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2019.05.12 9:30

『ハウス・ジャック・ビルト』で完全復活を遂げたラース・フォン・トリアーと、追放処分を受けていたカンヌ国際映画祭との関係

  • Fan's Voice Staff

過激発言により一時は追放処分を受けながらも、7年ぶりに昨年の第71回カンヌ国際映画祭でカムバックを果たしたデンマークの鬼才ラース・フォン・トリアー監督。アウト・オブ・コンペティション部門に正式出品された最新作『ハウス・ジャック・ビルト』で現地の話題をさらい、完全復活を遂げました。

世界最高峰の映画祭として毎年高い注目を集め、本年度の開幕が5月14日(金)に迫るカンヌ国際映画祭。昨年のカンヌといえば、日本では是枝裕和監督の『万引き家族』一色でしたが、その裏で何が起きていたのか…?現地の様子と、これまでのトリアー監督とカンヌの関係を振り返ります。

ラース・フォン・トリアー監督 © Christian Geisnæs

『ハウス・ジャック・ビルト』の監督・脚本を務めたラース・フォン・トリアーは、もともとカンヌ国際映画祭と相性が良く、長編デビュー作となった『エレメント・オブ・クライム』(84年)はコンペティション部門に出品、『奇跡の海』(96年)で審査員特別グランプリを受賞、そして『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(00年)では、最高賞のパルムドールを受賞するなど、デビュー当初からカンヌで高い評価を獲得してきました。カンヌはトリアーの才能を発掘し、世界へ知らしめた映画祭といっても過言ではありません。

『ダンサー・イン・ザ・ダーク』でパルムドールを受賞したラース・フォン・トリアー(右)と、女優賞を受賞したビョーク(2000年) © Tony Barson Archive / Getty Images

そんなトリアーは、コンペティション部門に選出された『メランコリア』(11年)の公式会見で、記者から挑発されて「自分は少しヒトラーにシンパシーを感じる。俺をナチと呼んでもいいよ」と過激なジョークを飛ばしたことから、カンヌから追放処分に。

『メランコリア』のフォトコールにて(2011年) © FIF/Louis Fauquembergue

その後、2014年の第64回ベルリン国際映画祭での『ニンフォマニアック Vol.1』(13年)プレミア上映では、カンヌ国際映画祭のロゴマークに「ペルソナ・ノン・グラータ(招かれざる者) オフィシャル・セレクション」と書かれたTシャツを着用して登場し、自身の作風同様に世間を煽るような態度を見せつけました(※オフィシャル・セレクション=正式上映作品)。

© Gerhard Kassner / Berlinale

問題発言から7年が経ち、トリアー監督は昨年の第71回カンヌ国際映画祭でカムバック!『ハウス・ジャック・ビルト』がオフィシャル・セレクションに選出され、同作の上映と現地でのトリアーのパフォーマンスは、彼の完全復活をインパクトをもって世界に印象付けました。

『ハウス・ジャック・ビルト』より

マット・ディロン演じる一見普通の建築家ジャックが、アートを創作するかのように殺人に没頭していく様子を過激かつ衝撃的に描く本作。鬼才監督の7年ぶりの帰還にただならぬ空気が漂っていたカンヌの会場ですが、上映が始まると途中退出者が続出!それにも関わらず、上映後は盛大なスタンディング・オベーションという、賛否両論の反響が沸き起こりました。これには、作品を目の当たりにした観客はもちろん、カンヌに注目していた映画ファンや業界人も騒然!瞬く間に世界中の映画界隈の話題をさらう結果となりました。

カンヌのレッドカーペットに登場したトリアー監督と『ハウス・ジャック・ビルト』キャスト(2018年)© Kazuko Wakayama

昨年のカンヌ国際映画祭といえば、今村昌平監督の『うなぎ』(97年)以来、21年ぶりに、是枝裕和監督が『万引き家族』(18年)でパルムドールを受賞し、日本中が歓喜に沸きましたが、現地カンヌでその熱に負けないほどの話題を呼んだのが、トリアー監督が自信たっぷりに引っ提げてきた『ハウス・ジャック・ビルト』だったのです。

映画の評価について、いまも意見が真っ二つに割れている本作ですが、トリアー監督は物議を醸す過激なシーンについて「僕は必要だと思っている。刺されている者の目だけが見えている方が苦痛が増すという考えはデタラメだ。僕はあらゆる角や隙間を掘り下げた様々な映画を提供するのが大事だと思っているんだけど、最近の映画はあまりその傾向がないように感じられる。僕はまだ発見されていない映画を作っているんだ」と自身の見解を明かしています。

『ハウス・ジャック・ビルト』より

鬼才トリアーが、約7年の時を経て、またしてもカンヌを震撼させた”破格の問題作”『ハウス・ジャック・ビルト』は、日本では無修正完全ノーカット版(R18+指定)で上映が実現!6月14日(金)より全国公開されます。

さらに本作の公開を記念して、5月24日(金)に東京・下北沢で、ラース・フォン・トリアー監督を語り尽くすトークイベントが開催決定!

『ハウス・ジャック・ビルト』ファンミーティング
日程:2019年5月24日(金)
時間:20:00〜22:00(19:30開場)
場所:本屋B&B(世田谷区北沢2-5-2 ビッグベン B1F)
入場料:前売り1,500円+1ドリンク/当日店頭2,000円+1ドリンク
出演:滝本誠(美術・映画・ミステリ評論家)、柳下毅一郎(映画評論家・特殊翻訳家)、町山広美(放送作家・コラムニスト)、品川亮(STUDIO VOICE元編集長・文筆/編集業)
イベントHP
※ラース・フォン・トリアー監督本人は出席しません。

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『ハウス・ジャック・ビルト』(原題:The House That Jack Built)

監督・脚本/ラース・フォン・トリアー
出演/マット・ディロン、ブルーノ・ガンツ、ユマ・サーマン、シオバン・ファロン、ソフィー・グローベール、ライリー・キーオ、ジェレミー・デイビス
全米公開/2018年11月28日
映倫/R18+指定

日本公開/2019年6 月14日(金)新宿バルト9、ヒューマントラストシネマ有楽町 ほか全国公開!
配給/クロックワークス、アルバトロス・フィルム
公式サイト
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