Column

2019.10.06 21:00

【単独インタビュー】『クロール ─凶暴領域─』主演カヤ・スコデラリオ

  • Mitsuo

最大級のハリケーンに見舞われたフロリダで、大量発生したワニから脱出を図るサバイバルスリラー映画『クロール ─凶暴領域─』。

大学の競泳選手のヘイリー(カヤ・スコデラリオ)は、疎遠になっていた父デイブ(バリー・ペッパー)が、最大級のハリケーンが迫りくる中、連絡が取れなくなっていることを知り、実家へ向かいます。地下で重傷を負った父を発見しますが、すでにハリケーンによる浸水によって、家はワニの巣窟に。最大級のハリケーンと地球最強の捕食生物=ワニという自然の脅威が容赦なく襲いかかる中、ふたりは決死の脱出を試みますが……。

サメを遥かに超える獰猛さで水陸で人間に襲い掛かるワニと、巨大ハリケーンという最悪の組み合わせが同時に襲ってくるという極限状態からのサバイバルを描いた本作。

監督を務めたのは、フランス出身のアレクサンドル・アジャ。女子大生が殺人鬼と戦うスプラッタホラー『ハイテンション』(03年)の生半可でない残酷描写が話題を呼び、日本でもカルト的人気を放っています。本作では普通の女性が突如、危機的状況に立ち向かうという、アジャが得意とするジャンルで、彼の感性が遺憾なく発揮されています。

主人公ヘイリーを演じたカヤ・スコデラリオは、イギリス人の父とブラジル人の母を持つ1992年生まれ。10代でキャリアをスタートさせ、ティーンエイジャーらの日々をリアルに描いたイギリスの人気ドラマシリーズ『Skins-スキンズ』(07年〜13年)や、『メイズ・ランナー』シリーズ(14年〜18年)のヒロイン・テレサ役で人気となり、『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』(17年)では、ジョニー・デップ演じるジャック・スパローと共に冒険の旅に出る天文学者に抜擢されました。ファッションモデルとしても活躍しており、2019年にカルティエが発表したシリーズ”クラッシュ ドゥ カルティエ”のイメージキャラクターにも選ばれています。

『クロール ─凶暴領域─』の日本公開に先立ち、カヤ・スコデラリオがFan’s Voiceの電話インタビューに応じてくれました。

 

ロンドン・フライトフェスト映画祭でのカヤ・スコデラリオ(2019年8月/Photo by Stuart C. Wilson/Getty Images for Paramount Pictures)

──競泳選手でもあるヘイリーは高い身体能力が求められる役ですが、この役を引き受けることに不安はありませんでしたか?
もちろん、とても不安でした。特に私は運動が得意なわけでもないですからね。でもそれは、今回挑戦したかったことの一つですし、この役をやりたかった理由の一つでした。準備には事前に3ヶ月ほど時間をかけ、(ロンドンの)ナイツブリッジにあるジムのジョージ・アシュウェルというトレーナーの下で、体力づくりをしました。ダイエットするというより、筋肉をつける必要があったので、プロテインもたくさんとったし、とにかく体幹をできるだけ鍛えるようにしました。それから水泳のコーチにもついてもらって毎日1時間泳ぎました。まずはロンドンで、それから(撮影地の)セルビアに行った後もね。はじめは全然泳げなくて、溺れそうになって浮き具を使ってたりしてましたが、アスリートのように泳げるようにしてもらいました。

──撮影現場に本物のアリゲーターはもちろんいませんでしたが、アリゲーター”もどき”と一緒に演じるのはいかがでしたか?
楽しかったですよ。といってもそれは緑色の布で覆われた枕なので、それに向かって、非常に恐くて獰猛なものだとひどく怯えているというフリをするのは、はじめはとても難しかったですね。(監督の)アレックスは、この映画で彼が思い描くアリゲーターのイラストをたくさん見せてくれたのですが、それで形や大きさのイメージはつかむことができて、助かりました。でももちろん現場では、想像力を働かせてアリゲーターがそこにいるフリをしなければなりませんでした。アレックスは叫び声をあげたりアリゲーターの様子を真似するのがとても上手で、それも参考になりましたね。

ロンドン・フライトフェスト映画祭でのカヤ・スコデラリオ(2019年8月/Photo by Stuart C. Wilson/Getty Images for Paramount Pictures)

──映画では非常に切迫した緊張感が伝わってきますが、実際の現場もそういった雰囲気だったのですか?
疲弊しすぎて大変だった日も中にはありますが、クルー全員ですばらしい結果を出せたと思います。みんな一緒に水の中にずっといて、一日中ウェットスーツを着ていたのでトイレも我慢して、セットの端から端まで泳ぎ回っていました。この過酷な体験を共有したことで、撮影が終わる頃にはみんな家族のようになっていて、とても楽しかったです。最後のシーンの撮影が終わった後、全員がプールに飛び込んで、ただしばらく泳いでいました。とても良い締め方だったと思います。

バリー・ペッパー演じる父デイブ

──父娘の絆というのもこの映画のテーマの一つですが、父親役を演じたバリー・ペッパーとはどのような会話をしたのですか?『メイズ・ランナー』以来の再会ですね?
最高でした。撮影現場が楽しくて安心できる環境であることは、私がとても大切にしていることなので、知っている俳優と共演できるのはとても良いことでした。エゴの強い横柄な態度をとる人がいない、皆がお互いに親切な現場でなければと思います。共演相手のことをすでに知っていて、しかもそれが良い人だとわかっていると、本当に多くの不安が吹き飛んで、助かります。バリーが素晴らしい人柄を持った素晴らしい俳優なのは、もうわかっていましたからね。彼とは二人(ヘイリーとデイブ)の関係について何度か話し込みました。彼にはティーン世代の娘がいるので、深い洞察を持っていました。だんだんとお互いのことを知りながら、アレックスと共に撮影を毎日の重ねていきました。

──ヘイリーを演じる上で、一番大変だったことは何ですか?
毎日、体力的に消耗するのが私にとっては大変でした。(撮影地のセルビアには)息子の世話をするために私の母親が一緒に来てくれていたのですが、時には疲れすぎて、血や泥を落とさずに(滞在先の)家に帰ってきてしまうこともありました。そうすれば翌朝に時間を節約できますからね。血やアザだらけで帰って来た私を見た母は、とても怖がっていましたが、夕飯を作ってくれたりしました。これまで演じてきた中で、体力的に最も大変な役でした。結果としてはすべて上手くいったので、とても誇りに思っていますがね。

──あなた自身は本作のようなパニックスリラー映画のファンなのですか?
実はこれまで好きではありませんでした。良いアクション映画は好きですが。私、観ている最中にとにかく飛び跳ねたり叫んだりしてしまうんです。映画館の中でいちばん大声で叫んでみんなが振り向いてしまうような(笑)。でも今回の映画を通じて、なぜこのジャンルの映画が人々に好かれるのか、理解できた気がします。アドレナリンが吹き出る物語の旅に出て、極限の気分を映画館で味わうことができます。とても面白いことで、私もこれからはもう少し”上手く”観ることができそうです。

──本作の完成版を観た時も飛び跳ねたりしたのですか?
もちろん!目をつむったりもね(笑)。

──あなたは10代から俳優として活動をはじめましたが、なぜこの仕事に興味を持ったのですか?
とにかく私にできることはこれだけのような気がしたからです。私にとって演じることは、呼吸をするようなもので、自分が生まれ持った一番の才能のように思います。小さい頃はとてもとても静かでおとなしかったのですが、物語が大好きで、それが私のはけ口でした。映画や物語の旅を通じて、自分と違った境遇の人を見ることが大好きです。学校で唯一自信が持てたのは、劇で演じていた時。私は失読症なので勉強するのは非常に難しくて、クリエイティブな芸術分野は、自分の人生でほかにはない自由を感じられました。この分野でなら、自分はなんでもできる気がしました。

──この映画はあなたのキャリアの中でどういった位置づけになるとお考えですか?
この映画で、私には身体的な能力があることを知ってもらえたと思うので、とても誇りに思っています。それから、若い女性がメジャースタジオの映画で主役を張れること、そんな映画を観客が観たいと思ってくれること、さらには、誰かのガールフレンドでもなければ半裸姿も見せない強い女性が、物語を牽引していけるということもね。だから今回の役をやりたかったのです。

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『クロール ─凶暴領域─』(原題:Crawl)

大学競泳選手のヘイリーは、疎遠になっていた父が、巨大ハリケーンに襲われた故郷フロリダで連絡が取れなくなっていることを知り、実家へ探しに戻る。地下で重傷を負い気絶している父を見つけるが、彼女もまた、何ものかによって地下室奥に引き摺り込まれ、右足に重傷を負ってしまう──。

監督/アレクサンドル・アジャ
製作/サム・ライミ 
キャスト/カヤ・スコデラリオ、バリー・ペッパー
全米公開/7月12日(金)
PG-12

日本公開/2019年10月11日(金) 究極のサバイバルスリラー、日本上陸
配給/東和ピクチャーズ
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