Column

2019.07.12 20:00

【単独インタビュー】『アイアン・スカイ』ティモ・ヴオレンソラ監督が語る、ダークサイドの魅力と現実

  • Fan's Voice Staff

月面からナチスが侵略してくるパニックを描いた大ヒットSFアクション『アイアン・スカイ』の7年ぶりの続編『アイアン・スカイ/第三帝国の逆襲』が、7月12日(金)に日本公開されました。

2012年公開の前作は、月の裏側にナチスが秘密基地を建設し人類を侵略するという規格外の設定やブラックユーモアあふれる内容、そして迫力のバトルシーンが世界を魅了し、脚光を浴びました。またファンから1億円を集めたことで、クラウドファンディングの成功例としても話題となりました。

2作目となる本作は、前作を遥かに超える超大作SFアクションに。人類は月面ナチスとの戦いに勝利するも、核戦争で自滅し地球は荒廃化。それから30年後、人々はナチスが月面に作っていた基地で生き延びていましたが、エネルギーが枯渇し、絶滅の危機を迎えていました。主人公オビは荒廃した地球の深部に新たなエネルギー源があることを知り、人類を救うため、誰も足を踏み入れたことのない〈ロスト・ワールド〉へと旅立ちます。しかしそこには、ナチス・ヒトラーと結託したオサマ・ビン・ラディン、マーガレット・サッチャー、金正恩らが率いる秘密結社ヴリル協会が君臨する世界が広がり、人類滅亡を企てます──。

『アイアン・スカイ』を生み出した鬼才ティモ・ヴオレンソラ監督は、1979年11月19日フィンランド生まれの39歳。コマーシャルやミュージシャンのプロモーション動画を製作する一方、2005年にSFコメディ映画『スターレック 皇帝の侵略』を発表し、国内外で高い人気を獲得しました。

日本公開に先駆け来日したヴオレンソラ監督に、インタビューを敢行。パロディやブラックユーモアあふれる『アイアン・スカイ』シリーズの背景にある考えを伺いました。

──今作のアイディアはどのように生まれたのですか?
1作目の『アイアン・スカイ』のストーリーを思いついた時に、今作のアイディアも一緒に生まれました。月にいるナチスの陰謀論を扱ったのが1作目で、それに近い話として、地球空洞説の話で続くようにしようと。ナチスも地球空洞説には興味を持っていましたからね。優れた力を持った、アーナと呼ばれる超人類が住むという地底への入口を探そうと、彼らは北極などへ探検隊を派遣したくらいですからね。本作ではそうした超人類を、ヴリルと呼んでいます。

サイエンス・フィクションのルーツは地底にあります。宇宙へ行く前に、SFの物語は地底や海底を描き、1800年代には地球空洞説を扱いました。ですので、このSFのルーツというものに対するリスペクトを示したかった部分もあります。

こうしたアイディアは1作目に取り掛かりはじめた時からあって、1作目の人気が出たので、立ち戻ってきたわけです。今作では、意図的に(前作とは)異なったスタイルの映画を作りたく思っていました。異なったジャンルと言ってもいいかもしれません。1作目はSF・風刺映画、今作はコメディ要素が入ったアクション・アドベンチャーですね。

──本作の原題と同名の、1871年に発刊されたエドワード・ブルワー=リットンの小説「来るべき種族」(The Coming Race)、この本に出てくるヴリル、また、ネオ・ナチスといった概念のどのようなところに惹かれたのですか?
私は何に対しても、ダークサイドに惹かれます。どんなことでも、自分が興味を持った対象についてのオルタナティブ論や相反するものを探ろうとする傾向があります。”もし〜〜だったら…”という話が好きで、一般的には知られていない情報、隠された情報を調べたくなります。こうした理論を必ずしも自分が信じているわけではありませんが、非常に面白いものだと感じますし、特に、実際に信じている人が多数存在しているということを、面白く思います。それからこうした理論は、どんなに狂ったように思えるものでも、全くのデタラメだと言い切れない時があります。地球平面説だって、それを唱えていた人たちの視点からは、そのように思えたわけで……。なにかを提唱して、それを擁護していくのは、興味深いことです。ですので私は、狂ったようなアイディアを想像し、もしそれが現実だったらどうなるだろう考えることが、好きなのです。

──この映画には恐竜も登場しますね。
『インディ・ジョーンズ』など、80年代、90年代のたくさんのアドベンチャー映画を観て私は育ちました。そして『ジュラシック・パーク』が公開され、誰もが驚嘆しました。こんなストーリーを描ける時代になったのだ、映画で描けるものにもう限界など存在しない、とね。恐竜は、その時の圧倒感を思い出させてくれるので、登場させたく思いました。

本作のコンセプトアート

また、私は80年代初期、まだ映画を見始める前の小さな頃から恐竜が大好きで、父親からパレオアートと呼ばれる古典的な恐竜画の本をもらったのがきっかけでした。1930年代か40年代の、大きな本でした。

パレオアートとはこのようなもので…(自身のスマートフォンで画像検索し始める監督)

このアート形式というか表現スタイルが小さい頃から大好きだったので、大人になり、自分が描く物語に恐竜を登場させられるというのは、まさに夢が叶った瞬間でした。

──スティーブ・ジョブズやApple社製品、マーク・ザッカーバーグ、オサマ・ビン・ラディンらが登場しますが、どのような基準でこうした人物などを選んだのでしょうか?他に候補に挙がった人は?
様々な意味で人類の歴史に多大なインパクトを与えた人物たちですね。他に考えていた人物には、フロンを開発した(アメリカの化学者)トマス・ミジリーなどがいましたよ。フロンは地球の大気を壊滅的な状況に陥れているのでね。でも彼らの知名度は比較的低く、映画ではとにかく瞬時に誰かがわかる人物を選びました。

ザッカーバーグやスティーブ・ジョブズがテクノロジー分野で重要だったのは明らかですが、この映画のコアとなるストーリーは宗教です。いかに宗教が人類の誕生を説明するか、それから、宗教の向かう方向。宗教は我々を取り囲む世界を説明するのに太古から常に存在し、理解できないものをはじめ、世界をもっと説明できるものにするために、宗教が使われてきました。そうした意味で、今日の宗教はその重要性を失いつつあります。その一方で、デジタルテクノロジー分野のコアなクリエイターは、宗教的象徴とも言える存在になってきています。100、200、300年後、こうした人物たちは、ただ何かを開発した人物という以上に讃えられ、神話となり、宗教的象徴になっていくだろうと私は信じています。人類史において宗教は常に必要とされる重要なもので、宗教なしでは社会を構築できないし、人々をコントロールし、進化させ、助ける素晴らしいツールです。同時に、その力が濫用されるケースも多くありますがね。

こうしたことのパロディとして、彼らは本作に登場します。もちろん、冗談としてね。

──アメリカの政治、特に大統領へのレファンレンスという意味では、前作の方が明確でしたが、本作でもトランプ氏を意識したようなPR映像もありました。現在のアメリカ政治、その指導者について、どのようにお考えですか?

もはやジョークですよね。アメリカはかつての地位から堕ち、政治全体が冗談のようなものになっています。素晴らしい歴史と未来がある素晴らしい国なので、残念なことだと思います。今では、実際の政治の中身ではなく、政治劇としての見え方に重きが置かれています。現実のように思えないというか。(物事の)白黒が明確化され、漫画のようでもあり、テレビ番組を観ているようです。でもこれは、投票した人たちがそうだから。彼らは素晴らしい政治が行われるのを見たいのではなく、面白いテレビドラマの次シーズンを観たがっているのです。非常に恐ろしいことですよね。私たちはテレビドラマの中には生きておらず、現実世界にいるのですから(爆笑)。トランプは、非常に上手く”書かれた”キャラクターだと思いますよ。問題なのは、彼が現実世界の人物だということで、これはあってはならないことです。彼は自分がどのように見られるか、自分をどう見せるかという視点で物事に向き合い対処しています。言うまでもなく私は、アメリカという国全体に対して嫌うことは一切ありませんが、政治をテレビドラマの新シーズンのように捉えているということには、嫌悪感を覚えます。

──ではそうした中で、映画を含めメディアの役割とは何だと思いますか?
『第三帝国の逆襲』はメディアについては特に触れません。メディアに触れようとすると、また別の膨大な世界に突入することになるので、本作では意図的に触れないようにしました。でもメディア自体についての話をするならば、今日のメディアを読んでいると、オピニオン記事を読んでいる感覚を覚えます。実際に起きた出来事を順に羅列していくニュース記事ですら、オピニオン記事のように書かれている気がしてしまいます。判断は私たち(読者)が行うのだから、ニュースメディアは世界で起きたことを伝えるべきで、あるべき姿からどんどんかけ離れていっています。でもアメリカ、イギリス、ヨーロッパの大手新聞ですら、どれもオピニオン記事やコラム記事のようで、非常にフラストレーションを感じます。こうしたメディアを、トランプのフェイクニュースと同列で語るつもりはなく、それは正しい見方ではないと思いますが、メディアビジネスの方向性として、記事を通じてそれぞれがどのようなイデオロギーを基に書いているのか、辿ることができるようになってきていると思います。

──今の映画界で、とにかくファンが観たがる映画で作っていくという傾向が一部にある中で、ファンとユニークな関係を持つあなたは、こうした傾向、手法についてどのようにお考えですか?
個人的にはしないようにしていますが、そうしたくなる理由はよくわかります。うまくいく間は繰り返し何度も何度も作っていき、そのうちに飽きられたら、やめればいいというね。素晴らしい手法だと思いますよ。でも私はそのやり方に興味が湧きません。異なったもの、予期されていないものに挑戦していくのが私のアプローチです。人々に好まれるかどうかは別として、ユニークでオリジナルなものになります。

アイアン・スカイでも、観客からの反応というのは1作目の時から顕著にありました。予告編を観た観客は、シリアスで暗い、真面目なアクション映画を期待していたようですが、本編が公開されると観客は裏切られたように感じ、「素晴らしいコンセプトがあったのだから、なぜ良いアクション映画を作らなかったんだ」と言いました。全くどうでもいいことですね──”Fuck that”。アクション映画の傑作はもう数多く作られているので、私はそんな映画を繰り返し作りたくありません。2作目でも似たようなことが起こり、「アイアン・スカイなのだから、次もナチスで……」と期待されましたが、私に言わせると、”ナチスの映画は作ったからもういい、他のものを撮りたい”となります。そうすることで、新たな観客もやって来ます。最初にアイアンスカイを作ったとき、誰もこの映画のことを知りませんでした。ネット上で少しだけバズがあったくらいで。2作目『第三帝国の逆襲』公開時には、みんなアイアン・スカイのことを知っていました。人々の中でアイアン・スカイのイメージが確立されていくのは面白いことですが、ここまで本当に長い旅でした。特にハリウッド映画のようなマーケティング予算がない中でね。なので、新たな興味を惹くものを作り続けなければなりません。

──本作が3本目の監督作だったということですが、映画を作るようになったきっかけと、それを続ける魅力を教えてください。
フィルムメイカーになりたかった理由はですね……、昔遊んでいたRPGゲームや、それまでの仕事で、私はなにかしらの方法で常にストーリーを語ることに携わっていました。でも、ストーリーテリングの様々な手法や要素を一気に組み合わせられるという点で、映画作りにたどり着きました。でも偶然だったところもあって、私の初監督作『スターレック 皇帝の侵略』は友人から監督を頼まれたのですが、その理由は、私が大声だったから。映画監督をする上で、大きな声を出せることは重要ですからね。”アクション”とか”カット”と叫ばねばならず、私ほど大きな声を出せる人が他にいなかったようです。

その友人が「『スターレック』を監督したいか?」と尋ねてきたとき、私は「それはどういうこと?」と返事しました。監督とは何をするのかもよく知らず、図書館へ行って本をどっさり借りて、調べました。読みながら、「あ〜〜なるほど。音楽も監督が決めれるの?いいね。俳優のセリフも決めていいの?最高だね!」といった具合に、監督とは実際になにをするのか、徐々に学び始めました。その後は、実際の制作を重ねることで、自分が出来ること、映画という形式で出来ることはなにかを、少しずつ理解することができたし、毎回なにかしらの新しい学びがあります。

──前作『アイアン・スカイ』では政治、今作では宗教をテーマにしているとのことでしたが、次作のトピックはもう決まっているのでしょうか?
はい。もちろん次もこれまでとは違ったものになりますが、今度は環境と、人々の環境に対するアプローチについて語りたいと思っています。これまでの2作でも触れたトピックですが、次はもっと前面で描きたく思います。

アイアン・スカイでは、クレイジーなアイディアになにかしらのトピックをくっつけることが多く、1作目では月面のナチスに政治というトピックを、2作目では、地球空洞説に宗教を組み合わせました。次作では、火星のソビエト連邦に、環境問題をくっつけようと思っています。

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『アイアン・スカイ/第三帝国の逆襲』(原題:Iron Sky : The Coming Race)

2018年、人類は月面ナチスの侵略に勝利するも、自ら引き起こした核戦争で地球が荒廃してしまった。それから30年後、人々はナチスが建設していた月面基地で生き延びていた。しかし、月面基地のエネルギーは限界に達し絶滅の危機に瀕していた。人々が苦しむ姿に機関士のオビは胸を痛めていた。ある日、地球から宇宙船が月に飛来。そこにはロシア人の乗組員のほか、死んだはずの月面ナチス総統ウォルフガング・コーツフライシュが密かに同乗しており、月面基地に忍び込むのだった。何の企みか、ウォルフガングはオビに人類を救う手段を打ち明ける。地球の深部には未開の世界が広がっており、そのエネルギー源を集約する“聖杯”を持ち帰れば人類は救われるというのだ。未曾有の危機に瀕している人類を救うため、オビは仲間たちとともに<ロスト・ワールド>に向けて旅立つ。しかし、そこはナチス・ヒトラーと結託した秘密結社ヴリル協会が君臨する世界だった。ヤツらは人類絶滅を企て、恐竜とともに地底から攻めてくるッ!!

監督/ティモ・ヴオレンソラ
脚本/ダラン・マッソン、ティモ・ヴォレンソラ
音楽/ライバッハ
出演/ララ・ロッシ、ウラジミル・ブラコフ、キット・デイル、トム・グリーン、ユリア・ディーツェ、ウド・キアほか
フィンランド・ドイツ・ベルリン/英語/カラー/デジタル/93分/映倫指定:G

日本公開/7月12日(金)、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開
配給/ツイン
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