Column

2019.04.14 15:00

【独占インタビュー】ハリウッドが今最も期待する新進俳優チャーリー・プラマーが主演作『荒野にて』を語る

  • Hikaru Tadano

名匠リドリー・スコットの『ゲティ家の身代金』(17年)で、誘拐被害者となる富豪の孫を演じ注目されたチャーリー・プラマーの待望の主演作にして、第74回ベネチア国際映画祭でマルチェロ・マストロヤンニ賞(新人俳優賞)を受賞した『荒野にて』が、4月12日(金)に日本公開されました。

 

 

『さざなみ』(15年)のアンドリュー・ヘイ監督の最新作として注目を浴びる本作は、オレゴン州を拠点とする作家ウィリー・ヴローティンの小説「Lean On Pete」の映画化。母に捨てられ、父に先立たれた15歳の少年が、疎遠になっている叔母を頼って、唯一の友である老競走馬“リーン・オン・ピート”とともに、ポートランドからワイオミングまで旅をするというロード・ムービーです。

 

何百人もの俳優の中から、主演のチャーリー役を射止めた”ゴールデン・ボーイ”に単独インタビューしました(2017年9月、ベネチア国際映画祭にて)。

 

 

──『荒野にて』は、ひとりの孤独な少年が主人公のとても心を揺さぶるストーリーですが、このチャーリーという役はどのように得たのですか?

オーディションを受けました。まずは、オーディション用の映像を送ったということなのですけど。脚本を読んで、この物語とチャーリーというキャラクターに夢中になりました。その後、アンドリュー・ヘイ監督に手紙を書いて、僕がどれだけこの役に共鳴しているか、そしてこのプロジェクトに情熱を持っているかを力説しました。物語がどう展開していくのか、主人公がどういう旅路を辿っていくのか、とても重要で興味深いストーリーですからね。

 

──最初にヘイ監督とはどのようにして会ったのですか?

最初はスカイプでしたね。彼はロンドンに住んでいたし、僕はニューヨークに住んでいるので。ストーリーやキャラクターについて、1時間半くらい話しました。そのときも、僕はいかにこの映画に情熱を持っているかを話しました。

 

チャーリー・プラマー(左)とアンドリュー・ヘイ監督

 

──この物語はまさにアメリカのストーリーで、ヘイ監督はイギリスの監督ですが、彼とはアメリカやアメリカ文化について話しましたか。

特に話した記憶はないですね。でも、彼は、アメリカ的な要素を的確にカメラで捉え、とても美しく描いていると思います。驚くほどにね。僕らは、主人公のチャーリーが旅したように、順を追って撮影したんですけど、それは本当にこの映画にとって大事なことだと思いますね。アンドリューは、この物語をどのように語れば良いかを的確に把握していましたし、その技術もありました。撮影しながらそれがよくわかったので、彼がアメリカ人でないことを心配したことなどは一度もありませんでしたよ。

 

──本作では、クロエ・セヴィニーやスティーヴ・ブシェミといった個性的な名優たちと共演していますね。彼らとの共演はどのような体験でしたか。

彼らとの仕事は本当に楽しかったですよ。スティーヴは、12歳のときに一緒に仕事をしたことがあり、よくしてもらいました。いわば僕のヒーローのひとりなのです。俳優としても、印象的ですよね。僕は、コーエン兄弟の映画やジム・ジャームッシュの映画で育ったのですが、彼はそういった監督の作品の常連でしたし。クロエも、ハーモニー・コリン監督の『ガンモ』をはじめ、僕がインスパイアされた多くの作品に出演しています。そういった尊敬している俳優の方々に、いろいろ質問したりして、話し合いながら撮影するのは、とても学ぶことが多くて素晴らしい経験になりました。

 

 

──この映画ではあなたは出ずっぱりなわけですが、このチャーリーを演じる上で最も重要だったことはなんでしょうか?

役を理解し、コネクトすることは最も重要なことでしたね。チャーリーは、軽いタイプの人間じゃありませんから。それから、スタミナを維持することも大切でした。この役は感情的にも肉体的にも、とても緊張感を強いられるので。とてもタフなことでしたけれど、アンドリューを筆頭に、クルーやキャストがしっかり支えてくれたので、なんとか成し遂げられました。こういう共同作業こそ、映画の醍醐味だと思います。

 

──あなたは若くして俳優として成功を手にしたわけで、チャーリーとは生い立ちや生活環境も大きく違うとも言えるかもしれませんが、どのようにチャーリーに共感できたのでしょうか?

共通点はあるんですよ。僕は、両親と一緒に子供の頃、いろいろな州に引っ越して、9、10の学校を転々しました。それは、チャーリーの孤独を理解する上で、とても助けになったと思います。確かに、近年はいい作品にも出られるようになれたし、家族と一緒に過ごすこともできるようになりました。家族は、僕のことを非常に支えてくれています。弟やガールフレンドなど、愛する人たちに囲まれて、本当にラッキーだと思います。情熱を注げる仕事をもらえて、家に帰れば愛する人たちに囲まれて、ほっとできるのですからね。守られているってことで、安心できるでしょう?

 

──乗馬の経験はあったのですか?

それですよ!馬にはいままで乗ったことがなかったんです。今回初めて訓練しました。最初はちょっと怖かったのですが、慣れてきたらどんどん楽しくなっていきました。撮影3週間前から訓練を始めたのですが、乗馬って結構難しいんです。馬はとても繊細な生き物ですからね。とても優しい動物だけど、反面、怖がりだし、馬は本当に特別な動物だと思います。僕の場合は、幸運なことに、良いトレーナーがついてくれて指導してくれたので、早く慣れることができたのだと思います。最後には馬の目を読むこともできるようになりました。馬の目は本当に綺麗で、それにとっても温和です。

 

 

──この映画は、とても美しい街、オレゴン州ポートランドで始まりますね。

撮影で初めてポートランドに行ったんです。すごい素晴らしい街ですよね。これからは休日とかにもいってもっとポートランドで過ごしたいと思います。人々もとても優しくて、素敵な人たちばかりでした。自然も魅力のひとつですね。ビーチや砂漠、山もあり、豊かな自然に恵まれた土地なんですよ。

 

この映画では、ダウンタウンや郊外とかいろいろなところでロケをしました。ポートランドだけでなく、オレゴンのいたるところで撮影しましたね。主人公は、アメリカを横断したりもするので、本当にいろいろな土地でロケをしましたよ。とても面白い経験でした。映画のいいところは、こうしていろいろな環境で撮影できることですからね。ポートランドは、いつかは住んでみたいなとすら思うほど、個人的にもとても親近感を感じました。

 

──アンドリュー・ヘイ監督もあなたの感受性や繊細さを絶賛していましたが、あなたはポートランド在住のガス・ヴァン・サントが好むタイプの俳優のようにも見えますね!彼とは会ったことがありますか?

ありがとうございます!すごい褒め言葉ですよ。彼とは会ったことはまだありませんが、いつか仕事をしてみたいです。彼の作品はどれも好きです。『エレファント』はお気に入りの映画だし、『ミルク』にも感動しました。『マイ・プライベート・アイダホ』は、俳優としての僕に大きな影響を与えた作品です。本当に美しい映画。彼は、ポートランドを舞台にたくさんの作品を撮っていますが、その一作で、僕が好きな俳優のひとり、リヴァー・フェニックスが出演しているんです。だから、本当に今回の撮影はワクワクしました。最初に脚本を読んだとき、ポートランドが舞台と知って、なんて最高なんだって感激したくらいです。それから、ヴァン・サント監督は、文章を書いたり、音楽もやっていて、ひとりのアーティストとしても感銘を受けています。

 

──他に影響を受けた、好きな監督はいますか?

ガス・ヴァン・サントはもちろんですが、それからポール・トーマス・アンダーソンや、スパイク・ジョーンズ。新しい映画を観る度に、どんどん増えていっています。物語に共感したり、作り方に感銘を受けたり、いろいろな理由からです。『ゲティ家の身代金』で仕事をした、リドリー・スコットも素晴らしい監督でしたよ。

 

 

──あなたは俳優という職業を、なぜ選んだのですか?

子供の頃は、身綺麗にして、いろいろな他人になりきっている俳優の感じが、カッコいいと思うと同時に面白く感じられて、すごく惹かれました。でも、成長した今は、そういう見かけの部分より、役にどんな風にコネクトできるのかという部分が、とても意味深く感じます。自分とはまったく違う人物なのに、共感できる。それが僕にとって本当に面白いことなんです。

 

それに、プロジェクトの一部分として、きちんと機能しているという実感が持てるのも喜びですね。それがこの仕事をずっと続けていこうとしている理由です。具体的な作品選びで言うと、そのプロジェクトにどれだけ自分が情熱を注げるか、ということですね。出演したことを誇りに思えるような作品に出ることが、重要だと思っています。

 

──作品はどのように選ぶのですか?

僕の場合は、まだオーディションで役を得ているのですが、まず、同じビジョンを持っている監督だということが、大事ですね。次は、脚本。そして、演じてみたいと思うような、興味深いキャラクターや胸を打つストーリーであること。共演するキャストについても、もちろん気にしてますよ。

 

──俳優活動以外に、なにかやりたいことはありますか?

音楽も好きだし、スポーツも好きだし、まだまだやりたいことはたくさんあります。

 

──音楽活動もしているんですか?

ギターを弾くし、歌も少し。といっても今現在は、バンドをやっているというわけではありませんが。実は、僕のガールフレンドの方が音楽活動は熱心なんです。彼女は、とっても才能のあるミュージシャンですよ。

 

 

──将来の夢は何ですか?

自分が情熱を傾けられる作品に参加し、その作品が多くの人に愛され、尊敬されるようになること。映画は、監督やキャスト陣、クルーもとても大事なので、尊敬している人たちと働けたらいいなと思います。今は、何よりも、この愛すべき『荒野にて』を世界中のたくさんの人たちに観てもらいたいと思いますけど。プライベートでは、いつかは幸せな家庭を持ちたいと思っていますが、今は、いろいろ世界を回って、多くの経験を積みたいですね。

 

──ところで、『スパイダーマン』新シリーズのピーター・パーカー役候補にも最後まで名前が残っていましたが、スーパーヒーロー映画に興味はありますか?

もちろんですよ!正直言うと、僕が一番好きなのは『バットマン』シリーズです。DCファンと言っても良いくらいです。『ダークナイト』は最高傑作ですよ!スーパーヒーロー作品は、ストーリーを語る上でとても良いプラットフォームだと思うんです。なので、機会があればぜひ参加してみたいですね。

 

 

Charlie Plummer(チャーリー・プラマー)

1999年5月24日、ニューヨーク生まれ。映画プロデューサーの父と女優の母という芸能一家に生まれる。子供の頃からモデルやTVドラマなどで活躍し、『Not Fade Away』(12年)で本格的長編映画デビュー。TVシリーズ『ボードウォーク・エンパイア 欲望の街』のなどでキャリアを積み、2015年、トライベッカ映画祭で観客賞を受賞したフェリックス・トンプソン監督の映画『King Jack』の主演で注目される。2017年、第74回ヴェネチア国際映画際のコンペティション部門に選出された本作で、マルチェロ・マストロヤンニ賞(新人俳優賞)を受賞した。

 

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『荒野にて』(原題:Lean on Pete)

ある日突然、世界の底へ滑り落ちた少年の旅

小さい頃に母が家出し、愛情深いがその日暮らしの父と二人暮らしのチャーリー。家計を助けるために競走馬リーン・オン・ピートの世話をする仕事を始めるが、ある日父が愛人の夫に殺されてしまう。15歳で天涯孤独になってしまったチャーリーの元に、追い打ちをかけるように届いたのは、試合に勝てなくなったピートの殺処分の決定通知だった。チャーリーは一人馬を連れ、唯一の親戚である叔母を探す旅に出るが、彼らの前に広がるのは、あまりに広い荒野だった──。

 

監督/アンドリュー・ヘイ
出演/チャーリー・プラマー 、スティーヴ・ブシェミ、クロエ・セヴィニー、トラヴィス・フィメル
2017年/イギリス/カラー/ビスタ/5.1chデジタル/2時間2分/字幕翻訳:栗原とみ子

 

日本公開/2019年4月12日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷他 全国順次ロードショー
配給/ギャガ
© The Bureau Film Company Limited, Channel Four Television Corporation and The British Film Institute 2017