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2019.08.01 6:00

【ネタバレなしレビュー】『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』

  • Mirei

回を重ねる度にパワーアップを続ける『ワイルド・スピード』シリーズ待望の最新作『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』が8月2日(金)に日米同時公開される。

ドウェイン・ジョンソン演じるルーク・ホブス(左)と、ジェイソン・ステイサム演じるデッカード・ショウ

今回は”ワイスピ”シリーズでおなじみである強烈キャラクターの二人、元FBI特別捜査官のルーク・ホブス(ドウェイン・ジョンソン)と元MI6エージェント、デッカード・ショウ(ジェイソン・ステイサム)が主人公の、いわゆるスピンオフである。

“政府側”の人間だったはずがいつの間にかファミリーに欠かせない一人となった、重量級車をワイルドに駆る熱血漢ホブスと、シリーズ第7作『ワイルド・スピード SKY MISSION』(15年)にシリーズ最強のヴィランとして登場、目的を粛々とこなし、高級車を優雅に操るクールとスマートの代名詞ショウ。初対面時から激しい殴り合いを繰り広げた最高にソリが合わない二人が、全人類の半分を滅ぼすウイルスのカギを握るショウの妹、ハッティを守るために手を組み、世界中を股にかけ大暴れする。

ヴァネッサ・カービー演じるハッティ・ショウ(左)

思えば、第4作『ワイルド・スピード MAX』(09年)以降のワイルド・スピード本編には必ず、超ド級アクションの爽快さと共に、少しの暗さと切なさが漂っていた。ファミリーの大黒柱であるドミニク(ヴィン・ディーゼル)がファミリーを裏切ってしまうという、”ワイスピ”史上最もやるせない展開で物語がスタートする第8作『ワイルド・スピード ICE BREAK』(17年)において、作中の雰囲気を一気に明るくしていたものは、ホブスとショウの存在に他ならない。二人が刑務所で繰り広げる脱獄アクションは、何度見ても無条件に気分が上がるものだ。

『ワイルド・スピード ICE BREAK』より

今作では、そんな二人の可笑しな掛け合いが、これでもかというほど取り込まれている。時折投げ込まれる感傷はまったく後を引くことなく、彼らのワンパンチでどこかへ飛んでいってしまう。”ワイスピ”のスピンオフに留まらず、今作を端として二人の新たなシリーズを作ることができてしまいそうだ。

『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』は、ホブスとショウを主人公にしたスピンオフであるため、アクションの要素の割合は彼らに合わせた仕様となっている。端的にいうとその割合は「車:筋肉=3:2」だ。これまでのシリーズ本編におけるアクションの割合が、だいたい「車:筋肉=3:1」であるとすると、車なしのアクションに重きが置かれているのが明確だ。しかも、カーアクションでさえも、彼らの筋肉を前提としたハイブリッドな側面が見られる。

「見る者の度肝を抜くアクション」は、”ワイスピ”シリーズの魅力として真っ先に上がる内の1つであろう。圧倒的なドライビング・テクニックを駆使し、レア車を贅沢に使った痛快なカーアクションは、シリーズ初期からのウリであり、車バカたちのありえない発想は進化を続け、シンプルなカーチェイスに留まらない、他の追随を許さない巨大スケールのカーアクションへと成長してきた。車を高速で駆ることで監視カメラに映るのを避けようとしたり、車にパラシュートをつけて空を飛んでみるだけでは飽き足らず、『〜ICE BREAK』では、NYの街に高層ビルから大量の車の雨が降り注いだのだった。

カーアクション推しの”ワイスピ”シリーズに、車を使わないアクションが持つ魅力を付与したのは、ドウェイン・ジョンソン演じるホブスの功績だ。彼が登場する以前の作品にも、もちろん殴り合いのシーンは存在した。しかし、ホブス初登場作である第5作『ワイルド・スピード MEGA MAX』(11年)でのドミニクとの殴り合いは、それまでの迫力とは一線を画すものであった。以降の作品では、派手なカーアクションに負けない迫力を持つ肉弾戦が繰り広げられるようになった。

ホブスが持ち込んだ「ド派手な肉弾戦」の魅力の片棒を担ぎ、強める人物こそがデッカード・ショウだ。先に触れた『〜ICE BREAK』での二人の脱獄アクションは、それを象徴するシーンだ。二人が並列に進みながら、大量の敵をこともなげに薙ぎ払っていく様子は圧巻だ。

今作はそんな二人が主人公なのだから、肉弾戦の占める割合が大きくなるのは必然と言える。ドウェイン・ジョンソンとジェイソン・ステイサム、アクション・スーパースター二人をかけ合わせることで生じるファンの期待に、完全に応えた構成なのだ。シリーズに欠かせない“常識を超える”カーアクションのポイントは押さえつつ、超重量級、”ワイスピ”ファミリーの中でも腕っぷし自慢の二人を存分に生かした、こちらも常識を軽々と超えたアクションの連続にもう、まったく笑うしかない。

カーアクションに対し肉弾戦の割合が大きくなっても、今作は”ワイスピらしさ”を色濃く残す。シリーズを通したテーマの核である「ファミリーの絆」が話の中心に据えられているからだ。過去作でも登場してきたホブス、ショウそれぞれの個性的なファミリーは、より掘り下げられている。ホブスが大事にしている娘と、帰りたくない故郷、サモア。ショウのエレガントな最強ママと、久々に再会する妹。シリーズ本編では、「ファミリーの絆」はどんな困難、どんな敵をも乗り越えさせる力を持っている。ホブスとショウ、二人によるファミリーとのふれあいと、仲が悪いくせに息はぴったり、お互いに信頼を置く二人のファミリー感は、それこそ“ワイスピ”的だ。

イドリス・エルバ演じるブリクストン(中央)

生身の人間同士でしか築けない絆と、加工一切なし「生身」の武器と車と身体で、肉体改造済みの超人ブリクストンとハイテク武器を駆使する彼の背後組織に立ち向かう。すべてを「生身」の筋肉でねじ伏せられて、鑑賞後に残るのは、異様なまでの爽快感だ。前作までを見ていても、見ていなくても最高に楽しめる。8月のうだるような暑さと湿気を吹き飛ばすのに、ここまで最適な映画は他にないだろう。

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『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』(原題:Fast & Furious Presents: Hobbs & Shaw)

ロサンゼルスで娘と暮らす、ワイルドなスタイルで超重量級のクルマを操る追跡のプロ・元FBI特別捜査官ルーク・ホブスと、ロンドンで優雅な生活を送る、クールなスタイルで超高級なクルマを駆る規格外の元MI6エージェント・デッカード・ショウ。2人の元に、行方をくらませたMI6の女性エージェント・ハッティを保護して欲しいという政府の協力要請が入る。ハッティは全人類の半分を滅ぼす新型ウイルス兵器をテロ組織から奪還したが、組織を率いる、肉体改造を施された超人的な戦士・ブリクストンに急撃され、ウイルスと共に消息を絶った。しかも、彼女はショウの妹でもあるという。ホブスとショウは「こんな奴と誰が組むか!」と協力を拒否するが、ウイルスの回収を最優先するため、仕方なく手を組む事に……世界の命運はこの2人に託された!

キャスト/ドウェイン・ジョンソン、ジェイソン・ステイサム、イドリス・エルバ、ヴァネッサ・カービー
監督/デヴィッド・リーチ
脚本/クリス・モーガン

日本公開/8月2日(金)日米同時公開
提供/ユニバーサル・ピクチャーズ
配給/東宝東和
© Universal Pictures