Column

2019.07.05 21:00

【単独インタビュー】窪田正孝がカンヌで主演最新作『初恋』を語る!「まぎれもなくラブ・ストーリー」

  • Fan's Voice Staff

隠れた名作ドラマといわれる『ケータイ捜査官7』(08年〜09年)で三池崇史監督により主演に抜擢されてから11年、俳優としての転機をもたらした三池監督の新作『初恋』で主役を演じた窪田正孝が、2019年5月、カンヌ国際映画祭に初参加を果たしました。

窪田が演じたのは、負けるはずのない相手に負けたことがきっかけで、人生の歯車が狂いだした天才プロボクサーの葛城レオ。偶然出会った少女モニカ(小西桜子)とともに、組織の抗争に巻き込まれることになります。

月9ドラマ初主演となる『ラジエーションハウス〜放射線科の診断レポート〜』の撮影の合間を縫って、滞在時間20時間未満という超タイトなスケジュールでカンヌ入りした窪田に独占インタビューを敢行しました。

──初めてカンヌ映画祭に参加された感想は?
カンヌは、ヴェネチア、ベルリンと並ぶ世界的な映画祭で、三池さんが何度も来られて常連になっているというのがこれまでの印象でした。僕としては、現実味のない遠い存在でしたし、映像からは伝わってこないものだったので、この空気感を生で感じたかったので、短い滞在時間ですが、こうして来られたことはとても嬉しいです。

──今朝、カンヌに着いたばかりで数時間しか経っていませんが、カンヌは思った通りの場所でしたか?
ヨーロッパ自体は初めてだったので、先入観はなかったのですが、日本でずっと撮影していたので、まったく違う世界ですね。僕にとっては三池さんが連れてきてくださったわけですが、三池さんが仰っていたように、映画が連れてきてくれたという感覚があります。三池さんには、本当に返しきれない恩がまたひとつ増えました。

左より)三池崇史監督、窪田正孝、小西桜子/カンヌでの『初恋』記者会見にて © Kazuko Wakayama

──『ケータイ捜査官7』以来、約10年ぶりに三池作品に主演したわけですが、三池さんからはどのようなオファーがあったのでしょうか?
僕は、この10年くらいずっと三池さんにラブコールを送っていたんです。でも、なかなか呼んでいただけなくて。ジョジョ(『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』(17年))を三池さんが撮られたときも、“なんで僕、呼ばれないんですかねえ”とマネージャーに言っていたくらいです(笑)。

──では、ついに来た!という感じですね。
そうですね。三池さんのお名前だけで、もう是非やらせて欲しいと思いましたし、10年間の空白を埋めようという気持ちでした。それに、僕自身の中でも、俳優としていろいろな役をいただけるようになってきた中で、ボクサーという役に興味をもっていたんです。そういう時期に三池さんからお話をいただいて、タイミングもとても合いました。

──葛城は、才能のあるにもかかわらず、負けるはずのない相手に負ける。そんな主人公に共感した点はありますか?
彼の開き直り方というか、そういう部分には共感しましたね。病気を宣告されたことによって、吹っ切れる。すべてを投げ売ってでも好きな人を守りたいとか、大切なものを守りたいとか、その吹っ切れるポイントは命がかかっている。僕自身はそこまでの精神状態になったことはないのですが、その感覚はとてもわかる気がしました。

──葛城は、偶然出会った少女モニカのどこに惹かれたんでしょうか?
それを説明するのは難しいですね。ああいう状況で出会っていなかったら、こんなに彼女を好きにはならなかったのかもしれない。彼女が薬という“欲”に飲まれてしまう瞬間があるのですが、それまでの生活から抜け出したいという彼女の思いがダイレクトに伝わって、彼女を守りたいという気持ちが強くなっていったんじゃないかなと思います。

──演じていて苦労した点はありますか?
ボクシングの試合のシーンは大変でしたね。全員がボクシング経験者の方だったのですが、ボクシングってどこか形を決めないところがあって。普通のアクションは、右が来たら、次は左とか形を決めて振り付けをする。ボクシングシーンは決めないでやったので、勝手が違って難しかったですね。あのシーンは1日で撮ったんです。

──なぜボクサー役に興味を持ったのでしょうか?
アクションシーンのために、トレーニングとしてキックボクシングを習ったことがあるんです。それでボクシングを知りました。なので、ブルーバックの前で演技をしてCGで合成するというアクションシーンではなくて、ボクサーという役柄を通して、人間の肉体の限界を見せられたらいいなという思いが湧いてきました。

──ボクサー特有のあのストイックさに惹かれたのですか?
そうですね。ジェイク・ギレンホール主演の『サウスポー』(15年)を観たことがきっかけでした。とにかく面白くて。それまでジムに行ったり、トレーニングをしたりなどはしたことがなかったんです。それで、身体を根本から鍛え直したいなと思って、キックボクシングを始めたら、そこからどんどんハマっていきました。

──出来上がった作品を見て、面白いと思ったシーンはどこですか?
自分が出演していないシーンでいうと、ベッキーさんが演じられたジュリがすごくよかったです。好きな人のために復讐に燃える女を全身で表現されている。ベッキーさんとは、共演シーンがなかったので、撮影現場でお会いすることはなかったのですが、出来上がった作品を見て、アクションの作り方など、すごいなと思いました。

ベッキー演じるジュリ(左)と窪田

──アドリブで気に入っているシーンはありますか?
ホームセンターで戦っているシーンで、1対1でマフィアと闘うとき、全然体格も違うけど、その中で彼はボクサーなので拳で闘う。追い詰められていく中で、最後にボクサー精神をみせる。ボクサーであることを忘れていない彼の姿をみせたいと思いました。自分でもとても気に入っているシーンです。

──三池監督の世界は観客としても好きなジャンルですか?
そうですね、好きな作品はたくさんあります。特に、三池さんの『新・仁義の墓場』(02年)は、とても好きです。

──『初恋』は、三池監督の初のラブ・ストーリーという点でも話題です。三池監督の新境地についてどう思われましたか?
そうですね、“バイオレンスよ、さらば!”ですよね(笑)。でも、三池さんらしい作品だと思います。台本からとてもスピード感がありましたね。あと、これも三池さんらしいのですが、ト書きの説明があまりないんです。例えば“ここで椅子に座る”と書いてあるとすると、描写が見えてきますよね。でも、『初恋』の台本は、“ホームセンターで戦っている”としか書いていない。なので、自分で想像していかなければいけないのですが、それがワクワクするんです。その行間から、感情を読み取っていったりするのが面白くて。三池さんの撮影は、行ってみなければわからない、やってみなければわからない、という部分があります。答えはひとつじゃない。それがどうなるのか、(監督に)カメラを通して見られているという感覚がありますね。答えはひとつじゃない、という感じです。

──この映画はフィルム・ノワールとかアクション映画とかさまざまなジャンルの多層性も魅力だと思いますが、窪田さんにとって、この映画はどんな映画なのでしょうか。
やはりラブ・ストーリーだと思いますね。愛って、(人を)好きになることから始まるじゃないですか。いろいろな時代、価値観が変わっても、人を好きになることはどの時代にも共通している。どんな昔の本にも、人を思う気持ちや想いが募ることは書かれている。人にはいろいろ欲があると思うのですが、染谷将太くんが演じた加瀬も自分の欲のために動く。葛城の場合は、誰かを好きになって、一緒になりたいという欲。それを相手と共有するときに、その欲のカタチがかわっていく。そういう意味では、この映画は、まぎれもないラブ・ストーリーなんじゃないかなと思います。

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『初恋』(英題:First Love)

監督/三池崇史
主演/窪田正孝
企画プロデュース/紀伊 宗之(東映)
プロデューサー/Jeremy Thomas(Recorded Picture Company)
プロデューサー/坂 美佐子(OLM)
制作/OLM

日本公開/2020年公開
配給/東映
© 2020「初恋」製作委員会