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2019.12.25 18:00

【インタビュー】『燃えよスーリヤ!!』主演俳優は骨折していたのを隠していた!ヴァーサン・バーラー監督が明かす

  • Fan's Voice Staff

トロント国際映画祭ミッドナイト・マッドネス部門で観客賞を受賞した、インド発のカンフーアクション映画『燃えよスーリヤ!!』のヴァーサン・バーラー監督のインタビューが到着しました。

主人公スーリヤは何の変哲もない青年。その名前はインド神話における太陽神スーリヤに由来し、どんな痛みも感じないという特別な体質の持ち主。幼い頃に祖父から渡されたカンフー映画に衝撃を受けて以降、街の悪党を倒すことを目標として独自にカンフーの特訓を積んできた。ある日、スーリヤは離ればなれになっていた幼馴染が街を牛耳る悪の組織に狙われていることを知り、カンフーと痛み知らずの身体を武器に悪の組織との全面戦争を決意する──。

監督・脚本を務めたヴァーサン・バーラーは、脚本家としてキャリアをスタートさせ、2012年に長編初監督作がカンヌ国際映画祭の批評家週間に選出され、作品賞&カメラ・ドール(新人監督賞)にノミネート。その後『めぐり逢わせのお弁当』(13年)でヒンディー語版の脚本に携わり、長編監督2作目となる本作でトロント国際映画祭ミッドナイト・マッドネス部門観客賞を受賞しました。

ヴァーサン・バーラー

──痛みを感じないヒーローという発想はどこからきたのですか?
歯科医の友人から、患者の少年が治療をするときに麻酔をしないという話を聞いて、無痛症という病気を初めて知りました。それからネットで調べてみたり、ドキュメンタリーを観たりしました。BBCのドキュメンタリーで、無痛症の患者の生活を追ったものがありました。その後もずっと自分の中にこのアイデアが残っていて、そのアイデアと、幼少期から好きだったマーシャルアーツの作品を作りたいという思いが重なりました。

──アビマニュ・ダサーニーとの撮影中のエピソードを教えてください。
クライマックスの撮影で、スタントマンが怪我をしてしまって、撮影が一時中断したのですが、他のスタントマンを代わりに立て撮影続行しました。そんな中で誰も知らなかったのですが、アビマニュは右手の薬指を骨折していたんです!すごく痛いはずなのに、誰にも言えなかったらしく。主役なのだし、「怪我をした」と言ってくれればみんなケアできたのに、撮影を止めたくなくて言えなかったみたいです。さすがに、それを打ち明けられたときには「言ってくれよ!」と怒りすら感じましたよ(笑)。でも、それほど役に入り込んで撮影を続けたいという彼の気持ちは、誇らしく思います。

──迫力のあるアクションシーンの撮影手法を教えてください。
今回はアリ社のカメラ「アレクサ」で撮影しました。撮影手法としては、とにかく80年代香港映画と全く同じ形で撮影したいと思っていました。特に、今どきのアクションシーンは、ロングレンズを使ってかなり手振れをしていて顔をアップで映して、結局細かいアクションが見えなくなってう撮り方が主流になっています。かつては、キックをしている人物が二人いたなら、全部見えるように引いて撮っていました。なので、今回はアクションコーディネーターのエリックと一緒に細かく考えました。このシーンはこことここを繋ごうという感じで細かくカット割りを考え、パンチ数やアングルも最初から決めて効率よく撮りました。今のハリウッドのアクションは激しすぎて、観ていても全然目で追えなくて動きが理解できない。そうではなくて、全部見えるように、80年代の手法と同じように撮りたかった。そのためには、役者も全部動きを覚える必要がありました。でも見事にみんなその挑戦に受けて立ってくれて、僕は幸せでした。

──日本のカルチャーについて。
黒澤明、小津安二郎、宮崎駿、北野武、三池崇、ストリートファイター、サニー千葉、ドラゴンボールZ、ナルト……、ゲームやアニメや漫画など挙げればエンドレス!インドには日本文化のファンがたくさんいます。そういう作品に触れると、がんばろうと思えますね。

──日本で楽しみにしているファンにおすすめポイントとメッセージをお願いします。
物語はすごく普遍的なものだと思います。ニューヨーク、ムンバイ、東京、どこにいても同じように感じてもらえるはず。僕がブルース・リーやジャッキー・チェン、バスター・キートン、チャールズ・チャップリンなどの作品を観ていたとき、憧れるスターというより、彼らは僕の友達なんだといった、暖かく抱擁されている感じがしました。だから、そういう暖かさを多くの観客の皆さんに感じてもらえたら嬉しいです。

それから、夢を追うことの大切さを受け止めてほしい。夢というのは、月に行くとか火星に行くとか大きなものじゃなくていい。周りの人が見たら取るに足らない夢かもしれないけど、自分自身が夢だと思うならば、そのために戦って達成すべきだと思います。その感覚みたいなものをこの作品から感じてほしいですね。周りからつまらない夢だと思われても、自分で追うことによって、自分の物語を紡ぐことになり、周りにも響いて人々を繋いでいくことになるのだと思います。スーリヤも、人から見たら途方もないけど、彼の物語にみんなが繋がっていくわけですよね。誰もが童心を持っている。夢を追う事や温かさを感じることは全部童心に繋がっている。この作品をみて、自分の中の子供に気づいて、童心を取り戻してほしいです。この映画はアクションでもあるし、ラブストーリーでもあるし、希望の物語でもありますから。

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『燃えよスーリヤ!!』(英題:The Man who Feels No Pain)

監督・脚本/ヴァーサン・バーラー
製作/ローニー・スクリューワーラー
出演/アビマニュ・ダサーニー、ラーディカ―・マダン、グルシャン・デーヴァイヤー、マヘーシュ・マーンジュレーカル、ほか
2018年/インド/カラー/アメリカンビスタ/ヒンディー語・英語/原題:Mard Ko Dard Nahi Hota/138分/翻訳:中沢志乃/ヒンディー語監修:藤井美佳

日本公開/2020年12月27日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国公開!
配給/ショウゲート
公式サイト
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