【ネタバレ無し感想・評価】映画『影裏』綾野剛と松田龍平が無双の演技!大友啓史監督が芥川賞小説を見事に映画化
- Fan's Voice Staff
親友と呼びたかった男の本当の姿とは何だったのか──。芥川賞受賞小説を『るろうに剣心』の大友啓史監督が映像化したヒューマン・ミステリー『影裏』が2月14日(金)に公開されます。本記事では、公開に先駆け試写会で本編を鑑賞したファンの感想とともに、本作の見どころを紹介します。
今野秋一(綾野剛)は、転勤で埼玉から岩手の盛岡に移り住みます。地元出身の会社の同僚、日浅(松田龍平)とは酒を飲んだり、釣りに行くなどプライベートでも親しくなりますが、翌年の冬、日浅は今野には一言の相談もなく、突然会社を辞めてしまいます。が、その夏、日浅は見慣れないスーツ姿で今野の前に突然現れました。今は互助会の訪問型営業しているという日浅と、今野は再び頻繁に会うようになりましたが、ある日、夜釣りにでかけたふたりは些細なことで雰囲気が悪くなり──。
第157回芥川賞受賞した沼田真佑の小説「影裏」。作家自身が住む盛岡を舞台とし、見知らぬ土地でただひとり心を許した友との出会いと別れ、そして友の本当の姿を探して彷徨うひとりの青年の心の旅を描く、ミステリータッチのヒューマンドラマです。
行間を埋めながら読み進めるような、削ぎ落とされた文体が特徴的な斬新な小説の映像化という難題に挑戦したのは、『るろうに剣心』シリーズの大友啓史。日本のエンターテイメント界を牽引してきたヒットメーカーが、原作小説に惚れ込み映画化を実現した渾身の一作です。
故郷岩手への想いを込めた大友監督の最高傑作
原作と出会って感銘を受け、すぐに映画化を考え始めたという大友監督。「タイトル通り、この映画は誰もが持つ影の部分、裏の部分に踏み込んでいく作品です。本音では言えないところに、人それぞれの真実、社会との葛藤が潜んでいる」「自分の魂を作品の奥底に深くしのばせたつもりです」とコメントしています。
『#影裏』@FansVoiceJP 独占試写にて
「アイツは死んだかもしれない」
共に過ごした日々の述懐によって浮かび上がる人間の光と影。淡々とした描写の数々で積み上げられていくたしかな想い。ドキュメンタリー畑出身の大友啓史監督だから実現できた、淡白だが濃厚な味わい。余韻の深さに心が痙攣する。 pic.twitter.com/InjcsGS0Cd— じぇれ@映画垢 (@kasa919JI) February 8, 2020
東日本大震災の前後の岩手・盛岡が物語の舞台となっていることも、同地出身の大友監督がこの作品に情熱を注いでいる理由のひとつ。「震災のときは何も出来なかった」という監督ですが、故郷を舞台に語られる人間の心の深淵に迫る物語を見事スクリーンに映し出すことに成功しました。
『影裏』試写会にて見ました。なんか…芥川賞っぽいね…と思ったら原作がとってた…原作未読にて映画との差を知らないのですが、こんなすごいやおいを純文学の傑作と呼べる日本はまだ見どころがある、中国で映画賞をとった背景を思って泣く、いやあこれは、綾野剛と松田龍平無双だった…@FansVoiceJP pic.twitter.com/iqTFuGL0Ir
— コットン (@CottonSherlock) February 8, 2020
『ハゲタカ』や『龍馬伝』で真価を発揮した大友監督の原点である本格的なヒューマンドラマに回帰しながらも、新しい領域に踏み込んだ作品に、同監督の最高傑作との声もあがっています。
オール岩手ロケを敢行!美しい自然を捉えた五感に響く映像
原作小説は、今野と日浅の物語を背景に、盛岡の豊かで美しい自然が描写する文章が印象的ですが、本作では見事にそれが視覚化されています。大友監督は、岩手の美しい風景に敬意を払い、全編岩手でのロケを敢行しました。
@FansVoiceJP さんの試写会で『#影裏』を鑑賞。日浅に出会い導かれるように惹かれていく今野との優しい時間が美しい自然と共に映し出される。何気ない会話の中、突如影を纏ったような言葉に揺さぶられる。辿り着けない深みに手を伸ばした時知らない部分がみえていく…私の好きが詰まった映画でした pic.twitter.com/cOWtJ9sRxS
— おさむ (@drrnya) February 8, 2020
特に、キーワードとなるのが水。今野と日浅が釣りに行く渓谷の音、太平洋の波に向かう日浅の姿を始め、スクリーンの中を流れ続ける“水”は、ふたりの間に流れる不穏な空気とシンクロして変化し続けます。
岩手の自然が本当に美しかった。2年前に岩手に行ったときに感じた自然の良さがあって、水の冷たさも感じられるようだった。本当にキレイな映画。
— ミキ (@yoku3137) February 8, 2020
音楽を手掛けたのは、数々の映画やTVドラマなどを手掛けるベテラン作曲家・大友良英。大友監督は、イマジネーションのヒントになればと「ざくろの木」「僕はここだよ」「ホワイトジャスミン」「ホテルメトロポリタン」「ビハインド・オブ・シャドウ」「回覧板」「水樽の木」「夜のキャンプ」など曲のタイトルになりそうなワードを渡したそうです。
映画『#影裏』@FansVoiceJPさん試写会 原作読了済み
渓谷の濃い緑と水音が印象的
綾野剛の線の細さと松田龍平の重さがあるのに不安定な存在という対比 それぞれ言葉には出せない心情を視線、口元などに滲ませる 2人が醸し出す空氣は濃い この2人の役者は本当に素晴らしいと思う pic.twitter.com/B5Mb1hC7jI— 螺旋 (@sakura_shion) February 8, 2020
人気実力派俳優の競演
主人公の今野を演じるのは、『そこのみにて光輝く』や『怒り』などで多くの映画賞に輝く綾野剛。新しい土地で、心を開いた人を失う試練に直面する男を、繊細に演じきりました。
『影裏』
試写会(@FansVoiceJP )にて。
文学作品の実写化において、もう綾野剛を差し置いて演じられる者などいないだろう。そういわせるだけの説得力が彼の演技にはある。
男性特有の繊細さ、儚さ、どことなく漂う倦怠感、灰色の世界に吸い込まれてしまいそうな感覚。
追憶に誘う水音が耳から離れない pic.twitter.com/rhkFTBmrwf— Carly* (@CCinemalife) February 8, 2020
そんな今野を翻弄する謎めいた男の日浅を演じるのは、個性派俳優・松田龍平。善人とも悪人ともつかない日浅の、怪しくも哀しいキャラクターを圧倒的な存在感で体現しています。
大友監督が出演を熱望したという俳優たちですが、正反対ともいえる今野と日浅の間に流れる緊張感と親密感の絶妙なバランスが証明するように、ふたりの相性は抜群です。
#影裏 を鑑賞。説明的な演出を極力避けていて、演技で魅せられた!綾野剛の表情や仕草から伝わってくる感情に引き込まれていくし、松田龍平の明るく見えてもどこかで影のある感じとか2人の演技力を最後まで楽しめる作品でした。岩手の美しい風景と人間の影の対比が素晴らしかった! @fansvoicejp pic.twitter.com/ljQqSr1TVj
— makiko@せりな (@trick_world) February 9, 2020
脇を固める豪華俳優陣、中村倫也の新境地に注目
綾野剛と松田龍平の脇を固めるのは、日本映画界を代表する実力派俳優たち。ふたりの同僚には、筒井真理子。カンヌ国際映画祭「ある視点」部門審査員賞を受賞した『淵に立つ』(16年)、『愛がなんだ』(19年)、『よこがお』(19年)など話題への出演が続いています。
#影裏@fansvoicejp さん独占試写会
突然消えた友人、探し始めて知る見えていなかった彼の色々。
翻弄される綾野剛、繊細な演技と美しい脚に気が付けばメロメロ。
ミステリアスな松田龍平、筒井真理子、國村隼、安田顕、中村倫也、実力派の布石、岩手の自然、芥川賞作品の重厚感と輝き、お見事。 pic.twitter.com/3SyvKa97ID— まっきー (@makiko226) February 9, 2020
日浅の父役には、『哭声/コクソン』(17年)で韓国・青龍映画賞の助演男優賞と人気スター賞の2部門を受賞するなど国際的活躍も目立つ國村隼。日浅の過去を語る兄役に、バイプレイヤーとして多くのドラマや映画で活躍する安田顕。
今野の旧友役で登場する中村倫也は、出演シーンは少ないながらも強烈なインパクトと余韻を残します。
綾野剛×松田龍平はもうグウの音も出ないほどなんですけど倫也さんがね…グラニュー糖ひと粒くらいでもさじ加減を間違うと映画を壊しかねない凄いお芝居してました…色んな意味で彼にしか出来ないです
— 清滝の小波 (@ripplings) February 8, 2020
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『影裏』
今野は、転勤で移り住んだ岩手で日浅に出会う。慣れない地でただ一人心を許せる存在。まるで遅れてやってきたような成熟した青春の日々に、今野は言いようのない心地よさを感じていた。しかしある日、日浅は突然姿を消してしまう。日浅を探し始めた今野は、日浅の父に捜索願を出すことを頼むが、何故か断られてしまう。そして、見えてきたのは、これまで自分が見てきた彼とは全く違う別の顔。陽の光の下、ともに時を過ごしたあの男の“本当”とは?
出演/綾野剛 筒井真理子 中村倫也 平埜生成/國村隼/永島暎子 安田顕 松田龍平
監督/大友啓史
脚本/澤井香織
音楽/大友良英
日本公開/2020年2月14日(金)全国ロードショー
配給/ソニー・ミュージックエンタテインメント
配給協力/アニプレックス
公式サイト
©2020「影裏」製作委員会