Column

2019.08.16 10:00

【単独インタビュー】『永遠に僕のもの』主演、”美貌の殺人鬼”ロレンソ・フェロの素顔

  • Fan's Voice Staff

2018年、アルゼンチンでナンバーワンの大ヒットを記録した『永遠に僕のもの』。

ブロンドの巻毛が印象的な17歳の美少年が強盗と殺人を繰り返し、1年余で11人を殺害という、1971年に世間を震撼させた衝撃の事件にインスパイアされた青春クライム・ムービーです。

『オール・アバウト・マイ・マザー』で知られるスペインの巨匠ペドロ・アルモドバルが製作、アルゼンチンの気鋭ルイス・オルテガが監督を務める本作は、2018年のカンヌ国際映画祭「ある視点」部門で絶賛され、話題となりました。

当時、事件に関わった警官から「まるで青年版のマリリン・モンローのような美しさだった」といわしめるほどの美貌をもち、「黒い天使」と呼ばれたカルロス・ロブレド・プッチをモデルにした主人公カルリートスを演じるのは、アルゼンチンの新進俳優ロレンソ・フェロ。名優ラファエル・フェロを父に持つ彼は、この作品で本格的なスクリーンデビューを果たし、南米での映画の大ヒットと共ににブレイク中です。

本作のプロモーションのために初来日したロレンソに単独インタビューしました。

──カルリートスの役は、オーディションで勝ち取ったそうですね。まず、この役のどこに魅力を感じたのでしょうか?
このプロジェクトのすべてに惹かれました。物語、キャラクター、そしてアルモドバルなど関わっているスタッフ。特に、ルイス・オルテガが監督というところも大きかったですね。彼の世界の見方、考え方、そしてアート表現の仕方はとても深いと思っていたので。

僕がこの役を演じることになったのは、オーディションで監督が僕に好印象を抱いたからだと聞いています。他の俳優は、殺人犯の役を演じるということで、クレイジーで暗いキャラクターを作り上げて、オーディションに望んだらしいんです。でも僕は、もっとオープンというか、チャレンジしてみようと思って、楽しくユーモアを交えて明るい感じで演じてみました。それがカルリートスの冒険好きな面と共通しているということで、気に入られたみたいですね。

──これは1971年に起こった、アルゼンチンでは有名な実在の事件にインスパイアされた物語です。1998年生まれのあなたは、この事件のことは知っていましたか?
このプロジェクトに関わるまでは、カルロス・ロブレド・プッチという人間や事件に関してまったく知りませんでした。オーディションを受けてから、その事件についていろいろ調べました。どうやって彼が人を殺したのかとか、家族のこととか情報をいろいろ集めたのです。正直、世の中にはクレイジーな人がいるなあと思いましたよ!

インタビュー中、手元のプレスシートに落書きし始めるロレンソ。

──この作品は、スペインの巨匠であるペドロ・アルモドバル監督がプロデュースを手掛けていますね。
込み入ったことは話していないですね。日常会話はしましたけど。

──初めての主演作になりますが、撮影で一番、難しかったことは?
たぶん、踊りのシーンですね。大勢のスタッフや関係者がいたので、気恥ずかしかったんです。オルテガ監督に言って、みんなに外に出てもらい、最低限の人数で撮影してもらいました。で、ウィスキーを持ってきてもらって、それを飲んでから撮影に入りました。

──俳優として勉強したことはあるんですか?
いいえ。学校などには行ってません。演劇講座を受講したことはありますが、その程度です。が、今回の映画に出演するにあたっては、演技コーチについて指導を受けました。

──あなたの父親はアルゼンチンの名優ですが、いつ頃からあなたは俳優になろうと思ったのですか?
俳優の息子だから小さい頃から俳優になりたかったかというと、実はそんなことはないんです。子どもの頃は、僕自身は、俳優になるということはまったく想像したこともありませんでした。成り行き上、俳優になったというのが正しいかもしれません。

──映画の中で重要な役割を果たすラモン役のチノ・ダリンの父親も、有名な俳優のリカルド・ダリンですね。二世俳優であるということで、チノにシンパシーは感じますか?
ふたりの共通項は、まさにチノも俳優の息子ということですね。彼とはこの映画で知り合ったんですが、すごく仲良くなったんです。やはりなにか通じるものがあるのかもしれないと思います。

──あなたは、”Kiddo Toto”名義でラップシンガーとしても活躍していますね。この映画で使用されている、当時の音楽もとても興味深いですね。
まさに!この映画のおかげで70年代の音楽を知ることができて本当に嬉しいんです。ルイス・オルテガ監督が、当時の音楽についていろいろ教えてくれました。それまで聞いたことがあったのは、最近の音楽がほとんどだったので、とても新鮮でした。あの時代の歌を好きになりましたよ。例えば「朝日の当たる家」とか、大好きですね。

──普段は、どんな音楽を聞くのですか?
ラップが一番多いですね。好きなミュージシャンはいっぱいいるので、なかなかひとりには絞れませんけど。トラビス・スコットやドレイクとか、フランク・オーシャンとかはとても好きです。

──ミュージシャンとしても2018年にアルバムを出したそうですが、俳優としてはすでに次作が決まっていますね。ミュージシャンと俳優業は、どのようにバランスをとってやっていくのですか?
俳優をやっていない時間に歌う、というシンプルなやり方ですね(笑)。もしかしていつか、それが一緒にできるかもしれませんけど。先のことはわかりませんね。

──ところで、今日はマリオのTシャツを着てますが、日本文化に興味があるのですか?
日本のファッションとかゲームとか日本のカルチャーはとても好きですね。宮崎駿のアニメや、「ポケモン」「スーパーマリオ」などのゲーム……驚くほどクリエイティブでオリジナルな日本人の視点が好きなんです。

──初来日にあたって、どんな日本を見て帰るつもりですか?
今回の来日での映画のプロモーション以外のミッションは、新曲のビデオクリップ撮影なんです。カメラマンも一緒に来日していて、今監督がまさにロケハン中です。映画関係の取材が終わってから、僕も時間をとって撮影場所を決めるつもりです。それ以外は、できるだけいろいろなものを見て帰りたいと思います。

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『永遠に僕のもの』(原題:El Angel)

ブロンドの巻き毛に透き通る瞳、艶やかに濡れた瞳、磁器のように滑らかな白い肌―。神様が愛をこめて創ったとしか思えない美しすぎる17歳の少年、カルリートス。彼は欲しい物は何でも手に入れ、目障りな者は誰でも殺す。息をするように、ダンスを踊るように、ナチュラルに優雅に。やがて新しい学校で会った、荒々しい魅力を放つラモンと意気投合したカルリートスは、二人で様々な犯罪に手を染めていく。だが、カルリートスは、どんなに悪事を重ねても満たされない想いに気づき始める―。

監督/ルイス・オルテガ
プロデュース/ペドロ・アルモドバル、アグスティン・アルモドバル、ハビエル・ブリア
出演/ロレンソ・フェロ、チノ・ダリン、ダニエル・ファネゴ、セシリア・ロス
2018年/アルゼンチン、スペイン/カラー/ビスタ/5.1ch/115分/字幕翻訳:原田りえ/映倫:R15

日本公開/2019年8月16日(金)渋谷シネクイント、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館他全国順次ロードショー!
配給/ギャガ
公式サイト
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