『エクソシスト』を抜いてホラー史上No.1!『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』の恐怖とは?【クロスレビュー】
- T&Bear
全米で9月8日(金)に公開されるや否や爆発的にヒットし、ホラーの金字塔『エクソシスト』(73年)の興行収入を超え、ホラー映画史上No.1記録を更新中の『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』。アメリカではインターネット上だけでなく、実際に街にピエロが出没する奇妙な現象も続出するなど、まさに社会現象化しています。
11月3日(金・祝)の日本公開を前に、ひと足先に作品を鑑賞してきました。
スティーヴン・キング史上最恐小説の2度目の映像化
『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』は、1986年に発刊された、モダン・ホラーの開拓者として知られるスティーヴン・キングの小説「IT」の2度目の映画化です。
キングといえば、1974年のデビュー作を原作とした『キャリー』(76年、ブライアン・デ・パルマ監督)を始め、『シャイニング』(80年、スタンリー・キューブリック監督)、『デッド・ゾーン』(83年、デヴィッド・クローネンバーグ監督)、『ミザリー』(90年、ロブ・ライナー監督)などのホラー映画の原作者として知られ、非ホラー作品では『スタンド・バイ・ミー』(86年、ロブ・ライナー監督)、『ショーシャンクの空に』(94年、フランク・ダラボン監督)など、その小説は40本以上が映画化されています。
1990年代のメイン州デリー、子供だけを狙った連続殺人事件が起こり、マイクは、子供時代に“IT”と呼んでいたピエロ/ペニーワイズの犯行であることを確信する…というのが小説のあらすじ。「IT」は1990年に、『フライト・ナイト』の続編『フライト・ナイト2/バンパイアの逆襲』などで知られるトミー・リー・ウォーレスにより、米国ABC系のテレビシリーズとして映像化されています。今回は実に27年ぶりとなる映像化ですが、劇場版としては初となります。監督は、ギレルモ・デル・トロ製作総指揮の新感覚ホラー『MAMA』で監督を務め頭角を現したアンディ・ムスキエティ。アルゼンチン出身の気鋭監督です。
ムスキエティ版「IT」ってどんな話?
もともとの小説は、成長した主人公が相次ぐ子供の失踪事件に過去を思い出す形式で始まりますが、今回の映画版は、子供たちが主人公です。
アメリカのメイン州デリー。この町では、不可解な失踪事件が続発していた。ある日、主人公ビリー・デンブロウの弟ジョージも、紙で作った小舟で遊びに出かけた雨の日に忽然と姿を消してしまう。「ルーザーズ・クラブ=負け犬クラブ」というレッテルを貼られ、ヘンリー・バウワーズを中心とした学校のいじめっ子たちに怯えながら過ごしていたビリー達。そんな中、彼らの前に“それ”が姿を現わし始める。自宅の地下室、バスルーム、図書館、そして町はずれの廃墟の館…。至るところに現れ、ビリー達を恐怖に陥れる謎のピエロ。果たして、“それ”の目的とは何なのか。そして、「負け犬クラブ」は“それ”を倒すことが出来るのか!?
恐怖の道化師“ペニーワイズ”
スティーヴン・キングのホラー小説の中でも最恐と言われる「IT」ですが、その“恐怖”の元凶となっているのが恐怖の道化師“ペニー・ワイズ”。1990年版を見たことがある方は、強烈なピエロがトラウマとなっている人も多いはず。
突如として子供たちの前に姿を現わすようになった謎のピエロ“ペニーワイズ”。なぜか、子供たちにしかその姿は見ることが出来ない。“それ”は基本的にはピエロの姿をしています。しかし、“それ”はその姿を様々に変化させます。相手が最も恐れを抱くものに。ペニーワイズは、まさに恐怖の化身なのです。“それ”は、神出鬼没。どこにでも現れる。どこへ逃げたとしても、“それ”は突如として現れるのです。“それ”は一体何者で、何が目的なのか。
“負け犬クラブ”の主人公たちに感情移入
ただ怖いだけのホラーではないことも、「IT」の魅力のひとつです。本作を鑑賞していると、いつどこに“それ”が潜んでいるか分からない緊張感で正直とても疲れますが、個性豊かな子供たち“負け犬クラブ=ルーザーズ・クラブ”が、ユーモアと楽しさを生み出してくれます。彼らが、自分たちの抱えている問題を解決して行く過程は、感情移入ができる本作の見どころのひとつで、また『IT』がホラー版『スタンド・バイ・ミー』といわれる所以でもあります。
“負け犬クラブ”のメンバーは以下の通り。
ウィリアム・デンブロウ
本作の主人公ビリー。スムーズに喋ることが出来ず、いつもどもってしまう。両親は、失踪したジョージは既に死んでしまったと思っていますが、ビリーはジョージの生存を信じ、ずっと彼のことを探しています。負け犬クラブもジョージの捜索に協力しています。
スタンリー・ユリス
ユダヤ教の指導者ラビである父親を持つスタン。父親の後を継ぐために教会に通っていますが、彼は宗教にあまり関心がありません。理屈っぽい性格で、負け犬クラブの皆から嫌がられることもしばしば。
ベンジャミン・ハンスコム
ベンは、図書館にこもってばかりで友達のいない太った少年。普段は図書館でデリーの歴史について本を読み漁る毎日。いじめっ子たちから、最も目をつけられている彼は、負け犬クラブに入っていなかったのですが、偶然負け犬クラブと出会い加入することに。自分に声を掛けてくれたビバリーに淡い恋心を抱く。New Kids on the Blockのファン。このことはビバリーだけが知る秘密。
ビバリー・マーシュ
尻軽だという嘘の噂が蔓延しているせいで、周りの女生徒からいじめられている少女。家の外でいじめを受けているだけでなく、家庭内では父親に虐待を受けている。彼女もまた、負け犬クラブに出会い、加入。負け犬クラブで唯一の女性です。負け犬クラブのメンバーたちは、彼女のことを好意的に思っています。
リチャード・トージア
ビリーの親友で、メガネの少年リッチー。一度喋り出すと止まらないお喋りな少年。負け犬クラブのメンバーに、いつもその減らず口を指摘されています。
マイケル・ハンロン
黒人の少年マイク。デリーで起きた火事で両親を亡くしており、肉屋である祖父に育てられた。家畜を殺すのをいやいや手伝っています。彼もまた、いじめっ子に目をつけられており、後に負け犬クラブに加入します。
1990年版との違い
違いといえば、恐怖の権化ペニーワイズです。1990年のペニーワイズは相当強烈なルックスで、見た誰もが恐怖を抱いたはず。一方2017年のペニーワイズは、“Pennywise the Dancing Clown(踊るピエロペニーワイズ)”と自己紹介をするように、1990年版に比べて、とても動きが軽快になっています。ビリー達の目の前に現れ、迫って来る時の動きは、とても奇妙で怖いです!
1990年版は小説同様に、ビリー達が大人に成長した頃から物語が始まります。ペニーワイズが再び現れるようになり、再会を果たす彼らが、かつてのペニーワイズとの戦いの日々を回想して行くのですが、2017年版はビリー達が子供の頃のエピソードしか語られません。
1990年版は本編が185分と、3時間超え。DVDも2ディスクに分けられています。一方2017年版の上映時間は135分。そして、11月3日公開の今作は第1章。今後第2章が待っているということは、新ITの方がボリューミーなのかもしれません。2017年版を観て気に入ったら、1990年版も観て、2つの作品の違いを見るのも、楽しむ方法のひとつではないでしょうか。
見る者を恐怖に陥れる“それ”。日本公開は11月3日(金・祝)です。神出鬼没の恐怖の化身ペニーワイズを、劇場で目撃しましょう!
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『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』(原題:IT)
監督・脚本/アンディ・ムスキエティ
出演/ジェイデン・リーバハー、ビル・スカルスガルド、フィン・ウルフハード、ソフィア・リリス、ほか
配給/ワーナー・ブラザース映画
2017年/アメリカ/カラー/デジタル/英語/135分
11月3日(金・祝)丸の内ピカデリー、新宿ピカデリー他全国公開!
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