Column

2018.11.09 17:00

【単独インタビュー】大ヒット記念『バッド・ジーニアス』の“リンちゃん”チュティモン・ジャンジャルーンスックジンに緊急取材

  • JOSHUA

中国で実際に起きた天才高校生による集団カンニング事件をモチーフに、タイで映画化されたクライム青春映画『バッド・ジーニアス』。“高校生版『オーシャンズ11』”と評判を呼び、世界16の国と地域で大ヒットを記録、日本上陸後もその熱はとどまるところを知らず、単館上映で始まったものの、延べ上映館数が90館を超えるというヒット街道を驀進中です。

 

 

予想を上回るヒットを記念して、天才高校生リン役を演じたチュティモン・ジョンジャルーンスックジンさんが、ナタウット・プーンピリヤ監督(“バズ”監督)とともに緊急来日。

 

トップモデルとして活躍する一方、オーディションによりこの作品でスクリーンデビューしたチュティモンは、初主演とは思えないパフォーマンスで高く評価され、第16回ニューヨーク・アジアンフィルム・フェスティバルでライジングスター賞、2017年アジアン・フィルム・アワードで最優秀新人賞を受賞するなど、いまアジアで最も注目される女優として、一躍脚光を浴びています。

 

 

──映画は初主演ですが、どういういきさつでリン役に選ばれたのでしょうか?

「モデルをしながらミュージックビデオやCMに出ることが多かったため、CMやテレビ、SNSなどで露出する機会が多くなり、映画やドラマの監督に見られる機会も多くなっていました。実はバズ監督も私のことをインスタグラムで見かけて、私に声をかけてくれたんです」

 

──オーディションの狭き門をくぐり抜けて勝ち取った主役の座だったとは思いますが、演じる上での自分の弱点、欠点をどういう風に分析していますか?

「弱点は、演技が安定しないところですね。ついつい地が出てしまうことがあるんです。たとえば、『バッド・ジーニアス』を演じる上で、100項目くらい気をつけることがあったんです。左ききだから、左で塗り絵をして練習してみたりだとか、物をつかむときも日常的に左手を使ってみたりだとか。あと声の出し方などもそうですね。こうした全ての行動でリンのやり方というものがあったんですけれども、ついつい地が出てしまい、集中力が続かないことがありました」

 

 

──自身の学生経験は演じる上で活かされましたか?

「『バッド・ジーニアス』は高校3年生たちの話です。私にとっては既に通り過ぎた時代。だからちょっと思い出してながら、例えば自分が高校生だったあの時、同じ女子生徒どうしでどんな話をしていたかとか、思いつくこと全てワークショップで監督に話してみたんです。それで監督のOKが出たら演じるし、OKが出なかったら演じないし、というように全てのシーンをまずワークショップで提案してから決めていました」

 

──撮影中楽しかったのはどんなところでしたか?

「いっぱいあります。共演していた俳優たちは、面白いポイントがそれぞれ違います。たとえば、パット役のチャーノンはいつもみんなをからかったりする人なんですけれど、監督がいないときに、カメラに乗ったりしてふざけていました。グレース役のイッサヤーさんは、ネットに流行ったネタで「5バーツと10バーツ」という笑えないネタがあるんですけど、その笑えないネタをずっとネタにするので、あまりに面白くなさすぎてみんな笑ってしまうんです(笑)。バンク役のノンは真面目すぎて、その真面目さをからかわれていましたね(笑)」

 

 

──私が『バッド・ジーニアス』の中で好きなセリフは「私たちは生まれついての負け犬。人より努力しないとダメなの。明日から世界は私たちの思いのまま」。チュティモンさんが好きなセリフ、あるいはシーンはありますか?

「私にとって印象に残る台詞というのは、グレースとリンがお互いの気持ちを言い合うシーンだったんですけれども、実は映画では使われていないんですよね。カットされてしまって(笑)印象に残っているシーンは、シドニーから帰ってきて父親に会うところ。あれはリンにとってとても重要なシーンで、自分に友達として好意をもっていたバンクを、ああいう風に変えてしまったことを考えさせるシーンでもあるからです」

 

──『バッド・ジーニアス』は日本のみならず、アジア全域でも大ヒットしましたがここまでヒットすると予想できていましたか?

「撮影していたときは何も期待していませんでした。ただ、多くの役者や撮影スタッフが一生懸命に作った作品だったので、楽しかったと言ってもらえたときは、成功したんだなと思えますね。映画館で、この映画に集中しすぎて持っていた飲み物やポップコーンを握り潰しちゃったとSNSでつぶやいている人を見かけて、それほど楽しんでくれたんだな、ととても嬉しく思いました。ここまで国際的なヒットになり、いろいろなチャンスが舞い込んできたのは、まさに人生のサプライズプレンゼントでした」

 

 

──私は高校生の頃、数学や物理が好きでしたが、学生の頃に好きだった科目は?

「私も理数系ですよ!生物がとても好きでした」

 

──ということは『バッド・ジーニアス』に登場していた数式は全て理解していたのですか?

「はい(笑) 。でも、あの試験(アメリカの大学に留学するため世界各国で行われる大学統一入試試験STIC)の問題自体難しくないですよね。ちゃんと宿題していれば解けるはずです(笑)」

 

 

──全員が宿題をやっていたら話が成立しなかったですね(笑)。カンニングをしてしまった子に対して、大人としてどう接したら良いと思いますか?

「映画を観れば、カンニングをしてしまったらどんな結果になるか分かってもらえると思います。カンニングをすることはもちろん悪いこと。その結果はきちんと受け止めなければいけないのです」

 

──ところで、映画ではリンたちは、カンニングの報酬として1科目3千バーツを要求していましたね。1バーツの価値がタイの高校生にとってどれくらいの価値があるのでしょうか(※1バーツ=3.45円、11月9日現在)。

「そうですね、物価が昔に比べて高くなったので、今のタイの子どもは多分1日100バーツくらいのおこずかいを貰っているはず。私が子どもの頃は、1日20バーツくらい。私が通っていた学校は給食費に学費が含まれていたので、20バーツでかなり大量のお菓子を買うことが出来ました」

 

──『バッド・ジーニアス』公開後、周りの反応や環境の変化はありましたか?

「人生において沢山のチャンスが増えたと思いますし、作品が海外に出ていくことになり、タイの中でも色々な方に知られるようになりました。本当に新しいチャンスが続々ときています。その中で、よい脚本を選んでいきたいと思います。いい役を演じるところをファンはきっと見たいと思っているはずだと思うので」

 

──役者としてこれからどういう作品に出演したいか、どういう役柄を演じたいかなどの希望はありますか?

「自分で何を演じたいか、何を演じたくないかを決めたくないんです。提案された役はどんなものでもやってみたいし、自分が面白そうと思える役を一番やってみたいですね。今度Netflixで公開されるタイのドラマシリーズでは、精神科医の役で、結構役作りを頑張ったので、観客に気に入ってもらえたら良いなと思います」

 

 

──『バッド・ジーニアス』を通して観客に受け取ってもらいたいメッセージはありますか?

「この映画は性別、年齢を問わず楽しんでもらえる作品だと思います。カンニングをした結果、バンクというキャラクターはそれを認めず良くないことを続けていき、リンは自分の罪を認め、父との平凡な生活を選ぶという描き方をしています。観客ひとりひとりが受けとる内容は、その人の人生経験によって変わると思います。たとえば私が22年生きてきて、この映画を観て受けとることは40年間生きてきた人とはまた違うだろうし、本当にそれぞれの人生経験の違いが、この映画を観て何を持ち帰るかの違いに繋がるのだろうと思います」

 

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『バッド・ジーニアス』(原題:Chalard Games Goeng)

監督/ナタウット・プーンピリヤ
キャスト/チュティモン・ジョンジャルーンスックジン
2017 年/タイ/タイ語/130 分/字幕翻訳:小田代和子、監修:高杉美和

 

日本公開/9月22日(土)
提供/マクザム
配給/ザジフィルムズ、マクザム
後援/タイ王国大使館、タイ国政府観光庁
公式サイト
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