Column

2019.11.21 7:00

【単独インタビュー】『ブライトバーン』ジェームズ・ガンが語る、メジャースタジオが怖気づくエッジの効いたホラーを作る意味

  • Atsuko Tatsuta

ジェームズ・ガンの下に“ファミリー”が結集して製作された”ヒーローホラー”映画『ブライトバーン/恐怖の拡散者』。

カンザス州ブライトバーンの農場に暮らすトーリ(エリザベス・バンクス)は、赤ちゃんを切望していました。そんなある日、謎めいた赤ちゃんが到来し、突然その夢が実現します。聡明で才能にあふれ、好奇心旺盛な男の子ブランドン(ジャクソン・A・ダン)は、トーリと夫のカイル(デヴィッド・デンマン)にとってかけがえのない存在となります。

しかし、12歳になったブランドンの中に強烈な闇が現れ、カイルは息子に恐ろしい疑いを抱き始めます。やがてブランドンは、普通の人が持つことのない異常な力を発揮し始め、ブライトバーンの街中を恐怖に陥れていきます──。

ジェームズ・ガン(製作)

B級ホラーを得意とするトロマ・エンターテインメント出身のジェームズ・ガンは、今ではMCUとDCを股にかけて活躍するヒーロー映画界の風雲児。本作では弟ブライアン・ガンといとこのマーク・ガンが手掛けた脚本に、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』のエンディング曲「ガーディアンズ・インフェルノ」のミュージックビデオでタッグを組んだデヴィッド・ヤロヴェスキーを監督として起用しました。

この愛すべきジャンル映画に込めた想いと自身の製作会社でホラーを作る意味とは?最新作『スーサイド・スクワッド』撮影中のジェームズ・ガンに、緊急メールインタビューしました。

──『ブライトバーン』は、あなたが2015年に創設したトロール・コート・エンターテインメントにて製作されましたが、この会社を創設した目的は?ハリウッドのメジャースタジオではできない、あなたらしい作品をプロデュースするために作ったのですか?
トロール・コートは、メジャースタジオが怖気づいて作ろうとしないエッジの効いた映画を製作するための、僕たちの遊び場のようなところです。メジャースタジオはリスクの低い大作を作りたがりますからね。でも映画を観に行くという体験の魅力を維持するには、リスクの高い映画や、新しいフィルムメーカーも必要です。10億ドルの興収が見込めないからといって、作るに値しない映画というわけではないのですから。

──この物語は、「スーパーマン」、特に1978年の映画のストーリーを彷彿させます。スーパーマンがあなたに与えた影響とは?また、MCUとDCの映画作りで学んだことは?
『スーパーマン』と『スーパーマンII 冒険篇』は僕が子どもの頃に大好きだった映画です。『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』、『スター・ウォーズ』と並んで、小さかった僕を駆り立てて、いつか映画作りに携わりたいかもと考えさせてくれる作品でした。予算規模の大きいDCとマーベルでの映画作りでは、想像できることならなんでも実際に描くことが出来るので本当に素晴らしいですし、あれほど壮大なスケールの映画を、僕のビジョン通りに独自に描かせてもらえているのは、とてもラッキーなことだと思います。メジャースタジオにおける”政治”の扱い方も学んできましたが、僕自身やビジョンは、なるべくそういったことに巻き込まれないようにしています。

──『ブライトバーン』はホラーをベースにSFやサスペンス、ドラマといった要素が混ぜられていますが、ヒーロー映画とホラー映画を結びつける面白さ(興味深さ)とは何でしょうか?
『ブライトバーン』は、僕は基本的にホラー映画だと捉えています。スーパーヒーローのオリジンストーリーをホラー視点で描いたもの、ということですね。僕はスーパーヒーローがとにかく大好きですが、特にそれまでにない視点で描かれるものが好きです。例えば『ブライトバーン』はホラーのヴィランとしてのスーパーヒーロー、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』はスペースファンタジー視点でのスーパーヒーロー、『スーサイド・スクワッド』は根本的には“戦争叙事詩”におけるスーパーヒーローを描くものです。

デヴィッド・ヤロヴェスキー監督(中央)、ジェームズ・ガン

──架空の街ブライトバーン、主人公の名前ブランドン・ブレイヤー、映画の中で印象的に登場する“BB”。この”BB”という文字はどういう意味があるのでしょうか?
脚本家のブライアンとマーク・ガン、そして僕は、ピーター・パーカーやクラーク・ケントといった多くのヒーローのように、(姓名が)同じ子音から始まる名前にしたいと思っていました。それから、映画の終わりでメディアは彼のことを街の名前で呼ぶようになることもわかっていました。ブライアンとマーク、デーヴ・ヤロヴェスキー監督、製作総指揮のサイモン・ハットが、この少年と街の名前の案を数百個も出して検討して、もともとあの街は「ブランドンバーグ」(Brandenburg)という名前で、映画のタイトルも「ブランドン・ブレイヤー」にしようと考えていた時期もあったのですが、ブライアンとマークがあの記号とブライトバーンという名前を考案しました。

──これをきっかけに「ブライトバーン」ユニバースを展開する可能性は?
そうなると良いなと思いますが、まだわかりませんね!

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『ブライトバーン/恐怖の拡散者』(原題:Brightburn)

製作/ジェームズ・ガン
監督/デヴィッド・ヤロヴェスキー  
出演/エリザベス・バンクス、デヴィッド・デンマン、ジャクソン・A・ダン、他
映倫:PG12指定

日本公開/2019年11月15日(金)全国ロードショー
配給/Rakuten Distribution、東宝東和
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