Column

2018.07.08 16:00

【単独インタビュー】J・A・バヨナ監督に聞く、恐竜という存在が問いかける命の未来

  • JOSHUA

現代では食品、植物、医療など様々な分野にバイオテクノロジーの波は広がり、倫理的な問題を回避出来れば人間のクローンを創り出すことすらもはや妄想の類とは言えなくなった。もしもバイオテクノロジーの進化が進み、恐竜を蘇らせることが出来たら?恐竜を放し飼いにした”ジュラシック・ワールド”が開園したら?

 

そうしたアイディアを元に1990年に発売されたマイケル・クライトンのSF小説「ジュラシック・パーク」を原作に出発したビッグ・フランチャイズ。28年の月日を経て、5作目となる今作『ジュラシック・ワールド/炎の王国』が完成した。

 

メガ・ヒットした前作『ジュラシック・ワールド』(15年)のコリン・トレボロウからメガホンを引き継いだJ・A・バヨナ監督に今作の魅力を余すことなく語ってもらった。

 

Photo: Kazuhiko Okuno

 

——オリジナルのシリーズ3作品では恐竜の脅威が描かれ、4作目の『ジュラシック・ワールド』では、人間と恐竜が信頼関係を築き上げ、5作目の今作では、人間が恐竜を救おうとします。これまで以上に新しいステージの物語だと思いますが、監督が最も伝えたかったメッセージはどのようなものでしょうか?

「恐竜との関係性を描きたかったんだ。『ジュラシック・パーク』(93年)や『ジュラシック・ワールド』などの過去の作品では恐竜を蘇らせたり、新しい恐竜を作ってしまうってことがテーマだったと思うんだけど、今作では人間と恐竜との関係性に焦点を当てた。マイケル・クライトンの原作と同様に、『ジュラシック・パーク』はエンターテイメント性をテーマにしていたのは面白かったよね。そういえばエンターテイメント性の限界を試した(TVシリ−ズの)『ウエストワールド』も今人気だけど、これもマイケル・クライトンの小説が原作だよね。そんなことを考えると『ジュラシック・ワールド/炎の王国』のコンテクストは面白いよね、だって恐竜はもうパークにいないわけだから!そして彼ら恐竜の命は火山に脅かされてるんだ。だから今作では恐竜の経済的な価値みたいなものは関係ない。命の価値が問題になってるんだ。島の中だけの問題じゃなくて世界レベルでの問題。そうなったときに僕らに何が出来る?助けるべきなのか?見殺しにするべきなのか?こういう風に、島の問題が地理的に世界を包んでしまうのがとても面白いと思うんだ。そして映画は僕らに語りかける形でエンディングを迎える。この作品はメイジーというキャラクターと恐竜達を通して僕らに語りかけてくるようなものなんだ」

 

——ジュラシックシリーズは危機的かつ極限的な状態に陥った人間が成長していくのが作品のひとつの魅力だと思います。本作ではクレアの成長がより際立っていました。前作のクレアは仕事だからやっているという印象もありましたが、今作では自らの意思で動いてると感じられました。ブーツも履いていたし(笑)

「ブーツね(笑) …そうだね、彼女の成長の背景には前作での罪の意識があったからだと思うんだ。お金の為に恐竜達を檻の中に入れていたことを彼女が責められてしまうシーンがあるんだけど、とにかく彼女のそうした罪の意識が今作のクレアを生んだんだ。ブライス(・ダラス・ハワード)と僕はクレアの描写には特に気をつけたんだ。今回のクレアは冒険の準備万端、もちろん服もそれっぽくしてね」

 

 

——島が噴火に飲み込まれていくのを船から見ている光景は感動しました。恐竜の2度目の絶滅を見たかのようなシーンでしたが、全シリーズを通して”泣ける”というシーンは初めてだった様に思えます。監督はどの様な思いでこのシーンを撮ったのですか?

「この映画は命についての話だから、それは正しい感情だよ。恐竜には火山から逃げて欲しいだけなんだけどね、僕はこの辺りが、最初の3部作であるジュラシック・パークシリーズとの大きな違いだと思うんだ。だからきちんと恐竜のことも想ってあげなくちゃならない。そもそも自分たちに理解出来ないことを受け入れるというのがテーマなわけだけど、それは恐竜だけの話じゃなくて小さな少女(メイジー)のこともそうなんだ。彼女は恐竜たちと同じように生まれ、同じように拒絶されてきた。今の恐竜が拒絶されているようには、彼女は未来の社会からはきっと拒絶されないだろうけど。こういう風にキャラクターと恐竜の関係性が循環しているところがこの作品のスマートなところだよね」

 

 

——マルコムが再び登場したのは生物と生命をリスペクトし、自然淘汰を重んじるマルコムという存在を、恐竜を兵器にしようと考える人間たちに対抗させるためではないかと思います。どうお考えですか?

「そうだね。彼は”赤信号”がどこにあるのかを作品中で教えてくれる役目なんだ。例えば彼の核についての話は興味深いね。核という力は歴史上初めて自然の力を超えたもので、人間が地球上の命を一瞬で消し去ることを可能にしてしまったものだ。核の力からは逃れられない。オーウェンのように小屋を建てて逃げていることは出来ないんだ。そういう場合は何かをやらなきゃ駄目なんだ。僕はオーウェンが小屋にいるシーンが好きなんだけど、そこにクレアがやって来て島に戻ろうと説得してくる。背を向けているわけにはいかないということなんだ」

 

 

——僕も物理学を専攻しているのでイアン・マルコムというキャラクターはとても好きです。今作は科学構想の上でのコンサルタントとして、実際の科学者も撮影に参加しているのですか?

「そうそう!恐竜学者も獣医も常に一緒に協力してくれたんだ。恐竜のアニメーションを作成するときや、それこそ歴史的にも存在しなかった(今作で登場するハイブリッド恐竜の)インドラプトルを創ったときなんかは、恐竜の細かいディティールの部分やアイディアは(学者らの意見を)特に参考にしたんだ。だからインドラプトルの爪や手触り、肌の質感、眼光、こういったディティールは(学者らが提唱する)実際の恐竜を参考にしたから凄くリアルに仕上がったんだ。たとえ本物じゃなくてもね!」

 

——インドラプトルが今回「恐怖の象徴」だったと思いますが、T-レックスに比べて体の小さいラプトルで恐怖を生むことにどのような点に力を入れたのでしょうか?

「興味深い質問だね。前作のインドミナス・レックスはもっと大きかったよね、それもT-レックスより!だからインドラプトルはちょっと違う方向性を持たせることにして、恐怖や暗黒さの一面を大切したんだ。暗い檻の中から何かぶつかるような音が聞こえてくる。でも外から見えるのは獰猛さが伺える強靭な爪や人間のような腕だけ。これはひとつの”恐怖”の描き方なんだ。”恐怖”というのは何が見えて、何が見えてないか、そういうところで決まってくるんだ」

 

 

——1作目からの映像美の進化をみることは勿論容易ですが、前作との映像における差異点はどこにあるのでしょうか?

「うーん……僕としてはやっぱり『ジュラシック・パーク』をかなり意識したんだ。『ジュラシック・ワールド』よりもね。この映画は1作目の『ジュラシック・パーク』を鏡に映したような作品なんだ。でも恐竜との関係性は逆転している。今作には僕がヴィジュアルとして凄く好きなシーンがあるんだけど、ジオラマの作品の中にキャラクターたちが入っているところをインドラプトルが外から見るんだ。こうして関係性が逆転しているという点でも、今作は1作目の鏡に映したものだと言えるんだ。そう言った意味で今作では象徴的なシーンをいくつか見つけられると思うよ。ただし鏡に映るように、1作目とは同じようなシーンでも意味が変わってくるんだ。今作は恐竜以上に人間達が主役なんだ。今作のラストシーンではキャラクター達が空を見上げると、そこにはプテラノドンが飛んでいる。だから少し歪められた”鏡”なんだろうね。なぜならこの物語は”制御不能”をテーマにしているからね」

 

——もし“ジュラシック・ワールド”が現実にあったとしたら監督は行きたいと思いますか?

「……行こうとはするだろうね。でも僕は恐竜を蘇らせることには懐疑的なんだ」

 

——僕も行くとは思いますが、間違いなく恐竜に食べられてしまうと思います。

「(笑) そうだね、僕はT-レックス(ティラノサウルス)やインドラプトルの”モンスターさ”が好きなんだ。もしこういった凶暴なモンスターがいなかったら、人間たちは島の恐竜達を使ってお金を儲けてしまうだろう。そこでインドラプトルやT-レックスのようなモンスターが檻から出てきて全部を壊してしまう。モンスターってのはそういう意味では解決策なんだ」

 

 

——最後の質問になりますが、現在のハリウッドの状況についてはどうお考えですか?

「ブロックバスター映画(※)がたくさん撮れるという点は好きだよ。でも80年代の、バラエティに富んだ作品で溢れていた頃を思い返すと、今はリブートやリメイク、連作がとても多い印象があるね。もちろん観に行くし、とても楽しいことだとは思うけれど、ちょっとバランスが崩れてきていると思うね」(※一億ドル以上の制作費をかけた大規模映画のこと)

 

——ありがとうございました!

 

6500万年もの途方も無い月日を越えて、現代に蘇った恐竜が放つ咆哮はどこか物悲しげである。まもなく恐竜達が暮らすイブラ・ヌブラル島の火山は大噴火を起こし、我々に”二度目の恐竜の絶滅”を見せつけることになるからだろう。「自然の流れに任せるのが人類の最善」といった見方もあれば、「生命を危険から守るのは当然」といった見方もある。あなたならどんな答えを出すだろうか?そして今作の衝撃的な結末をあなたはどう解釈するだろうか?

 

しかしいずれにせよ、人類と恐竜らは最善の道を探し出すだろう。なぜかって?もちろん”Life Finds a Way”だからだ。

 

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『ジュラシック・ワールド/炎の王国』(原題:Jurassic World: Fallen Kingdom)

製作総指揮/スティーヴン・スピルバーグ、コリン・トレボロウ
製作/フランク・マーシャル、パトリック・クローリー、ベレン・アティエンサ
キャラクター原案:マイケル・クライトン
脚本/デレク・コノリー、コリン・トレボロウ
監督/J・A・バヨナ
キャスト/クリス・プラット、ブライス・ダラス・ハワード、B・D・ウォン、ジェームズ・クロムウェル、テッド・レヴィン、ジャスティス・スミス、ジェラルディン・チャップリン、ダニエラ・ピネダ、トビー・ジョーンズ、レイフ・スポール、ジェフ・ゴールドブラム

 

日本公開/2018年7月13日(金)全国超拡大ロードショー!
公式サイト
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