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2019.09.04 17:00

『ヒンディー・ミディアム』インドの教育&お受験事情とは?在日”高学歴”インド人が語る

  • Fan's Voice Staff

ハリウッドでも活躍するインドの名優イルファーン・カーンを主演に、“インドのお受験”を笑いと感動と共に描く教育エンターテイメント映画『ヒンディー・ミディアム』。

デリーの下町で洋品店を営んでいるラージと妻のミータは、娘ピアを進学校に入れることを考えていた。面接試験では親の教育水準や居住地まで調べられることを知り、学歴も高くないふたりは娘のために高級住宅地に引っ越して本格的に面接に臨むが、結果は全滅。落胆する2人に、ある進学校が低所得者層のために入学に優先枠を設けているという思わぬ話が舞い込む。追いつめられたラージたちはスラム街に引っ越して優先枠での入学を狙うのだが……。

娘の“お受験”のために階級を飛び越えて悪戦苦闘する中で、人生において本当に大切なことに気付くまでを描いていく本作。父親が学位しか持っていなかったため娘の入学を拒否されたというインドで実際にあった驚愕の出来事をもとに、ふたりと同じように高等教育を受けることができなかった親達への丁寧なヒアリングを経て制作されました。“英語”が何より重視されるインドの教育の現状と競争の狂乱を、お受験に翻弄される夫婦の姿を通じてコメディータッチで描いていきます。

タイトルの“ヒンディー・ミディアム”とは、インドで“ヒンディー語で授業を行う公立学校”のこと。一方で、ラージとミータが娘を入学させようとする“イングリッシュ・ミディアム”は、英語で授業を行う名門私立を指します。

公開に先立ち、この“イングリッシュ・ミディアム”を実際に卒業し、現在日本に留学中の“高学歴”インド人が、『ヒンディー・ミディアム』で描かれるインドの“お受験”戦争の裏側や、インドのリアルな教育事情を語ってくれました。

マニさん

取材に協力してくれたのは、昨年から東京大学大学院に留学中の25歳のインド人青年マニさん。マニさんによると、インドの私立校(イングリッシュ・ミディアム)は小中高の一貫制となっており、彼が地元の私立小に入学したのは5歳になる年だっだそう。

──本作で描かれる“お受験”戦争は実際にあることですか?
マニさん「ドラマティックな描写もありましたが、現実に近いところもあります。良い学校に行くには本当に厳しい競争を勝ち抜かねばなりません。多くの子供達は公立の学校に行きますが、私立の学校に行くのはとても大変なことで、これは事実なんです」

──イングリッシュ・ミディアムの合格率はどれぐらいですか?
マニさん「僕が小学校に入った20年前はおそらく25%位、今は10%〜15%位だと思います。最もレベルの高い学校では10%を切っているのではないでしょうか」

映画では、小学校のお受験クラスに見学に行った親子の前に、3か国語を操る子供や様々な恐竜の名前や特徴を理解する子供など、様々な特技を持つ“ライバル”達が登場します。

──マニさんも4歳から勉強をしていたとのことですが、小学校入学試験の内容は?
マニさん「面接試験はありましたが、かしこまったようものではなかったように思います。ただ近年、教育がビジネスになって以降は競争が激化している印象ですね。僕の時は校長先生や学校の方々と、好きなことや好きな色、そして計算の知識について聞かれたことを覚えています」

映画に登場する名門私立小では、絵画やダンス、水泳、乗馬といった様々な授業が行われていますが、マニさん曰く、私立小での主だった科目は算数・言語(英語・インド国内の言語2種類の計3言語)・基礎科学の3つで、授業の全ては英語で行われるそう。小学校のうちから幅広い教科を学ぶ日本とは違い、幅広いボキャブラリーが必要になる歴史や地理といった科目は、中学に入ってから初めてから始まるのだといいます。

──親からのプレッシャーなどはありましたか?
マニさん「親からのプレッシャーはなかったですね。でも今の子供達は感じているのではないかと思います。僕の両親は映画のふたりと同じようにイングリッシュ・ミディアムではなかったので、とても苦労しました。だから、子供達に同じ思いをさせたくないという気持ちはあったかもしれません。インドには色んな言語がありますが、今のインド社会において英語は特に重要です。だから、イングリッシュ・ミディアムに行けたことや、そこで学び続けられた僕はとてもラッキーでした」

──イングリッシュ・ミディアムとはどんな場所なのですか?
マニさん「インドでは、良い学校に行くと良い人生が送れると多くの人が信じています。もちろん100%正しいわけではありません。でも良い学校に行くと確かに視野が広がり、良いチャンスに恵まれます。公立校出身の友達もたくさんいますが、僕の学校の同級生よりも賢い人もいます。でも、人生をより良いものにするために、教育は必要かもしれません」

Googleのサンダー・ピチャイ氏、Microsoftのサティア・ナデラ氏、Adobeのシャンタヌ・ナラヤン氏など、世界的トップ企業のCEOにも優れた人材を多く輩出するインド。映画で描かれるイングリッシュ・ミディアムのはるか先にあるのが、そういった世界であることを意識しながら観ると、映画の観方も違ってくるかもしれません。

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『ヒンディー・ミディアム』(原題:Hindi Medium)

デリーの下町で洋品店を営んでいるラージ・バトラは、妻のミータと娘のピアの3人暮らし。娘の将来のため、ラージとミータは娘を進学校に入れることを考えていた。そうした学校は面接で親の教育水準や居住地まで調べていることを知るが、ふたりの学歴は高くなく、2人は娘のために高級住宅地に引っ越して本格的に面接に臨むが、結果は全滅。落胆する2人に、ある進学校が低所得者層のために入学に優先枠を設けているという思わぬ話が舞い込む。追いつめられたラージたちはスラム街に引っ越して優先枠での入学を狙うのだったが……。

監督/サケート・チョードリー
脚本/ジーナト・ラカーニー、サケート・チョードリー
出演/イルファーン・カーン、サバー・カマル、ほか
2017年/インド/132分/ヒンディー語/シネマスコープ/カラー/5.1ch/映倫G

日本公開/2019年9月6日(金)新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国ロードショー
配給/フィルムランド、カラーバード
公式サイト:hindi-medium.jp