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2020.02.05 17:00

【単独インタビュー】高杉真宙が語る『前田建設ファンタジー営業部』の“熱量”の魅力

  • Atsuko Tatsuta

空想世界の建造物の設計と見積りに本気で取り組んだサラリーマンたちの実話を映画化した『前田建設ファンタジー営業部』。高杉真宙を主演に、『夜は短し歩けよ乙女』、『ペンギン・ハイウェイ』などで知られるヨーロッパ企画代表の上田誠が脚本を執筆、『賭ケグルイ』、『あさひなぐ』など数々のヒット作を生み出してきた英勉が監督を手掛ける話題作です。

「うちの技術で、マジンガーZの格納庫を作っちゃおう!」──広報を目的としたWEB向けの企画を立ち上げた、前田建設工業株式会社広報グループ。前代未聞のプロジェクトに鼻息が荒い部長アサガワ(小木博明)とは裏腹に、社会人として粛々と働くことに情熱を見出だせない若手社員のドイ(高杉真宙)は熱が入りません。“実際には作らない”設計図を作り、工期を立て、見積書を完成させるという挑戦に、アニメ世界のあいまいで辻褄の合わない設定に翻弄されながらも、プロジェクトは進み始めます──。

“前田建設ファンタジー営業部”は、ダムやトンネル、発電所などの大プロジェクトに携わってきた実在する建設会社、前田建設工業株式会社が、アニメやゲームなどの空想世界の巨大建造物の建設を受注したらどうなるかという企画をWEB上で展開したプロジェクトです。連載が開始された2003年2月は、バブル崩壊後の建設不況に業界全体が不安を抱えていた時代でした。そんな時に登場した驚愕のプロジェクトはシリーズ化され、度々話題となりました。その後、書籍化、舞台化もされた驚くべき実話がついに映画化されました。

“冷静な若手社員”ドイ(高杉真宙)

主人公である広報グループの若手社員ドイを演じた高杉真宙は、舞台『エブリ リトル シング ‘09』で俳優デビュー。数々のCMやテレビドラマなどで活躍しており、昨年だけでも『十二人の死にたい子供たち』、『笑顔の向こうに』、『見えない目撃者』など話題作に次々と出演。本作の英勉監督とは、『トリガール!』、『賭ケグルイ』以来3度目のタッグとなります。

上地雄輔、岸井ゆきの、本田力、町田啓太、六角精児、小木博明といった個性派が結集した『前田建設ファンタジー営業部』のアンサンブルキャストの中で、クールな若手社員を演じ、新たな輝きを放った高杉が、Fan’s Voiceの単独インタビューで撮影の裏話を語ってくれました。

──空想上の建造物を設計して、積算もするけれど、実際には造られることはないというユニークなプロジェクトとして、”前田建設ファンタジー営業部”は話題となり、書籍、舞台化され、ついに映画化されました。この映画に関わる以前から、このプロジェクトのことはご存知でしたか?
知りませんでした。前田建設という名前だけは知っていたのですが、ファンタジー営業部のことはなにも。でも脚本を読んでめちゃめちゃ面白かったので、すぐに出演させていただきたいと思いました。

──建設業界は、なかなか関わることがない業界ですよね。
本社でも撮影させていただいたので、前田建設の方々にお会いしました。みなさん、すごく楽しそうに働いているんです。素敵だなと思いました。ファンタジー営業部というものが実現できてしまう会社なので、遊び心がある人が多いのかもしれませんね。僕の所属している事務所に「ファンタジー営業部」ができるなんて想像できないじゃないですか。そういうみんなの熱意が、お話していても感じ取れました。映画の現場もそうなんです。スタッフさんが楽しそうに働いている。僕、そういう現場が大好きなんですよ。

──建設業界には興味があったのですか?
正直今までは、どんな業界か意識したことはほとんどありませんでしたね。でも今では、トンネルを見ると、これだけの長さを掘るのにどれくらいかかったのかと思ったり、建築中のマンションの前を通りかかって前田建設さんの名前を見かけると、“僕、前田建設さんの映画やりましたよ〜!”って嬉しくなりますね。めちゃくちゃ親近感あります。

──英監督は以前もお仕事されていますね。脚本を手掛けたヨーロッパ企画の上田さんともお知り合いだったのですか。
上田さんではないのですが、別の作品でヨーロッパ企画の方とご一緒させていただいたことがあって、ヨーロッパ企画の面白さは知っていました。今回の脚本も、会話の掛け合いが面白く、勢いがありましたね。ストーリーがどんな展開になるのかわからないんです。設計もして積算もして、でも造らない。何をやっているんだろう、この人たちは?って。そのあたりがめちゃくちゃ面白いと思いました。

──『賭ケグルイ』などでもお仕事をされた英監督の魅力とは?
英監督の現場の盛り上がり方はちょっと独特なんです。あんな風に……と言っても伝わりづらいですが、盛り上げてくださる監督はあまりいないです。いつも笑いながら楽しそうに演技を見てくれるのですが、本当に声を上げて笑うので、“監督の笑い声NG”があるくらいなんです。びっくりしますよ。最初は、録音は大丈夫なのかなってソワソワしました。そういう現場なんです。

──あなたが演じた主人公のドイは、冷めた若者だったのが、段々とプロジェクトにのめり込んで熱くなっていきます。共感するところありますか?
ドイくんは、社会人となって粛々と生きていく……というクールなタイプです。でも、僕には理解できないタイプですね。というか、“その気持もわかるよ、でも、それ違うじゃん”という感じですね。もっと面白いことしようよ、と言いたい(笑)。熱血上司のアサガワに巻き込まれてしまって、どんどんノッてくるわけですが、高杉真宙個人で言えば、アサガワさんって好きなんです。自分もそっち側の人間だからだと思いますが。ああいう大人になりたいなと思います。楽しんで仕事をするには、子ども心が必要なのではないかと思いますね。

──この映画には同じ若者でもドイとは正反対の、町田啓太さん演じるヤマダというキャラクターが登場します。“掘削オタク”で、熱心に仕事に取り組んでいますね。
彼の気持ちはものすごくわかるんですよ。僕も漫画とかアニメが好きなので、そういうことに夢中になってしまう感じが。頭がいいのに、あまりに好きなため行き過ぎてしまって、アホになっちゃうというか。その紙一重の感じがすごくわかるんです。しかも、それってめちゃカッコイイと思うんです。ある種のプロフェッショナルというか、僕の周りにも結構そういう人たちがいますし。僕は、最近アニメを作っている人たちへの感謝のあまり、正座して観なければいけないんじゃないかと思うくらいなんです。

──高杉さんは、もし前田建設の社員だったらファンタジー営業部に入ってみたいですか?
僕は熱意を持ってやると思いますね。引いてしまうのがわからない。めちゃくちゃ面白いと思います。いつも「面白そう」ということだけで動ける人でありたいなと思っています。前田建設のファンタジー営業部って、建設会社にいないと出来ない、知識と経験がないと出来ないことですよね。他の人が出来ないことなら、それだけやってみる価値があると思います。

──前田建設による全面バックアップということで、トンネルやダムなどの普段は入れないような場所でも撮影されたと思いますが、巨大建造物はスクリーンで見ていても圧巻でした。撮影中はいかがでしたか?
めちゃくちゃテンション上がりましたね。ダムもトンネルも感動しましたね。ファンタジーの世界に入った気分でした。冒険もので“地中ではデカいモグラに出会って、ダムではクジラに出会った”みたいな、それくらいの気分でした。それまでダムって石の塊としか思っていなかったんですが、精密機械みたいなものなんですよ。どういう役割があり、どう動くかもまったく知りませんでしたが、こんなにいろいろ計算されて作られているのだと初めてわかりました。

──撮影中、いちばん盛り上がったのは?
それぞれの見せ場のシーンですね。アサガワさんの演説シーンとか、チカダさんのマジンガーZに対する熱い思いを語るシーンとか。個性豊かな人たちの掛け合い、熱量ある演技は、この映画の見どころだと思います。

──今回の作品を通して学んだことはどんなことですか?
自分が出来ない発想力を持っている方々とご一緒させていただいて、勉強しようとずっと見ていました。もちろん、学んでできるものじゃないなとも思いましたけど。テンポや間とかも、僕にはできないものをたくさん見せていただきました。

──この映画は、企業で働く人たちの夢を追う熱いドラマでもありますが、ドイを通した青春映画でもありますね。
タイトルだけだと、どんな映画か想像しにくいと思いますので、とりあえず予告編を見て、どんな感じかを掴んで欲しいですね(笑)。ハチャメチャな映画でもあり、笑えるところもたくさんあります。

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『前田建設ファンタジー営業部』

出演/高杉真宙、上地雄輔、岸井ゆきの、本多力、町田啓太、六角精児、小木博明(おぎやはぎ)
監督/英勉
脚本/上田誠(ヨーロッパ企画)
原作/前田建設工業株式会社 『前田建設ファンタジー営業部1 「マジンガーZ」地下格納庫編』(幻冬舎文庫)、永井豪『マジンガーZ』

日本公開/2020年1月31日(金)新宿バルト9ほか全国公開
配給/バンダイナムコアーツ、東京テアトル
公式サイト
©前田建設/Team F ©ダイナミック企画・東映アニメーション