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2020.01.25 18:00

【ネタバレ無し感想・評価】『私の知らないわたしの素顔』オスカー女優ジュリエット・ビノシュの名演が光る心理サスペンス

  • Fan's Voice Staff

フランスを代表する大女優ジュリエット・ビノシュを主演に迎え、大学教授の職につく知的な女性が、SNSの罠にはまっていく顛末を描いたサイコロジカルサスペンス『私の知らないわたしの素顔』が、2020年1月17日(金)に日本公開されました。本記事では、公開に先立ちに開催された試写会に参加した日本のファンの感想とともに、見どころを紹介します。

パリの高層マンションに暮らす50代の美しき大学教授クレール。ある日彼女は、年下の恋人に捨てられたことをきっかけに、SNSの世界に足を踏み入れます。Facebookで24歳のクララになりすまし、新しい恋を手に入れたクレールでしたが、それは二転三転するジェットコースターの助走でした。誰にも止めらない、熱くて冷たい危険なバーチャル恋愛の行く末は──?先の見えない展開、次第にあぶり出される深層心理、なぜクレールが〈24歳のクララ〉になりすましたのか、その驚愕の「真実」が明かされていきます。

第69回ベルリン国際映画祭のスペシャルガラで上映され、現地ではコンペティション作品以上に話題をさらった本作。主演には、是枝裕和監督『真実』など日本公開作が続くジュリエット・ビノシュ。クレールの抱える心の傷を解くカギを握る精神分析医に、映画監督としても活躍するニコール・ガルシア。また今フランス映画界で最も旬な俳優フランソワ・シビルと、スーパーモデルとして活躍するマリー=アンジュ・カスタが脇を固めています。

展開が読めない極上ミステリー

フランスの権威ある文学賞であるフェミナ賞受賞作家カミーユ・ロランスの小説「Celle que vous croyez」の映画化である本作。原作を読んだサフィ・ネブー監督が、黒澤明監督の『羅生門』やヒッチコックの『めまい』といった映画やラクロの小説「危険な関係」が頭に浮かんだという物語は、先の読めない展開と驚愕の真実と共に重層的に語られる主人公クレールを巡る心理ドラマです。

ラブ・ストーリーかと思いきや、二転三転するジェットコースターのようなサスペンス。監督サフィ・ネブーが最後に用意したパズルのピースがハマるとき、観る者の深層心理も試されます。

クレールに起こった出来事を他人事として見ているうちに、いつの間にか、“誰にでも起こりうる物語”に変わっていく圧巻のストーリーテリング。あっという間にたどり着くラストには衝撃が待っています。

熱くて冷たいSNS恋愛のリアリティ

物語のフックとなるのは、Facebook。若い恋人にポイ捨てされても、主人公クレールは、ネット上に若く美しいもうひとりの自分を作り出したことで、新しい恋を手に入れます。他人の画像を使ったり、名前を偽ったりした“バーチャル恋愛”は、今の世の中、あちらこちらで行われているのかもしれません。ネブー監督もこの脚本を書いている最中、SNSで出会った女性と3ヶ月に渡ってオンライン上で交際していましたが、実は相手の女性が“なりすまし”だったという経験をしたそう。

オンライン上のアバターを手に入れたクレールは、それを“魔法の武器”のように使います。それは、失った尊厳や強さを取り戻そうとする行為。ネブー監督は「50歳以上のほとんどの女性がもつ、透明人間でしかない立場」の象徴として、複雑なクレールというキャラクターを見事に描き出しました。こうした老いや容姿に対する畏れもリアルな描写は、多くの女性の共感を誘います。

大女優ジュリエット・ビノシュの憑依演技が心に刺さる

クレールを演じるのは、『イングリッシュ・ペイシェント』でアカデミー賞助演女優賞を受賞、カンヌ、ベネチア、ベルリンの三大映画祭の女優賞を受賞するという快挙を成し遂げた、フランスを代表する女優ジュリエット・ビノシュ。ネブー監督は、ビノシュを想定し脚本を執筆したそうですが、彼女は送られてきた脚本をすぐに読み、3時間後には出演を承諾したといいます。普段は自信に溢れるスターですが、本作の中では、傷つき“こわれゆく女”を見事な憑依演技で演じきり、可愛らしいともいえる繊細な演技を披露しています。

夫や若い恋人に捨てられ“切り捨てられた”という絶望感に囚われているクレール。ビノシュは、「クレールという役柄を演じることで、私自身の老化に向き合うことになりました」とコメントしています。

クレールの深層心理を引き出す重要な役割を果たしているのが、冷静沈着な精神分析医ボーマン。演じているのは、カトリーヌ・ドヌーヴ主演の『ヴァンドーム広場』(98年)やマリオン・コティヤール主演の『愛を綴る人』(16年)など監督としても活躍しているニコール・ガルシア。大物女優が対峙する演技合戦も見どころのひとつです。

また、クレールが恋に落ちる青年アレックスを演じるのは、『おかえり、ブルゴーニュへ』(17年)でも注目された新進俳優フランソワ・シビル。「クレールの行動は、30歳の僕の胸も熱くさせます」とコメントを寄せていますが、ビノシュを虜にする誠実でスイートな魅力は、今後の活躍にも注目したい逸材です。

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『私の知らないわたしの素顔』(英題:Who You Think I Am)

監督/サフィ・ネブー 
出演/ジュリエット・ビノシュ、ニコール・ガルシア、フランソワ・シビル、マリー=アンジュ・カスタ
原作/Celle que vous croyez(Who You Think I Am/2016年刊行 ガリマール出版社)
2019年/フランス/101分/シネスコ/カラー/字幕翻訳:原田りえ/原題:Celle que vous croyez

日本公開/2020年1月17日(金)Bunkamuraル・シネマ他全国順次ロードショー
配給/クレストインターナショナル
公式サイト
©2018 DIAPHANA FILMS-FRANCE 3 CINÉMA-SCOPE PICTURES

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