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2018.11.16 10:00

【単独インタビュー】『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』主演ベニチオ・デル・トロが見た、アメリカの正義とメキシコ国境の現実

  • Fan's Voice Staff

アメリカとメキシコの国境で起こっている麻薬戦争の壮絶な実態をFBI捜査官の目を通して描いたクライム・ムービー『ボーダーライン』。2015年公開され大ヒットしたドゥニ・ヴィルヌーヴ監督による傑作の、待望の続編『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』が11月16日(金)に全国公開されます。

 

 

メキシコの麻薬カルテルの撲滅を目指す米国政府の秘密工作に、信頼関係で結ばれたCIAのマット・グレイヴァー(ジョシュ・ブローリン)の依頼で参戦した謎の暗殺者アレハンドロ・ギリック(ベニチオ・デル・トロ)は、ミッションを遂行中にメキシコ連邦警察から奇襲を受ける。やがて、メキシコとの関係悪化を恐れた米国政府はマットにアレハンドロの暗殺を命じる……。

 

監督に、TVドラマ版『ゴモラ』や『暗黒街』などのクライム・サスペンスで高い評価を受けたイタリア出身のステファノ・ソマッリが抜擢、脚本は前作でアカデミー賞脚本賞にノミネートされたテイラー・シェリダンが手掛けています。

 

 

前作で謎めいた暗殺者アレハンドロの名演で注目され、今回は主役に躍り出たベニチオ・デル・トロに、緊急インタビューを敢行しました。

 

──久々にデル・トロ節が炸裂した作品になりましたね!この続編を引き受けたいちばんの理由はなんですか?

「まずは、テイラー・シェリダンの脚本が素晴らしいと思ったんだ。僕が演じるアレハンドロもジョシュ(・ブローリン)が演じるマットも、前作とは違う側面が模索される。そのアングルが面白いと思いました。アレハンドロというキャラクターを再び演じるチャンスを与えられて、探求できたことは楽しかった。俳優としては、ひとりのキャラクターを掘り下げるのはとても魅力的です。もちろん、ジョシュと再びタグを組むのもモチベーションのひとつでしたね」

 

──マットとアレハンドロの関係は、たいへん興味深いですね。信頼関係で結ばれる相棒ですが、今回は、その関係さえもが危機に直面します。

「ふたりはプロ同士で、お互いリスペクトしあっている戦友のような関係なんです。前作に続き、ふたりは新たなる麻薬カルテルの撲滅作戦に乗り出します。カルテル同士を戦わせるために、カルテルのボスの娘を誘拐する、というミッション。ですが、前作のミッションが大成功だとすれば、今作では、失敗ともいえる展開が待っています。そのおかげで、マットもアレハンドロも自分たちの良心というものに向き合わなければならなくなる。悪化していく状況で、そのストレスにどう対応し、自分の良心とどう向き合い、どう行動するのか。そこが、脚本家のシェリダンが描いた興味深いポイントなんです」

 

 

──あなたが演じているアレハンドロは、暗殺者であり犯罪者なわけですが、正義もある。彼の生き様に共感していますか?

「前作では、アレハンドロのキャラクターは、ある意味一面的に見えていたかもしれません。本作では他の側面を掘り下げることができたんじゃないかと思います。実は、ただ冷酷な人間なのではなく、道徳心というか、自分なりの掟がある人間だということがわかる。いわゆる殻がある人間なのではないかと思います。僕からすると、麻薬戦争に巻き込まれてしまったひとりの男、でもあるんです。原題にあるソルダードというのは、スペイン語で兵士という意味ですが、彼は、麻薬戦争にまつわる兵士のひとりにすぎない。彼は心のない人間ではないんですよ。映画をつくっていて面白いのは、架空の話を語りながら、さまざまな人間の本質に迫ることができることです。西部劇でも、ギャングものでもね。今回の作品も、麻薬戦争という世界を通して、人間を描いているんです」

 

 

──米国とメキシコの国境(ボーダー)の状況は、さらに緊張感のあるものになっていますね。

「ボーダーのシチュエーションは、現状、どちらかだけに問題があるのではなく、北側・南側両国の問題であると思います。正直、いまのところ解決の見通しはないというのが僕の意見です。ずっと以前から続いている問題で、僕ももちろん解決して欲しいと思っていますが、現状は厳しい。とくに麻薬問題に関しては、それを求める人がいて、商売になる人がいる限り、なかなか根絶しにくいでしょう。ドラッグも種類があって、マリファナなんかはアメリカでは合法化しようとする州もあったりするし、そんなに害があるドラッグではないなか、逆に人命を脅かす危険なドラッグもある。さまざまなドラッグがあることも問題を複雑化しているんじゃないかと思います。

 

また、国境に関していえば、もっとリスペクトされるべきものだと思います。確かに、命をかけ、人生をかけて、国境を越えようとする人もなかにはいる。恐ろしい、辛い状況から逃げてきている人も多い。映画のなかでもふれているけれど、例えば、大人と子供をわけて隔離するのは、とても非人間的な行為です。だから、そういった国境を越える人々も、人道的に扱われるべきですね。彼らを、重犯罪者扱いする人もいるけれど、凶悪犯やレイプ犯なわけではありません。一方で、違法だということを知りながら、国境を越えるという人たちもまた、それにはなんらかの代償があるのだということを自覚することも大事です。立場が違えば、見方も違うので、この問題は難しい。ただ国境は、法律というものがしっかりある場所でもあります。とくに他国に入国しようとするのであれば、その法律は守らなければならないと思います。

 

(トランプ大統領が建設を宣言した)メキシコとアメリカの壁に関しては、正直、国境地帯に住んでいないから、実感としては捉えられていないけれど、アメリカ側が壁を建てたいなら、建てればいいとは思います。ただ、メキシコ側にその建設費を要求するのはお門違いですよね。僕の隣人が20フィートの煙突を建てたいといえば、それはあなたの土地だからどうぞっていうけれど、煙突を建てるお金を僕が払う必要はないでしょう」

 

 

──最後に、俳優からみてドゥニ・ヴィルヌーヴ監督と今回のソリッマ監督の違いはどこにあったのでしょうか?

「一番は、暴力描写ですね!ドゥニは控えめだけれど、ステファノは、まるでそこにいるかのように真に迫る感じでカメラを回しまくるんです。それはすごかたですよ!」

 

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『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』(原題:Sicario: Day of the Soldado)

アメリカ国内で市民15人の命が奪われる自爆テロが発生。犯人らがメキシコ経由で不法入国したとにらんだ政府は、国境地帯で密入国ビジネスを仕切る麻薬カルテルを混乱に陥れるという任務を、CIA工作員マット・グレイヴァー(ジョシュ・ブローリン)に命じる。それを受けてマットは、カルテルに家族を殺された過去を持つ旧知の暗殺者アレハンドロ(ベニチオ・デル・トロ)に協力を要請。麻薬王の娘イサベルを誘拐し、カルテル同士の戦争を誘発しようと企てる。しかし、その極秘作戦は敵の奇襲や米政府の無慈悲な方針変更によって想定外の事態を招き、メキシコの地で孤立を余儀なくされたアレハンドロは、兵士としての任務、復讐、そして人質として保護する少女の命の狭間で、過酷なジレンマに直面することになる……。

 

監督/ステファノ・ソッリマ
脚本/テイラー・シェリダン
出演/ベニチオ・デル・トロ、ジョシュ・ブローリン、イザベラ・モナー、ジェフリー・ドノヴァン、マヌエル・ガルシア=ルルフォ、キャサリン・キーナー
2018年/アメリカ/122分/字幕翻訳:松浦美奈/PG12

 

日本公開/2018年11月16日(金)全国ロードショー
配給/KADOKAWA
提供/ハピネット、KADOKAWA
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