日本漫画的な『ジョン・ウィック:チャプター2』 ―ヤツの狙いは僕たちのハートだ!-
- Kazutaka Yokoo
※本記事は『ジョン・ウィック:チャプター2』のネタバレを含みます。
『スピード』(94年)や『マトリックス』(99年)の大ヒットで90年代を代表するスター俳優となったキアヌ・リーブスのカムバック作品として話題となった『ジョン・ウィック』。その待望の続編『ジョン・ウィック:チャプター2』が7月7日に日本公開される。
『マトリックス』シリーズでスタントコーディネイターを務めたチャド・スタエルスキ監督らしいスパルタンなガンアクションで我々を魅了した前作は、およそ1時間半というコンパクトな上映時間の中できっちりと見ごたえのある復讐譚を完結させており、一見すると続編のりしろはないように思える。だからこそ、その“その後の話”とあっては期待せずにいられない。大の日本好き――そしてラーメン好きーーとして知られる主演キアヌ・リーヴだが、この作品もまた、(よい意味で)日本的にシフトチェンジした“少年漫画的殺し屋”の姿だった。
「殺し屋ホテル」から広がる世界観
ロシアンマフィアを相手に繰り広げた壮絶な復讐劇(前作)から5日後。イタリアン・マフィアのサンティーのから新たな“仕事”を依頼されるが、殺し屋から足を洗いたいジョン・ウィックは、それを断ったため、報復として自宅を爆破されてしまう。愛するものの思い出までも破壊されてしまったジョンは、サンティーノへ報復を始めるが、逆にその首に7億円の懸賞金がかけられ、世界中の殺し屋から命を狙われるハメに陥る……。
前作から撮影もキャストもバージョンアップし、NYやローマを舞台としている本作が“日本的”であると思われる最大の理由は、そのストーリー展開が極めて「少年漫画的」である点にある。前作では仇であるロシアンマフィアのタラソフ親子を完膚なきまでに打ちのめし、その強さを見せつけたジョン・ウィック。本作では、そのロシアンマフィアが12席のうちの一角を占めていた「主席連合」と、殺し屋たちのコミュニティ「コンチネンタル」を巡る権謀術数に巻き込まれる。定数制の敵幹部の欠員によって生じる波乱、因縁のライバルの登場……この展開、我々が慣れ親しんだ日本の少年漫画では、おなじみのストーリーテリングだ。
それだけでは驚くことはないが、ここに前作で示された殺し屋の「仕事のルール」が加わることで、王道でありながら“日本的少年漫画”に慣れた観客にも、目新しいアサシン・ワールドが現れる。「コンチネンタル」の代表、すなわち裏社会のボス・ウィンストン、その部下で独特の存在感を放っていたホテルマン・マネージャー…前作で垣間見えた、彼らの生きる独特な世界の全貌が、本作で明らかになる。
「暗殺スモウ」って!?
「少年漫画的ハリウッド映画」である本作を支えるもうひとつの要素が、キレッキレのキャラクターたちだ。中盤以降、多くの暗殺者たちから付け狙われる賞金首となったジョン・ウィック。不幸にも最強の男に挑む「やられ役」となった暗殺者たちだが、ルックスも戦法もすべてが「漫画的」。中でも筆者のイチオシは、銃で頭を撃ち抜かれても倒れないタフネスを見せた「暗殺スモウ」だ。いかにも「マッドマックス」風の拳法漫画に出てきそうなルックスだが、これが意外と強敵。その戦いぶりは、ぜひ劇場で確かめてほしい。
このように、一見すると荒唐無稽な漫画的キャラクターたちのオンパレードだが、見事なキャスティングにより選ばれた名優たちが息を吹き込むことで、生きた存在としての説得力を持たされている点も本作の見どころのひとつだ。
そして TO BE CONTINUED
公開を目前に控え、期待が最高潮に高まる今、なんとチャド・スタエルスキ監督は早くも第3章の制作に取り掛かっているという。1作目で鮮烈な強さを見せつけ、2作目で独特なほかにない世界観の広がりを見せたジョン・ウィック・ワールド。3作目では、果たしてどんな活躍を見せてくれるのだろうか。日本漫画的な語り口を踏襲するのか、また別の方向へ向かうのか。いずれにしてもさらにハードルを上げてくることは間違いないだろう。
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『ジョン・ウィック:チャプター2』
前作から5日後。引退宣言をしているジョン・ウィックの元に、ジョンに貸しのあるイタリアン・マフィアのサンティーノが新しい仕事の依頼で訪れる。果たしてジョンは、愛犬との静かな暮しを守れるのか……。
監督/チャド・スタエルスキ
出演/キアヌ・リーブス、コモン、ローレンス・フィッシュバーン、ルビー・ローズほか
配給/ポニーキャニオン
2017年/アメリカ/原題:John Wick : Chapter 2
日本公開日/2017年7月7日