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2019.11.08 0:38

ポン・ジュノ監督がサプライズ来日!『パラサイト 半地下の家族』日本最速試写に登場

  • Fan's Voice Staff

第72回カンヌ国際映画祭最高賞パルムドールを受賞したポン・ジュノ監督最新作『パラサイト 半地下の家族』の日本最速試写会が11月7日(木)夜に都内で開催され、同監督がサプライズ登場しました。

ポン・ジュノ監督が来日中であることは事前に公表されておらず、上映後まさかの監督本人の登場に、満席の会場が狂喜乱舞!

監督はまず日本語で「こんばんは、ポン・ジュノです」と話し始め、「お会いできて嬉しいです」と挨拶。

続いて、MCとの質疑応答が行われました(※以降、ネタバレとなる内容は割愛して掲載)。

──パルムドール受賞の瞬間の気持ちは?
ポン・ジュノ監督「賞を頂いた瞬間はボーッとしていたんですけれども、その日の夜、この方(ポスターのソン・ガンホを指差す)とたくさんお酒を飲みました(会場からはドッと笑いと拍手が)。ほかの方々はすでに帰国された状態で、僕とソン・ガンホさんの二人だけ残っている状態でしたので、二人でたくさんお酒を呑みました。でも次の日の朝からは、シナリオを書いて、仕事をしていました」

──(映画の感想を聞かれた客席からの大喝采を受けて)
「とても気恥ずかしいですね。韓国とフランス、アメリカでは既に公開されていますが、日本では公開前ですよね。まだ不安でもあり緊張もしていますし、ワクワクもしています。明日公開されたらいいのにな、という感じです」

──この素晴らしい脚本の構想はどこから思いついたのですか。
「遡ると大変複雑なのですが、僕も大学の時に家庭教師をしていました。大学の時、家庭教師というのはよくやりますよね。その家は本当に裕福な、2階建ての立派な大きな家だったのですが、その家の中学生の少年の家庭教師をしていました。ある日その男の子が2階に連れて行ってくれたのですが、家の中にサウナがついていました。すごくそれが不思議な気持ちになりました。家の中のサウナというのはとてもプライベートな空間ですよね。そして両親がいないときには、寝室も見せてもらったりしたんですが、意図せずそのような他人の私生活を覗き見るような感覚がありました。その家に浸透していくような気分になったのですが、その当時の生々しい記憶がずっと残っていて、この映画につながっていったのかなと思います。僕の大学時代の同級生、友人を他の科目の先生としてその家に紹介しようかなということも考えていたのですが、実行には移せませんでした。2ヶ月で切られてしまったからです」

──ちなみに、どの科目を教えていたのですか?
「数学です。だからクビになってしまったんですね(笑)」

──高台に住む富裕層と半地下に住む低所得層の構図から格差社会をも映し出していますが、社会的な問題を取り上げようと思った理由は?
「映画を観たからこそ社会的な問題が描かれているかと感じるかもしれませんが、ここにでてくる登場人物というのは、政治に感心があるわけでもなく、社会運動をしている人々でもありません。この貧しい人々は、富裕な人たちを相手になにか闘争していたり戦っている状況でもありません。この映画には英雄や悪党が登場するわけでありませんし、天使や悪魔といった明確な分け方がされるわけではありません。適度に良い人であり、適度に悪い人である、というリアリティのある現実の中にいる人々が描かれています。私たちの周辺にいる人々が描かれているということで、ある意味それがまた社会的なものとして繋がっていっているのかなと感じます。これは政治的、社会的な旗印を掲げている映画ではなく、私たちの周りにいる面白おかしい、または悲しいストーリーが描かれていると思いますが、いつでも僕はおもしろい映画を作りたいという思いで映画を作っています」

──アカデミー賞長編映画賞の韓国代表にノミネートされ、アカデミー賞最有力と噂されていますね。
「よくご存知のようにアカデミーというのは投票のプロセスも大変複雑なので、期待していいものなのかよくわかりませんね。昨年是枝裕和監督の『万引き家族』がカンヌでパルムドールを受賞した後にアカデミーの外国語映画部門にノミネートされましたよね。なので、同じコースを歩んでほしいと韓国の観客は願っているじゃないかなと思っています。とてもプレッシャーですね」

──ソン・ガンホにキャスティングの話をした時はどのような反応でしたか?
「ソン・ガンホさんのキャスティングについては、一般的なキャスティングの過程とは異なります。彼とは17年以上ずっと一緒に仕事をしてきた間柄で、4、5年前に本当に気楽に二人で食事をしながら、”パラサイトというおかしなタイトルの映画があるんですけれども、そこの貧しい家の父親(の役)はどうでしょうか”と聞いたら、”ああ、いいですね、やってみましょう”という感じで、その当時はシナリオもない段階でした。ソン・ガンホさんだけでなく、息子役を演じている素晴らしい俳優のチェ・ウシクさんと、家政婦役のムングァンというキャラクターを演じたイ・ジョンウン、この3人は僕がシナリオを書く前からご本人と直接会って話をして、この俳優さんたちを頭の中に浮かべながら、あて書きをするという状態でシナリオを書いていました。ですので、キャスティングという名称をどのタイミングで使っていいのか、よくわからないのですが、もう数年前からそういう話をしていく中で、いつの間にか気がついたら準備が始まっていて、いつの間にかクランクインしていて、いつの間にかもう完成していたという感覚です」

──以前東京を舞台に香川照之主演で短編を撮られていましたが、また日本で作品を作る計画はありますか?
「実は日本のあるプロデューサーの方と一昨年から持続的に会いながら、日本で撮る作品の構想をいろいろ話しているところです。日本には香川照之さんだけでなく、素晴らしい俳優の方々がたくさんいらっしゃるので、日本の俳優さんとぜひまた一緒に映画を撮りたいという思いを持っています。そしてそのプロデューサーの方と、コツコツとではありますが、話し合いをしながら構想を練っているところです」

──気になっている日本の俳優はいらっしゃいますか?
「本当にたくさんいます。樹木希林さんを大変尊敬していたのですが、お亡くなりになられ、とても胸が痛かったです。いつかぜひご一緒させていただきたいと思っていました。『母なる証明』をもし日本でリメイクするなら、樹木希林さんがお母さん役なのではと、僕のまわりの人たちと話していました。浅野忠信さんも以前からとても関心を持って好きな俳優さんですし、最近は広瀬すずさんもすごく良い俳優さんだなと思います。もうまぶしいばかりの速度でずっと成長し続けている女優さんだなと思います」

──(ネタバレ満載な作品であるため)本作を観た後に、こういう風に勧めると良いといった表現はありますか?
「すでに公開されているアメリカやヨーロッパ各国では、Twitterを見ると、”とにかく行って観ろ”、”なるべくレビューや情報は触れることなく、行って観ること”といったコメントが多いです。とにかく何も知らないままで観るのが最高です。とてもシンプルですが、そういう推薦コメントが多いようなので、悪くないなと思います」

──日本のファンへメッセージをお願いします。
「様々な国で、多くの場所で公開を続けてきていますが、最後の到着地が日本となりそうです。日本の映画ファン方々の鑑賞、マニアックな方が深く掘り下げてシネフィル的に映画を観る、その皆さんの情熱にいつも大きく期待しています。日本での公開とともに、この『パラサイト』の旅路が良い形で締めくくられたらなと願っています。同時に、マニアやシネフィルの方々だけに向けて僕がこのような声を上げてしまうと、今日もお越しになられている配給会社の代表も少しさびしい気持ちを持たれるのではないかと思います。決してこの映画はマニアやシネフィルの方々だけに向けたものではなく、街を歩いていて、ふと何気なく劇場に足を運んだ際に、まったく情報を持たずにこの映画を観たとしても、予測不可能なストーリー展開で楽しめる映画になっていると思いますので、ぜひ皆さんにはそのようにも口コミをしていただければと思います」

質疑応答の後はフォトセッションが行われ、来場者と監督が一緒に記念撮影をする場面もありました。

『パラサイト 半地下の家族』は2020年1月10日公開。

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『パラサイト 半地下の家族』(英題:Parasite)

全員失業中で、その日暮らしの生活を送る貧しいキム一家。長男ギウは、ひょんなことからIT企業のCEOである超裕福なパク氏の家へ、家庭教師の面接を受けに行くことになる。そして、兄に続き、妹のギジョンも豪邸に足を踏み入れるが…この相反する2つの家族の出会いは、誰も観たことのない想像を超える悲喜劇へと猛烈に加速していく──。

出演/ソン・ガンホ、イ・ソンギュン、チョ・ヨジョン、チェ・ウシク、パク・ソダム、イ・ジョンウン、チャン・ヘジン
監督・共同脚本/ポン・ジュノ
撮影/ホン・ギョンピョ 音楽:チョン・ジェイル 
2019年/韓国/132 分/2.35:1/原題:Gisaengchung/PG-12

日本公開/2020年1月10日(金)、TOHO シネマズ日比谷ほか全国ロードショー!
配給/ビターズ・エンド
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