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2019.08.28 7:30

90歳のセックス・セラピストが日本の観客に向けて語る!『おしえて!ドクター・ルース』インタビュー

  • Fan's Voice Staff

アメリカでカリスマ的な人気の90歳の現役セラピスト、ドクター・ルースの波瀾万丈な人生を描いた映画『おしえて!ドクター・ルース』の公開に先立ち、ドクター・ルースが日本の観客へ向けて語ったインタビューとメッセージ動画が到着しました。

80年代のニューヨーク。日曜深夜、ラジオから流れる「セクシュアリー・スピーキング」に人々は夢中になりました。誰も教えてくれない性のお悩みをズバリと解決する、身長140センチ、ドイツ訛りの”ドクター・ルース”ことルース・K・ウエストハイマーは、そのチャーミングなキャラクターでたちまちお茶の間の人気者に。性の話はタブーだった時代に、明瞭かつ学術的に、ニコニコとユーモアをきかせながらリアルな性を語り、悩める大勢の人々を救ってきた彼女は、エイズへの偏見を無くすべく立ち上がり、中絶問題で女性の権利向上を後押しし、LGBTQの人々にも寄り添ってきました。

一方でルースには、少女時代に家族をホロコーストで失い、30歳で運命の出会いをした最愛の夫も失ったという辛い過去も。「痛いほど分かったの。触れられ、愛されることの大切さをね」。逆境から生まれた人生哲学を持つ彼女の言葉には、“自分らしく生きるヒント”がたっぷり詰まっています。

ホロコーストの孤児、元スナイパー、シングルマザー、3度の結婚を経ながらも、自分らしく生きるために学び、恋し、戦い、働く。そんな“ドクター・ルース”はいかにして誕生したのか。何があっても前に進み続けるポジティブな彼女の生き様に、誰もが魅了されること間違いなし!『おしえて!ドクター・ルース』は、時代に翻弄された90歳の半生をたどるドキュメンタリーです。

Photo by Mayumi Nishida

ニューヨーク在住のドクター・ルースの自宅で行われた本インタビュー。密着ドキュメンタリーの依頼を断り続けてきた彼女が、なぜ今、映画製作を承諾し、ホロコースト孤児となった辛い経験を詳細に明かしたのか?さらに、どんな時もポジティブでいる秘訣は?そんな気になる質問に、日本の観客のためだけに特別に答えてくれました。

──数あるドキュメンタリー作品への出演オファーの中から、ライアン監督の依頼を受けた理由を教えてください。
映画化をオファーされたとき、ライアン監督の過去作品を観て、素晴らしいと思いました。そして、これはすごく大事なことなのですが、彼はユダヤ人ではなかったのです。だから、その視点が強くなりすぎることなく、この映画は世界中の人に届くユニバーサルな内容になると思いました。ライアンが監督であったことで、この作品は、日本の人にも楽しんでもらえる、全世界に向けたものになったのです。そして、素晴らしい家族に恵まれること、素晴らしい子供時代を過ごすことがいかに大事かということや、自分自身が人生において何か素晴らしいことをすると決断するのがいかに大事なことか、この映画で見せることができたと思っています。

Photo by Mayumi Nishida

──本作では幼少期に体験された、ホロコーストの辛い過去を鮮明に振り返っていらっしゃいます。当時のエピソードに驚いた方もたくさんいらっしゃったかと思います。ご自身の過去を語ることについて、抵抗などはありませんでしたか?
そうですね。私は、いつもは語りたくないのです。だけど今回語ることにしたのは、それが適切な時だと思えたからです。例えば最近、自分が10歳半の時に家族と引き裂かれたことがいかに最悪なことだったのかを語るようにしています。なぜなら、アメリカの国境線上で、移民の子供達が家族から引き裂かれたのを見たからです。つまり、いつそれを語るのが相応しい時期なのか、によるのだと思います。

それから、私はニューヨークにあるユダヤ人遺産博物館の役員を務めていますが、今、何百万ドルというお金のかかった展示を行なっています。アウシュヴィッツ収容所に関する内容です。皆さんには、2回見てくださいと言っています。1回目はとても動揺すると思います、そのような内容の展示です。そして2回目に行った時にはナチズムについて学んで欲しいのです。すべての人にとって、日本の人にとっても、今日それを学ぶのは重要なことだと思います。そこにはナチスと国家社会主義ドイツ労働者党について、私も知らなかったような事が展示されています。それは、スイスに疎開で送られた私の経験について語っていることとも合っています。スイスに行っていなければ、今こうして生きていなかったのです。イギリスに送られた1000人の子供と、スイスに送られた300人の子供だけが生き残りました。それ以外はみんな殺されてしまいました。展示は来年まで行なわれていますが、ぜひ、すぐに見に行ってください。すごく大事な展示なのです。

──辛い過去の経験がありながらも、人の悩みに寄り添い、明るい笑顔で対応する姿に心をうたれました。どんな時もポジティブでいる秘訣を教えてください。
それは、ユダヤ人としての伝統をしっかりと引き継いでいるからだと思います。それが私に強さをくれます。それからユダヤ教の伝統では、ユーモアを持って語られた教えは、絶対に忘れない教えとなる、と言います。私はジョークは言えませんが、ユーモアを使うことはできると思ったのです。語る時にユーモアを使うというのは、非常に重要なことです。

Photo by Mayumi Nishida

──日本では性について話すことは恥ずかしいという風潮が比較的強いですが、性についてオープンに語すのに、何かアドバイスがあればお願いします。
おすすめするのは、ドクター・ルースが書いた本を1冊、ベッドサイドに持っておくこと(笑)。そこには様々なポジションでのセックスが描かれているので、パートナーに、どれか試してみたいものを指で差して見せてみてください。語る必要はありません(笑)。人によっては、言葉で伝えられないと思っている人も多いと思います。だから絵で見せて、私がやって欲しいのはこれだと、それで伝えればいいのです。ドクター・ルースが、これが私には必要だと言っている、と言えばいいのです。

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『おしえて!ドクター・ルース』(原題:Ask Dr. Ruth)

家族をホロコーストで失った少女時代、終戦後はパレスチナでスナイパーとして活動し、女性が学ぶことが難しかった時代に大学で心理学を専攻。アメリカに渡り、シングルマザーとなり娘を育てた。そして、30歳の時に、3度目の結婚で最愛の夫フレッドと出会う。自分らしく生きるために学び、恋し、戦い、働く。いつだって笑顔で前を向く“ドクター・ルース”はいかに誕生したのか。