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2019.09.30 17:30

【ネタバレ無し感想・評価】『ジョーカー』は「ぶっちぎりの傑作」!ホアキン・フェニックス史上最高の演技に絶賛評が続々

  • Fan's Voice Staff

ひとりの孤独な男が〈悪のカリスマ〉に変貌していく姿をホアキン・フェニックス主演で描くトッド・フィリップス監督の『ジョーカー』。本記事では、9月19日(木)に開催されたFan’s Voice限定試写会に参加した日本のファンの感想とともに、本作の見どころを紹介します。

1980年代初頭の混沌としたゴッサム・シティの片隅で母親と暮らしているアーサー・フレック(ホアキン・フェニックス)。「どんな時も笑顔で、そして人々を楽しませなさい」という母の言葉を胸に、ピエロ(道化師)の格好をして、病院への慰問や路上でのサンドイッチマンとして細々と生計を立てています。人気のテレビ司会者マレー・フランクリン(ロバート・デ・ニーロ)の番組のファンで、スタンドアップ・コメディアンとして成功したいと夢を見ながらも、ある日トラブルを起こし、職を失ってしまいます──。

© Niko Tavernise

アカデミー賞の有力候補に躍り出た、映画史に残る傑作

“ジョーカー”は、DCコミックスの人気ヒーロー、バットマンの宿敵として知られていますが、本作は原作コミックの映像化ではなく、完全なオリジナル・ストーリーとして語られる衝撃のヒューマン・ドラマです。

コメディアンになり世界を笑わせようとした優しい男アーサーが、なぜ、狂気溢れる“悪のカリスマ”に変貌してしまうのか。荒廃した社会で富裕層に搾取され、踏みにじられることによって、アーサーが壊れ、その怒りを爆発させる様子を、ゆっくりと丁寧に描き上げる本作。貧困、失業など格差社会の中で行き場を失った人々の混迷と怒りという、今日的な社会問題を反映した、深みのあるストーリーが高く評価されました。

ワールドプレミアされた第72回ベネチア国際映画祭では最高賞の金獅子賞を受賞。「コミック映画の域を優に超えた、現代を非常に力強く捉えたポートレート」「あらゆる面で卓越した確かなクオリティを備えている」と、審査員団からは惜しみない賛辞が送られました。アカデミー賞をはじめとする今後の賞レースを席巻することは必至です。

ホアキン・フェニックス史上最高の演技

アーサー・フレック=ジョーカーを演じるのは、ホアキン・フェニックス。『グラディエーター』(00年)、『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』(05年)、『ザ・マスター』(12年)の3作でアカデミー賞にノミネート。近年では、リン・ラムジー監督の『ビューティフル・デイ』(17年)でカンヌ国際映画祭男優賞を受賞した、ハリウッドきっての演技派です。

監督のフィリップスは、脚本を構築している段階からフェニックスを念頭に置いていたそう。「ホアキンは人が金勘定をしている横でジャズを弾きだすような男なんです。一、二を争う演技派ですし、守りに入ろうとしない。ホアキンの演技は大胆かつ繊細です。ホアキンが参加してくれたら、特別な作品になると思いました」。52ポンド(23.5キロ)もの減量を行い挑んだ本作での渾身の演技は、映画史に残る“怪演”といえるでしょう。

新時代の『タクシードライバー』!?マーティン・スコセッシ監督の名作からの影響

虚実の境をさまようアーサーが暮らす、荒みきったゴッサム・シティのモデルとなったのは、70年代〜80年代のニューヨークです。衣装や美術、ロケ地もそのトーンが引用されましたが、物語やキャラクター設定も、NYの巨匠マーティン・スコセッシの名作『タクシードライバー』(76年)や『キング・オブ・コメディ』(82年)の影響が伺えます。

『タクシードライバー』は、ロバート・デ・ニーロ演じるベトナム戦争からの帰還兵トラヴィスの混沌を描き、『キング・オブ・コメディ』は、コメディアンとして成功したいと思っている男の物語で、こちらもデ・ニーロが主演しています。ちなみに、アーサーが憧れるTV司会者を演じているのがデ・ニーロであることは偶然ではないでしょう。

監督は、『ハングオーバー!』シリーズのトッド・フィリップス。『ザ・ファイター』でアカデミー賞脚本賞にノミネートされたスコット・シルバーと共に脚本も手がけました。また、製作者には、『ハングオーバー!』シリーズでトップスターとなったブラッドリー・クーパーも名を連ねています。

従来のアメコミ映画とは一線を画す、深い余韻が残るストーリー

コミックに登場するジョーカーには80年の歴史がありますが、コミックから離れたオリジナルの誕生秘話を描く本作は、いわゆる“アメコミ映画”とは一線を画しています。 ジャンル映画に抵抗を感じてきたというフェニックスも、そこに魅力を感じたそう。「大胆で重厚なストーリーだと思ったよ。こういう脚本はこれまで読んだことがない。トッドは物の見方がユニークだから、この作品の監督として申し分ないんじゃないかな」(オリジナル・プロダクションノートより)。

人間のダークサイドの深淵に迫る本作は、多くの傑作映画と同じように、ずしんと心に響き、その余韻が後を引くことになるでしょう。

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『ジョーカー』(原題:Joker)

監督・製作・共同脚本/トッド・フィリップス
共同脚本/スコット・シルバー
製作/トッド・フィリップス、ブラッドリー・クーパー、エマ・ティリンジャー・コスコフ
キャスト/ホアキン・フェニックス、ロバート・デ・ニーロ、ザジー・ビーツ、ほか
2019年/122分/映倫:R15+指定

日本公開/日米同日 2019年10月4日(金)全国ロードショー
配給/ワーナー・ブラザース映画
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