撮りました。もちろん、金額は張りますが、ゴージャスです。彼が根っからのフィルム党だということは、私にとってもありがたいことです。手間やお金はかかりますが、デジタルよりも画質のいいフィルム撮影へのドランのこだわりは、ビジュアルクオリティの高さが証明しています」とコメントしています。

音楽がナレーションの役割を果たしているのも本作の特徴。共同で脚本を執筆したジェイコブ・ディアニーは「脚本とともに曲もイメージしていきました。一日の半分は脚本執筆に費やし、半分はお互いの気に入った曲を(ドランと)シェアしました」と語っています。音楽は『トム・アット・ザ・ファーム』や『たかが世界の終わり』でも組んでいる名匠ガブリエル・ヤレドが手掛けていますが、予告編でも流れていたアデルの「Rolling in the Deep」を始め、ドランの思い入れの強いポップスやロックも満載です。

キット・ハリソンを始め豪華ハリウッドスターの競演

タイトルロールのスター俳優ジョン・F・ドノヴァンを演じのは、TVシリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』のキット・ハリントン。文通によって彼の心の支えとなっていく少年ルパートは、『ルーム』で絶賛された天才子役ジェイコブ・トレンブレイが演じています。アメリカのTVスター、ドノヴァンとイギリスに暮らす少年ターナー。海を隔てた文通による異色の“共演”が実現しました。

脇を固める俳優陣にも大物スターが顔を揃えました。少年ターナーの母親役には、ナタリー・ポートマン。女優を目指すも挫折した過去を引きずり、息子の俳優になる夢を素直に応援できないシングルマザーを演じます。

「違う星の生き物」というほどドノヴァンとは反りが合わない母親役をスーザン・サランドンが演じています。愛する息子を理解しきれず、ほとばしる感情をぶつけ、苦しむふたりの母親の姿には、胸が熱くなります。

ドノヴァンの母グレース(スーザン・サランドン)

ジョンのエージェント役には、ベテラン女優キャシー・ベイツ。また、ジョンが安らぎを見出しているダイナーのキッチンで出会う老人役は、英国の名優マイケル・ガンボンが演じています。ガンボンは「ハリー・ポッター」シリーズ第3作目からのダンブルドア役で知られていますが、大のハリポタファンでもあるドランならではのキャスティングといえるでしょう。

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『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』(原題:The Death and Life of John F. Donovan)

舞台はニューヨーク。大ヒットTVシリーズに出演し、一躍スターの座へと駆け上った、人気俳優のジョン・F・ドノヴァンが死んだ。自殺か事故か、あるいは事件か、謎に包まれた彼の死の真相をにぎる鍵は、世間で一大スキャンダルを巻き起こした、11歳の少年ルパートとの“秘密の文通”。100通以上に渡る手紙から明かされる、華やかなスターの光と影、スキャンダラスな世界の表と裏。若くして世を去った美しきスター ジョン・F・ドノヴァンの、切なくも衝撃的な死の真相とは──。

監督/グザヴィエ・ドラン 
脚本/グザヴィエ・ドラン、ジェイコブ・ティアニー
出演/キット・ハリントン、ナタリー・ポートマン、スーザン・サランドン、ジェイコブ・トレンブレイ、キャシー・ベイツ
カナダ・イギリス映画/スコープサイズ/上映時間:123分/PG12

日本公開/2020年3月13日(金)より、新宿ピカデリーほか全国ロードショー
提供・配給/ファントム・フィルム、松竹
©THE DEATH AND LIFE OF JOHN F. DONOVAN INC., UK DONOVAN LTD.

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