Column

2018.11.12 21:00

【単独インタビュー】大ヒット映画『バッド・ジーニアス』のバズ監督に聞く、天才的カンニングのアイディアとは

  • JOSHUA

中国で実際に起きた天才高校生による集団カンニング事件をモチーフにタイで映画化されたクライム青春映画『バッド・ジーニアス』。“高校生版『オーシャンズ11』”と評判を呼び、世界16の国と地域で大ヒットを記録、日本上陸後もその熱はとどまるところを知らず、単館上映で始まったものの、延べ上映館数が90館を超えるというヒット街道を驀進中です。

 

 

予想を上回るヒットを記念して、天才高校生リン役を演じたチュティモン・ジョンジャルーンスックジンさんとナタウット・プーンピリヤ監督が緊急来日しました。

 

中国や香港など、アジア8つの国と地域でタイ映画史上No. 1記録を達成した監督で、脚本も手がけた“バズ”ことナタウット・プーンピリヤにインタビュー。

 

バンコク生まれのバズは、大学を卒業後、CMディレクターとして活動後、奨学金を得てニューヨークに留学し、グラフィック・デザインを学んで帰国。2012年に長編デビュー作となる『Countdown』(日本未公開)で注目され、本作が長編大2作目となる新進監督です。

 

 

──『バッドジーニアス』大ヒットおめでとうございます!

「ありがとうございます」

 

──『バッド・ジーニアス』の元ネタは中国で実際に起きたカンニング事件だそうですが、なぜタイで今作を撮ろうと思ったのでしょうか。

「プロデューサーからその中国でのニュースを聞いたことが、そもそもきっかけでした。”カンニング”というのは年齢に関係のないテーマで、タイで映画化しても、誰でも楽しめる良いモチーフなのではないかと思ったんです。おそらく、みんな一度は経験があるはずだし(笑)」

 

──確かに普遍的なテーマですね。私はやったことないですが(笑)

「本当に?(笑)ネヴァー?」

 

——はい(笑)カンニングをされたことなら何度もありますけど。

「それなら主人公たちと同じだから、もっとリアルな体験だったわけですね(笑)」

 

──カンニングのトリックとして使われたピアノやバーコードのシーンのアイディアはどこから得たのですか?

「脚本チームとリサーチチームと相談を重ねて、ハイテクすぎないカンニングの方法を模索しました。たとえば、メガネにカメラがついているというのは、いかにもやりすぎです。そうではなく、『バッド・ジーニアス』で描かれたようにややアナログ的な方向にしようと決めました。トリックについては、かなり長い時間をかけたのです」

 

──そういった多くのカンニング方法は無から考え出したものなのですか?それとも実際のカンニング事件を参考にしましたか?

「消しゴムに答えを書いて靴に入れるというトリックは、実際にやったことがある人がいるのですが、あとは自分たちで考えました。鉛筆のバーコードなどのトリックもそうです」

 

──バーコードのトリックは本当に良く出来ていると思いましたよ。ところで、リンたちが受ける試験の問題についてですが、問題がちょっと簡単に思えました(笑)

「あの試験問題は実際に使われているものを使うわけにはいかないので、先生を雇ってこの映画のためだけにオリジナルの試験を作ってもらいました。なので、簡単なのか、難しいのかというのは、学生のときに数学の記憶がない僕にはまったく分かりません(笑)。小道具として使われた40〜50項目の試験問題(STIC)は、この映画のためだけに作られたものなのです」

 

 

——今作は様々な視点から”カンニング”を描いていますが、監督自身は”カンニング”という行為を100%の悪だと思っていますか?

「100%間違っているということは言えないと思いますね。学生たちにとってはどう試験を切り抜けていくかという時の、あくまでひとつの手段なのです。それに映画製作者は、何が間違っていて何が正しいかということを言う立場にはないと思っています」

 

──リンたち主人公は、知識と知恵でお金を稼ごうとするわけですが、”知識”と”お金”どちらが最強の武器だと思いますか?

「それこそ100%決められる話ではないでしょう。その人のおかれた状況によって変わってくる話ですよね」

 

──リンとバンクの関係が恋愛に発展しなかったのが、よかった。それは監督の意図ですか?

「実は、恋愛要素のない青春映画を撮りたい、とプロデューサーに言ったんです。そしたらOKをもらえた。今までコメディ映画にしろ、ホラー映画にしろ、タイでは恋愛が絡んだ映画が多く作られてきました。もちろん人間を描く以上、恋愛が絡んでくるのは自然なことだとは思いますが、しかし僕は違う映画を作りたかったんです。つまり、アクション映画やスパイ映画としてこの物語を描きたいと思いました。それにこの2人の関係は、きっとそこまで発展しないだろうなという気もしてました(笑)」

 

 

──『バッド・ジーニアス』の緊張感、テンポ感をみていると、監督には是非ホラーを作って欲しいなと感じました。

「それは嬉しいですね!おばけの話をするのも好きだし、ホラー映画も好きなんですが、たまたまホラー映画を監督するタイミングがなかったんです。自分でも、自分が監督したホラー映画を観てみたいと思いますよ。もしかしたら近々、作ることがあるかもしれませんね、一回ちょっと書いてみて考えます(笑)」

 

──アクションやスパイ映画っぽく作りたかったということですが、監督は普段はどんな映画を観るのですか?

「普段からいろいろなジャンルの映画を観ていますよ。中でもハリウッド映画はたくさんみますよ。SFはあまり好きではないのであまり観ませんが。今作の製作にあたって参考にしたのは、『マッド・マックス』の最新版(『怒りのデスロード』)。監督が砂漠の中にきちんとした世界を作って、そこに観客が魅せられている。とても感心しました。『オーシャンズ11』シリーズも当然今作に影響を与えています」

 

──『バッド・ジーニアス』の学生たちは数学…英語…と沢山の試験科目を受けなければなりませんでしたが、監督が学生時代好きだった科目は?

「映画ばかり観ていたので、好きな科目はありません(笑)。好きな科目はなかったんですが、落第しない程度には切り抜けてきました。小学校のときは勉強が抜群に出来て、クラスで一番だったりしたのですが、映画を観るようになってから、完全にその情熱が映画の方に向くようになってしまいました(笑)。“こんなに成績が落ちるのなら二度と映画は観せない”と父に言われ、仕方がないから友達に宿題をうつさせてもらって、なんとか落第しないようにしていました」

 

 

──『バッド・ジーニアス』の大ヒットで、監督の人生に変化はありましたか?

「生活自体は変わりませんが、仕事をする上での考え方は大きく変わりました。たとえば今までやったことのない仕事に対する勇気が芽生えてきて、もしかしたら『バッド・ジーニアス』の続編をやるかもしれませんが、とりあえずは今できることをやって経験を積んでいきたいと思います」

 

──ありがとうございました!

 

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『バッド・ジーニアス』(原題:Chalard Games Goeng)

監督/ナタウット・プーンピリヤ
キャスト/チュティモン・ジョンジャルーンスックジン
2017 年/タイ/タイ語/130 分/字幕翻訳:小田代和子、監修:高杉美和

 

日本公開/9月22日(土)
提供/マクザム
配給/ザジフィルムズ、マクザム
後援/タイ王国大使館、タイ国政府観光庁
公式サイト
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