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2019.03.22 17:00

【来日インタビュー】フェリシティ・ジョーンズ『ビリーブ 未来への大逆転』伝説の女性弁護士の魅力を語る

  • Fan's Voice Staff

『博士と彼女のセオリー』(14年)で理論物理学者スティーヴン・ホーキング博士の最初の妻を演じ、アカデミー賞主演女優賞にノミネートされるなど高い評価を得て、トップ女優となったフェリシティ・ジョーンズ。『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(16年)では、トラウマを抱える女性戦士ジン・アーソを演じ、強烈なインパクトを与えました。

 

そんな英国の実力派の最新作が『ビリーブ 未来への大逆転』。86歳にして現役のアメリカ合衆国最高判事、ルース・ベイダー・ギンズバーグの若かりし頃を描いた伝記映画です。

 

 

アメリカでは“RBG”の愛称で親しまれ、正義と平等のために闘うスーパーヒーローのような存在として敬愛され、Tシャツやマグカップなど、彼女がデザインされたグッズが街中で売られるなど、アイコン化されているギンズバーグ。

 

本作で描かれるのは、そんな彼女の若かりし弁護士時代の物語。時は1970年代、アメリカ。女性は自らの職を選べず、自分の名前でクレジットカードさえ作れなかった時代に、女性弁護士ルース・ギンズバーグ、男女平等を求めた世紀の裁判を起こします。

 

ルースの若かりし弁護士時代を演じるのは、主婦であり、母でもあるルースの普通の女性としての一面と、決して諦めない不屈の精神を持った女性弁護士という役柄を熱演。

 

公開に先立ち、2018年11月に来日したフェリシティ・ジョーンズが、インタビューに応じました。

 

 

──あなたがルース役に決まる前、彼女の経歴や功績はご存知でしたか?

脚本を読むまで、彼女のことはほとんど知りませんでした。ですが私にこの脚本を持ってきたエージェントの様子から、興奮が感じられ、素晴らしい脚本であることは察していました。当時この映画は破綻の危機にあり、ルース役の俳優をなんとかしないと、出資者が手を引いてしまうという状況でした。私は急いで脚本を読まなくてはならず、週末に一気に読んだのですが、政治がテーマでありながらも、同時にユーモアがあったのが非常に気に入りました。

 

──ルース本人に実際にお会いした際、彼女の人間らしさが印象的だったそうですね。他に印象に残っている点、予期しなかった点などはありますか?

初めて彼女に会った時、アーミー(・ハマー)を見る目から、ルースが夫・マーティに対して抱いていた深い愛情が伝わってきました。二人の関係がいかに特別で深いものであったかを本当の意味で理解するのに、私にとってこれは鍵となりました。それから、彼女がとあるドキュメンタリー用に質疑応答に応える様子を横で見ていたのですが、彼女は非常に簡単そうにやってのけていました。私はルースに非常に共感を抱くのですが、その理由の一つに、ルースにはとてもシャイなところがあるからです。ですがその質疑応答でルースは、落ち着いた様子で雄弁にはっきりと回答していて、これは私が予期していなかったことです。彼女は今では人気者になっていますが、それを楽しんでいる様子でした。

 

──アメリカでルースは、ポップアイコン化していますね。男女平等に向けて長年戦ってきたルースは、どのようにしてこうした人気を得るようになったのでしょうか。

彼女がポップカルチャーに完全に溶け込んでいるのは、興味深いことだと思います。本当に長い間続いてきた彼女の一貫性、それから特徴的な服装がその理由なのではないでしょうか。彼女は若い時からジャクリーン・(ケネディ・)オナシスのようなスタイル感覚を持っていました。アナ・ウィンターのような一貫性もあり、長年に渡り髪型も変えることはありませんでした。それに彼女は、襟を飾るのも彼女は大好きです。一方で、道徳的に象徴となる人物が求められていて、ルースは正悪を強く感じさせる、信用できる存在なのだと思います。こうした要素が同時に合わさり、彼女が”ヒロイン”として社会的に支持を集めたのだと思います。

 

──映画の中のファッションでは、50年代の見た目は美しくも着心地が悪そうな衣装から、70年代のより自由なスタイルへと変わっていくわけですが、実際にこうした服を着てみていかがでしたが?

本当に完全な変化でした。50年代の服は本当に着心地が悪くて、その頃の撮影が終わるのが待ちきれませんでした。コルセットを着なければならなかったり、ナイロン製のタイツはのびてしまったりで。70年代に入り、一気にパンツを履けるようになったりと、物理的に解放されましたし、そうした服装ができていることで、多少なりとも自分の力が増した感じがしました。60年代の社会変革というのは非常に大規模で、50年代と比べ70年代の社会は大きく変わりましたし、その影響は服装でもよく実感出来ました。

 

 

50年代は非常に保守的で古風な、制約の多い時期でしたので、大変革が起きてもおかしくなく、実際に60年代にそれを迎えたわけですが、映画でも描かれた通り、ルースは常に、次から次へと壁や障害に直面していました。しかも性別や宗教といった、彼女ではどうしようもできないことが原因で。それから、当時が非常に男性優位であったことは、古典的なジェンダーステレオタイプに当てはまらないマーティにとっても足かせとなっていました。ですのでこの映画は、女性と男性がどのようにして共に人間として尊重されるかを描いたものなのです。

 

──アーミー・ハマーとの共演はいかがでしたか?また、『博士と彼女のセオリー』ではエディ・レッドメインと共演されましたが、ちょうど今週エディが来日していたんですよ。

はい、聞いています。『ファンタスティック・ビースト』のプロモーションですよね。アーミーとエディは、完全に異なるといっても良いほど違ったタイプの俳優で、二人のアプローチは非常に異なります。二人とも、彼らなりの方法でとてもフェミニストですがね(笑)。共通点はほとんどありませんが、良い演技をすることを大事にしているのと、出演する映画選びのセンスが非常に良いことぐらいでしょうか。この辺なら二人は気が合うと思います。

 

 

アーミーは非常に聡明で、コラボレーションが好きなところが素晴らしいと思います。撮影現場の外で、よく一緒に夕食に行ったりもしました。モントリオールの食べ物はとても美味しかったですよ。友人として一緒に時間を過ごしましたし、その仲の良さは、映画からも感じてもらえると思います。撮影では長い期間にわたり家から離れた場所にいたわけで、そうしたお互いのサポートは本当に大事でした。

 

──マーティとルースが上手くいっていた秘訣とは何だったと思いますか?

二人の結婚の鍵といえば、まずは「愛」だと思いますが(笑)、二人は互いのことを本当に愛していました。それから二人とも、自身の力で成果を出していたので、相手の成功を脅威と感じることが無かったのだと思います。また二人は、あらゆることを自分一人でこなすことはできないこと、人には得意不得意があることを理解しており、幸運にも二人のスキルは互いに補完し合う関係にありました。例えば、ルースは料理が下手ですが、マーティは非常に得意です。二人の間には、男性優位的な固定観念にとらわれず、自分たちに合ったやり方でやろうというオープンな気構えと決意があったのです。

 

──映画でのあなたは、ルース本人の若かりし日の写真とそっくりですが、どのように準備したのですか?

写真やアーカイブ映像をしっかりと細かく観察し、カメラテストを何度も行いました。それから、いろいろなヘアピース(部分かつら)を試したり、目の色を変えるためにコンタクトレンズを付けたりしました。さらに、歯並びをルースのものに近づけ、口元の形も彼女に合わせるよういろいろと試した結果、撮影期間は一時的に付け歯をしたのですが、これは本当に大きな効果があり、心理的にこのキャタクターに入り込むのにも役立ちました。それからメイク(コントゥアリング)も行い、体型も、ルースの年齢による変化にあわせてなるべく自分の身体も変えるようにしました。できる限り彼女になれるように。

 

 

──あなたは『スター・ウォーズ』シリーズのようなハリウッド大作にも出演していますが、今作のような映画と比べ、それぞれに対するモチベーションやアプローチはどのように異なるのでしょうか?

アプローチは非常に異なります。キャラクターが異なりますのでね。『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』では、体力トレーニングに6ヶ月ほどかけたと思いますし、とにかく撮影期間もずっとスウェットパンツを履いていたような記憶があります。大部分はスタントチームと一緒でしたが、いろいろな様式の武術も学びました。興味深いのは、ジン・アーソというキャラクターは、身体能力では優れていますが、会話力ではそうではなく、言葉でコミュニーケーションをとるのが苦手です。ルースは言葉で非常に明確に表現できる人物で、そうした役を演じられたのは嬉しいことでした。でもどちらのキャラクターにも、それぞれの愛着が強くあります。私は毎回ちょっとこれまでとは違うことをする挑戦が好きなのです。

 

──いまのハリウッドの風潮を踏まえ、今回のルース役を演じることはどのように感じましたか?

私はこうした役に自然と引き寄せられるようで、特に私が意図しないながらも、こうなってしまっている部分があります。また、『ローグ・ワン』に出演したことで、以前と比べ(役選びの)自由と選択肢が一気に広がりましたし、非常に感謝しています。こうした並外れた女性を演じるのは私にとって非常に楽しいことですし、観客が、私の演技を通じてそうした女性からインスピレーションを受けてもらえるのなら、それは素晴らしいことです。

 

 

──あなたのロールモデルはどなたでしょうか?

まずは家族ですね。非常に大切な存在で、強さと勇気、そして心の潤いをもらいます。それから、メリル・ストリープも大好きで、確実に私のロールモデルと言えます。フランシス・マクドーマンドも。二人とも、自分なりのやり方でやり通せていることに尊敬を感じますし、二人からは非常に力強いものを感じます。

 

──今後はどのような映画に出演したいと思っていますか?

いま探しています(笑)。エディとの新作『The Aeronauts(原題)』の撮影がちょうど終わったところですが、本当に濃密な体験でした。アクションアドベンチャー作品なのですが、熱気球に何度も放り込まれた落ちたりして(笑)。今後は…、チャイルドファンタジーをやってみたいと思っていて、どういった要素があるといいのかを探っているところです。楽しいものがいいですがね。まだどんな形になるのかわかりませんが、今考えているのはこういったことです。

 

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『ビリーブ 未来への大逆転』(原題:On the Basis of Sex)

貧しいユダヤ人家庭に生まれたルース・ギンズバーグは、「すべてに疑問を持て」という亡き母の言葉を胸に努力を重ね、名門ハーバード法科大学院に入学する。1956年当時、500人の生徒のうち女性は9人で、女子トイレすらなかった。家事も育児も分担する夫のマーティの協力のもと首席で卒業するが、女だからというだけで雇ってくれる法律事務所はなかった。やむなく大学教授になったルースは、70年代になってさらに男女平等の講義に力を入れる。それでも弁護士の夢を捨てられないルースに、マーティがある訴訟の記録を見せる。ルースはその訴訟が、歴史を変える裁判になることを信じ、自ら弁護を買って出るのだが──。

 

監督/ミミ・レダー
出演/フェリシティ・ジョーンズ、アーミー・ハマー、キャシー・ベイツ
主題歌/KESHA「Here Comes The Change」(ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル)
2018年/アメリカ

 

日本公開/2019年3月22日 TOHOシネマズ 日比谷他 全国ロードショー
配給/ギャガ
公式サイト
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