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2019.06.20 17:00

『存在のない子供たち』主人公ゼインが語る特別映像が公開

  • Fan's Voice Staff

「12歳の少年が両親を告訴する」──中東の貧困、移民などの社会問題を背景とした衝撃作『存在のない子供たち』で主人公を演じたゼイン・アル=ラフィーアが語る特別映像が解禁されました。

主人公ゼインを始め、出演者のほとんどが、演じる役柄によく似た境遇にある素人が集められた本作。

本名と役名が同じゼインは、国内情勢の悪化によりレバノンへ逃れたシリア難民です。ベイルートの住宅地にいた子どもの集団の中で、キャスティングディレクターに見出されました。撮影後に国連難民機関の助けを得て、家族と共にノルウェーへ移住。ラバキー監督は「初めて会った時、ヒーローになると思った。彼の目には特別な悲しみがあった」と振り返ります。「学校に通いたかった。撮影スタッフは人間らしく接してくれた」というゼインの言葉が印象的です。

ラバキー監督(左)とゼイン

ゼインが家を飛び出した際に一緒に暮らし始める、エチオピア人の幼い赤ちゃんヨナス役のボルワティエフ・トレジャー・バンコレは、アフリカ系不法移民であるため住居を転々としており、本作の撮影中にも両親が逮捕されてしまうという事件が起きました。撮影スタッフの尽力により釈放されるも、国外退去させられ、母親とトレジャーはケニア、父親はナイジェリアにおり、今も一家離れ離れになっています。

劇中で自身も苦しい生活の中でありながらゼインを保護したラヒル役のヨルダノス・シフェラウは、自分の歳も分からず、幼少期は難民キャンプで過ごしていました。映画の物語と同様に、撮影中に不法移民として逮捕、拘束されてしまいますが、後にラバキー監督自身が保証人となり、釈放されました。妹役のサハル役のシドラ・イザームもゼインと同じくシリア難民で、道端でチューインガムを売って家計を助けていました。

ラバキー監督は3年間のリサーチ期間を設け、その間に自身で見聞きし体験したことを本作へ盛り込んでいます。こんな重い人生を背負いながら生きている人たちを役者が演じるのは難しい、自分自身の生きた感情を「ありのまま」に出してもらい、彼らが体験する出来事を演出した結果、リアリティを突き詰めながらも、ドキュメンタリーとは異なる唯一無二の“物語の強さ”を、本作で生み出しました。

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『存在のない子供たち』(原題:Capharnaüm)

監督・脚本・出演/ナディーン・ラバキー
出演/ゼイン・アル・ラフィーア、ヨルダノス・シフェラウ、ボルワティフ・トレジャー・バンコレ
2018/レバノン、フランス/カラー/アラビア語/125分/シネマスコープ/5.1ch/PG12/字幕翻訳:高部義之

日本公開/2019年7月20日(土)、シネスイッチ 銀座ほか全国公開
配給/キノフィルムズ/木下グループ
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