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2019.10.13 20:00

【ネタバレ無し感想・評価】『第三夫人と髪飾り』美しく壮絶な女たちのドラマ!新人アッシュ・メイフェア監督の衝撃のデビュー作

  • Fan's Voice Staff

名匠スパイク・リーとトラン・アン・ユンのバックアップにより、ベトナム出身の新人女性監督アッシュ・メイフェアが5年がかりで完成させた映画『第三夫人と髪飾り』。本記事では、10月1日(火)に開催された本作のFan’s Voice限定試写会に参加した日本のファンの感想とともに、見どころを紹介します。

19世紀の北ベトナム。渓谷の美しい繭の里の大地主の元に、三番目の妻として嫁いできたメイ(グエン・フオン・チャー・ミー)は、まだ14歳。ひとり息子をもつ第一夫人のハ(トラン・ヌー・イエン・ケー)、第二夫人で、3人の娘の母でもあるスアン(マイ・トゥー・フオン)とともに、大邸宅で暮らし始めます。ほどなく妊娠したメイは、男の子を出産しないと“奥様”とは呼ばれないことを知り、お腹の子が男児であることを神に祈ります。時を同じくして、第一夫人の息子ソンの嫁取りの話が持ち上がりますが、第二夫人に想いを寄せている彼にとっては、会ったこともない女性との結婚は苦痛でしかありませんでした……。

ポスト#MeToo時代を生きる女性たちに送るパワフルなメッセージ

一夫多妻制の理不尽なシステムの中で生き抜く女たちの生き様を、若くして嫁いだ第三夫人メイの視点から描く物語。シノプシスだけ読むと、ベネチア国際映画祭で銀獅子賞を受賞した中国の名匠チャン・イーモウの『紅夢』(91年)を連想させます。

しかしながら、女たちの嫉妬やしたたかな争いを描き“中国版大奥”と評された『紅夢』とは一線を画し、『第三夫人と髪飾り』は、愛や哀しみだけでなく、連帯、強さ、自立、セクシュアリティといったテーマにも踏み込んでいる点が決定的に新しいといえるでしょう。19世紀を舞台にしながらも、現代を生きる女性たちの共感を呼ぶストーリーです。

巨匠スパイク・リーが見出したアジアの新しい才能

監督のアッシュ・メイフェアは、1985年ベトナム・ホーチミン市生まれ。14歳でベトナムを離れ、欧米で教育を受け、オックスフォード大学、ロンドンの王立演劇学校を経て、ニューヨーク大学大学院で映画製作を学びました。自らの曾祖母から聞いた話などにインスパイアされて書いた脚本がスパイク・リー プロダクション ファンドを受賞し、その脚本を基に5年間かけて製作した長編デビュー作が『第三夫人と髪飾り』です。

トロント国際映画祭のディスカバリー部門でプレミア上映された後も51の映画祭で上映され、「普通は達成するために何十年もかかるような情感と抑制のバランスが見事なデビュー作」(Variety)「トラン・アン・ユンの『青いパパイヤの香り』やチャン・イーモウの『紅夢』など90年代のアート映画の名作を彷彿とさせる、巧妙に創られた作品。新たなる才能の誕生」(サンフランシスコ・クロニクル)などと絶賛されました。

主人公のメイを演じたのはオーディションで900人の中から選ばれた新人グエン・フオン・チャー・ミー。当時13歳だったにも関わらずメイ役を熱望し、親の反対を押し切って、少女から大人に成長していく主人公の無邪気さ、繊細さ、官能を見事に演じきりました。メイフェア監督と並んで、この驚異の新進女優には今後も注目したいものです。

『青いパパイヤの香り』を彷彿させると話題の、うっとりするほどの映像美

19世紀の桃源郷は、この映画にとって最も重要な要素のひとつだと考えたメイフェア監督。NYのセットでの撮影ではなく、ベトナムの秘境の地でのロケ撮影を選択しました。

選ばれたのは、首都ハノイから約90キロほど南に位置する、文化遺産と自然遺産の双方の価値を備える「世界複合遺産」のニンビン省チャンアン。さらに撮影隊は、車が入れる場所から徒歩で3時間ほどの秘境まで通い、ロケを敢行したそう。水墨画の絵のような美しい風景は新人監督の並々ならないこだわりがあってこそのもの。

美術監修を務めたのは、メイフェア監督の才能を高く評価したベトナム出身のトラン・アン・ユン。木々や田園、昆虫などのみずみずしいショットや美しい邸宅のインテリアの洗練が『青いパパイヤの香り』を彷彿とさせるのも納得です。

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『第三夫人と髪飾り』(英題:The Third Wife)

脚本・監督/アッシュ・メイフェア
製作/チャン・ティ・ビック・ゴック、アッシュ・メイフェア
出演/トラン・ヌー・イェン・ケー、グエン・フオン・チャー・ミー、マイ・トゥー・フオン(Maya)
2018年/ベトナム/93分/DCP/字幕翻訳:原田りえ/R-15

日本公開/2019年10月11日(金)Bunkamuraル・シネマ他全国ロードショー
配給/クレストインターナショナル
公式サイト
© Mayfair Pictures.

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