Column

2016.11.17 23:54

作品世界としてのMCU〜広がる宇宙と小さな地球〜

  • Aquila

フェイズ3に突入し、エンターテインメント・コンテンツとして、またひとつの作品世界としても拡大を続けるマーベル・シネマティック・ユニバース(以下MCU)。今回の記事では、その舞台となる世界の構造についてまとめつつ解説していきたい。

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MCU世界の構造といえばまず思い浮かぶのは”九つの世界”である。『マイティ・ソー』(11年)で明らかになったこの概念は、世界樹ユグドラシルが繋ぐ九つの世界が宇宙を構成しているというもの。神の国アスガルドからやって来たソーが地球(ミッドガルド)に住むジェーンに語ったもので、『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』(11年)の序盤でレッドスカルことヨハン・シュミットが訪れたノルウェーの村でも、大きな壁に刻まれたユグドラシルが見られた。

まずはこの”九つの世界”からまとめていく。なお、映像・コミック作品で明確に描写されたもの以外はまだ確証がなく、今後の作品で正確な設定が明らかになるかもしれないことを先にお詫びしておく。

1. アスガルド

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ソーやその父であるオーディン王、そして九つの世界とそれを繋ぐ虹の橋ビフロストの監視者ヘイムダルらが住む”神の国”。
この世界の住人たちは高い身体能力と科学技術、そしてプライドを持ち合わせており、アスガルドこそ九つの世界の頂点であり他の世界を守護する義務があると考えている。

2. ミッドガルド(地球、または”テラ”)

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いわゆる地球。アベンジャーズほかスーパーヒーローをはじめ、ほとんどのキャラクターたちの戦いの舞台となる。過去に幾度となく訪れたアスガルド人たちの伝説が神話として残されている。

3. ヨトゥンヘイム

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好戦的な氷の巨人や獣たちが住む世界。この世界の王であったラウフェイの息子は赤ん坊の頃に戦地にひとり取り残され、ロキという名でオーディンに育てられた。

4. ヴァナヘイム

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地球(ミッドガルド)人やアスガルド人と同じ人間型の住民が存在する世界。ソーの信頼する仲間である三戦士のひとりホーガンの故郷。

5. スヴァルトアルヴヘイム(ダークワールド)

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邪悪にして狡猾なダークエルフたちが住まう世界。この世界の王マレキスはインフィニティ・ストーンのひとつエーテルを使って九つ全ての世界を闇に変えようとした。

6. ニダヴェリール

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鍛治に長けたドワーフたちが住む世界。ソーのハンマーであるムジョルニアが作られたのもこの世界である。

7. アルフヘイム

名前のみ登場。エルフが住む世界。

8. ノルンヘイム

名前のみ登場。詳細不明。

9. ニヴルヘイム

死者が住むという世界。黄泉の国ヘルはこの世界の一部。

以上九つをまとめたが、正確には九つの”異世界”が存在するというわけではない。地球における”太陽系の八つの惑星”のようなもので、あくまでアスガルドにおいて世界の構造がそう把握されているというだけのことであり、実際にはひとつの同じ宇宙の中、異なる星系に存在するそれぞれ遠く離れた九つの惑星を”九つの世界”と呼んでいるに過ぎないのだ。

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現に『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(14年)やTVシリーズ『エージェント・オブ・シールド』ではこれら九つの世界に属さない惑星や種族が数多く登場しており、『マイティ・ソー/ダークワールド』(13年)の戦いのあと、レディ・シフと三戦士のひとりヴォルスタッグが宇宙の果て”ノーウェア”に住むコレクターの保管庫にエーテルを預けたことなどを考えると、アスガルド人も”九つの世界”以外の領域を認識はしていると考えられる。

ここからは、その中から今後重要になってくるであろう場所をいくつか紹介する。
まずは”ザンダー”。ノバ帝国の首都惑星で、さまざまな種族が暮らしている。

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ノバ軍の本部基地もこの惑星に置かれており、『ガーディアンズ〜』の戦いのあとインフィニティ・ストーンのひとつであるオーブが保管されている。

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次に”キルン刑務所”。惑星ではないが非常に巨大な刑務所で、宇宙の凶悪な犯罪者たちが収監されている。ノバ軍が運営。

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最後が”ハラ”。『ガーディアンズ〜』のロナンをはじめ、『エージェント〜』にも登場した青い肌を持つ種族”クリー”の母星である。

このように、宇宙にまでその手を伸ばしたMCU。さらにその勢いは、次元すら越える。
『アントマン』において、スーツのレギュレーターを停止させ原子よりも小さくなったアントマンことスコット。彼は時間をも超越した量子世界へと突入したが、娘の呼びかけに応えて帰還した。
ただの空間ではなくまるで別の宇宙のようにも見えた量子世界。

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先代アントマンことハンク・ピムの妻であるジャネットも”ワスプ”としての作戦中に量子世界へと消えてしまったが、彼女もまだ生き続けている可能性があるということだ。
また、この量子世界は原作コミックにおいても極小の異次元空間”マイクロバース”として登場している。
日本公開が待たれる『ドクター・ストレンジ』においても(ネタバレに繋がるため詳しくは語らないが)”魔法”という別次元のパワーを用いて世界を歪め、組み換えながら戦う魔術師たちが登場し、そして………

『ソー/ラグナロク』『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー Vol.2』『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(いずれも仮題)などに向け、舞台は外宇宙や別次元にまで拡大していくことが予想される。いずれこれらが再び登場した際、その存在を思い出す一助となれば幸いである。
ますますその舞台や戦いのスケールを広げていくMCU作品。これからも期待して最新作の公開を待ち続けようと思う。