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2018.01.13 12:00

【単独インタビュー】月川翔監督に聞いた映画『君の膵臓をたべたい』大ヒットの裏側

  • ichigoma

250万部を越すベストセラーとなった住野よるの同名小説の映画化『君の膵臓をたべたい』。2017年夏映画として公開されるや否や、そのタイトルのインパクトから原作未読の層からも注目を浴び、大ヒットしました。

 

 

一見ホラー映画を連想させるタイトルですが、膵臓の病で余命いくばくも無い事を周りに隠しているクラスの人気者・女子高生の桜良と、その秘密を知ってしまった地味なクラスメイトの「僕」との交流を綴った純粋で美しい物語と、タイトルの意味が分かった時の感動に多くの人が涙した一作です。
2017年を代表する日本映画となった”キミスイ”、待望のブルーレイ・DVDが1月17日(水)に発売されるのに際し、月川翔監督にお話を伺いました。

 

――『君の膵臓をたべたい』、大ヒットおめでとうございます。

月川監督「ありがとうございます」

 

――『君の膵臓をたべたい』、通称“キミスイ”はインターネットでも話題となったこともヒットの要因だったように思われます。大ヒットを受けて、監督の率直なお気持ちをお聞かせください。

月川監督「そうですね、これまで作ってきたものの中でこんなにたくさんの人に観てもらえたのは初めてだったので素直に嬉しいですね」

 

――住野よる先生の同名原作は本屋大賞等を受賞していて、すでにベストセラーとなっていました。多くのファンをもつ小説の実写化にあたってのプレッシャーはありましたか?

月川監督「僕も原作が好きだったんです。が、原作にない“十二年後の設定”を作るという部分で、原作ファンの人が嫌な思いをしないか、住野先生も嫌な気持ちにならないよう、となどいろいろ考え、そういう意味ではプレッシャーでしたね。小説と映画は、一対一のイコールで変換できるものではないから、やっぱり映画用に脚色はしなければいけない。その脚色の仕方でがっかりする人が出ないようにしたいなと思いました」

 

月川翔監督

 

――映画版には、小説にない“十二年後”の世界が描かれていて、高校時代は過去として描かれています。この設定には、どのようなこだわりがあったのでしょうか?

月川監督「2時間ほどの映画でなんとかこの物語を描くぞっ、という時に、回想の形にすれば小説で描かれていた高校時代を断片として描ける。その前後を観客の想像にゆだねることも出来る。そこに利点がまずあると。

 

さらに、大切な人を失った後も、残された人たちは、人生がそのまま続くじゃないですか。彼らの人生の中にもちゃんと桜良と過ごした時間が影響を与えているんだというところ描くことで、映画ならではの感動をもたらすことができるのじゃないか、と」

 

——その成果はあった、と?

月川監督「はい、大正解だったなと思ってます。その後、生き続けた人の人生をちゃんと描けた。なおかつ、彼女と過ごした時間は決して無駄になってなくて、桜良は彼らに影響を与え続けている。『キミ、教えるの上手いから先生になりなよ』といわれて彼は先生になったんだろうなぁ、とか。小栗さん演じる大人になった「僕」と彼女の視線が交錯していくというところなどは、やっぱり映画ならではのエモーションがある」

 

――住野先生からは、この構成に関してはどのようにお話されていましたか?

月川監督「映画を作る前に一度お会いした時に“十二年後”の設定を加えるという構想の話もしました。住野さんに映画をご覧いただいた後にまたお話をさせていただいたのですが、“足りない部分はあると思うんだけど、映画は映画でよかった。映像の力ってすごいですね”と。たぶん、小説ではもっといろいろ描いたのにという悔しさも住野さんにはあると思います。でも、納得していただけたかなぁとは思っています」

 

――主演の二人のピュアな魅力がこの映画の素晴らしさの一つであると思います。桜良を演じた浜辺美波さんと「僕」を演じた北村匠海さんの第一印象はどんなものだったのでしょうか。また、撮影中の様子を教えていただけますか。

月川監督「いちばん最初に浜辺さんにお会いした時は、おとなしい感じの子という印象でしたね。桜良って、彼女がいるだけでクラスが明るくなるような子なので、思ったよりも陰な感じの人が来たなという感じはちょっとしました。ただこの人が自分の不安だったり、怖いと思っていることを隠して笑顔でいたらどうなるんだろう?とかいろいろな想像が膨らむ人だなぁと感じさせてくれたので、是非、この人と仕事してみたいな、と。北村匠海くんは、2010年に(月川監督が手がけた)RADWIMPSの「携帯電話」という曲のミュージックビデオに出演していただいたことがあった。そのオーディションが初対面だったのですが、イノセントな雰囲気の可愛い男の子だなぁと思っていたのが第一印象でしたね。この映画の撮影にあたって匠海くんは、「今回の役、僕はぜんぜん無理がないというか、本当によく理解出来るんです」って言うんです。彼が言うには、自分の学校でのポジションがこの役とまったく同じなんだ、と。だから「僕」がどういう風に毎日を過ごしているのかすぐ想像が出来る、と。無理につくらなければいけないものはなく、役にすんなり入っていったようでした」

 

――余命が残りわずかという現実を受け止めつつも明るくふるまう桜良と内気な「僕」、そしてその二人にちょっと嫉妬している桜良の友人の恭子など、まさに等身大の高校生が描かれていました。十二年後の彼らの姿も含めて、月川監督にとって、登場人物の中でお気に入りのキャラクター、あるいは共感するキャラクターはいますか。

月川監督「好ましいキャラクターといえば……“ガム君”ですかね。彼はいいですね(笑) 僕も匠海くんと同じようにひとりで本ばっかり読んでるような高校生だったりしたので、ありがたいんですよね、彼みたいな『ガム食う?』みたいな人がいてくれると。過度に干渉してくるでもなく、ね。ナイスキャラでしたね。韓国の釜山映画祭で上映した時はガム君の出てくるシーンではちゃんと笑いが起きていたようです。日本とは反応する所が違ったらしいんですけど、かなりガム君の所は韓国の観客が楽しんで観てたと人から聞き、嬉しかったですね」

 

――もし監督が「僕」の立場で、「共病文庫」を拾ってしまって桜良に「見たでしょう?」と突っ込まれたらどうしますか?

月川監督「まずは『あっ、見ちゃいました』って素直に謝りますね(笑)」

 

――では「じゃあこの事、黙っておいてね」と言われたら?

月川監督「たぶん黙ってると思いますね。ただ、自分なら、桜良が余命僅かだというところに感情入りすぎちゃうと思う。だから『僕』のようにぜんせん気にしてない素振りで接し続ける事が出来ないかもなぁ。『勝手に人のことに対して、自分が悲しんだりするなんてお門違いだ』って言う態度でいる『僕』のような態度はとれないでしょうね」

 

――“十二年後”の「僕」を演じた小栗旬さんと、恭子役の北川景子さん。監督から見たお二人の魅力について教えていただけますか。北川さんはアドリブも多かったとか?

月川監督「北川さんのアドリブは、(桜良からの)手紙を読むシーン。どういう撮り方にしようか、いろいろ相談しました。とにかく一発の本番にかけたいので、北川さんの耳にイヤホンモニター入れて桜良の声で手紙を読む。手紙はリハーサルでは白紙のものを使い、本番で初めて本物の手紙を渡しました。北川さんも『桜良のメッセージ全部聴かせてください。その上で私はお芝居をしたい』とおっしゃったので、それで行きましょうと。本番では、あまりにも(北川さんの)芝居が素晴らしくて、僕も感動してしまってカットって言えずにいたら『なんでこのタイミングなの馬鹿!』って台詞が北川さんからアドリブで出たんです。“うわーこれは恭子だったら絶対言うね!”って台詞が飛び出した。こんなにうまく行くかなと思うくらい上手くいったシーンでした。北川さんは、カットがかからなかったから、なにか言わないといけないととっさにアドリブでセリフつくってくれたのが本当に最高によかった。

 

そういえば、釜山の上映の時、この北川さん崩れ落ちるシーンで、上地雄輔さん演じる“ガム君”が近付いていった所で笑いが起きたそうなんです。たぶんポケットを探った時にガムが出てくると思ったんじゃないか、と。その手があったのかーって思いましたね(笑)」

 

――それ出てきたらズッコケですよね(笑)

月川監督「(ガムが出てきて)“ガムじゃないわよ!”って、コメディになっちゃう。北川さんには演出プランもなんでも相談していましたね。率直に意見を下さる方だったので。例えば式の準備をしているシーンでは、“ウェディングドレスを着てからメイクをするのは、おかしいから、バスローブかなんかのほうがよいのでは?”みたいな。自分をどう綺麗に見せようとかじゃなくて、いかにリアルに見せるかに気をつかってくださった。

 

小栗さんは、原作を読んで気に入っていらした。なので、“十二年後”の彼がどういう生活をしているかということについていろいろ話し合いましたね。なぜ教師になり、なぜ退職願いが常に机の中にあるのか。恭子とはどういう関係性でいて、彼にとっては『共病文庫』や図書館はどういう存在なのか。小栗さんから聞かれたのは、(高校生時代の『僕』を演じた)匠海くんがどんな芝居をしているかということ。分からせる芝居なのか、感じさせる芝居なのか。感じさせる芝居ですよといったら、“ああ分かりました”とだけ。匠海くんのシーンの映像も見せることはありませんでした。小栗さんが監督した作品(『シュアリー・サムデイ』(10年))に匠海くんは出演しているので、彼の芝居を理解していて、それに合わせて小栗さんの解釈で演じてくださった」

 

――今回は滋賀や京都、太宰府天満宮など、全国色んな所でロケをされていらっしゃいましたね。ロケならではのハプニングやエピソードと言ったものはありますでしょうか。

月川監督「ハプニングってのはなかったですね。わりと思い通りに撮影できた感じ。ロケ地選びには、いろいろ苦労しましたけれど。例えばキービジュアルに使用されている桜の橋。いい図書館が見つかり、図書館と学校のロケを滋賀でやるってなったので、その近辺で桜並木の続く橋を探していた。この橋は、ターニングポイントの場として、とても重要な意味がある。二人が登校して来たら一本になり、別れて行く道であり、彼女が命を絶つ所でもあり、12年振りに小栗さんが立つ場所でもある。結局、どんどん滋賀から範囲を広げて、京都で見つかった。理想的な橋が見つかったので、わがまま言ってよかったなって思いましたね(笑)」

 

 

――とても素敵な場所で、映画にもふさわしいです。

月川監督「映画のキービジュアルにもなったし、二人がたたずんでいるってのは台本にはなかったんですけど、なんとなくキーショットを撮りたいなって思って。原作のloundrawさんの表紙はまったく正反対のふたりのキャラクターがよく表現されているなぁと思ったので、こんなキービジュアルを撮りたいなと思っていたんです。なので、台本にはないし、どこに使うかはわからない。ひょっとしたらラストカットかもしれないなぁと思いながら、わがままを通して撮らせてもらいました」

 

――キービジュアル、バッチリでした!「僕」役の北村匠海さんと小栗旬さんなんですが、二人とも似てる訳ではないのに同一人物にみえてしまう。なにか特別な演出はされたのでしょうか。

月川監督「小栗さんが、まず“北村匠海”に合わせてくれたんですね。小栗さんの案で(北村さんと同じ)ホクロも付けてくれて、“彼右利きですよね。僕左利きですけど、右で黒板書けるようにしたいので練習したいです”ということで、かなり細かく準備して下さった。それから、同じ空間で時だけが12年間飛ぶということを一筆書きのように撮っては?と提案もあり、ワンカットで撮るような工夫をいくつかしています」

 

――桜良と「僕」が初めて焼肉デートをする時、原作では桜良はTシャツにジーパンというラフな格好で来たのに、映画では女の子らしい可愛いファッションですね。これはたまたまなのでしょうか。

月川監督「衣装合わせを2回やりました。だから最初ラフなものとかも試したんですけど、“男の子と学校の外で会うよねー……ってことで、服、選ぶでしょ!?”ってことになって。でも、“あ、お洒落してきたねー”と思われないくらいの服というラインで探しました。単純に浜辺さんが似合う服にしたかったというのもありますね」

 

――シンプルだけど可愛い系でした。

月川監督「あんまり凝ったデザインではなくシンプルなものにはしたいなと思っていて、柄とかもそんなに印象に残さずに行こうという感じにしましたね。ただリュックは印象に残したかった。だから、リュックとはぶつからない色にしよう、と」

 

――確かにリュックの印象は強いですね。

月川監督「白にあの赤い大きいリュック。特徴があるので、ホテルの部屋でポーチを取ってあげる時とか印象に残るかなぁって。そうしたら映像が一発出るだけで、あ、あの現場にあのリュックがあるって事で気付けるかなと思ったので」

 

――映画の中では、図書館がとてもノスタルジックで大切で重要な場所のように感じられますね。月川監督のこだわりでしょうか。

月川監督「最初にイメージしたのが柔らかい光が差し込んでる図書館。しかし実際の図書館って本も焼けちゃうし、そんな窓は大きくないですよ。だったら作っちゃいましょう、と。また、十二年の時を経っているので、多少は古いのですが、寂れてるのは嫌で、温かみも欲しいので、床も木にしたかった。窓にも黄色いフィルムを貼り、黄色い光が差し込むって設計にしていただきました」

 

――ブルーレイ&DVD(2018年1月17日発売)の豪華版には、監督と浜辺さん、北村さんのビジュアルコメンタリーが収録されているとお聞きしました。収録はどのような感じだったのでしょうか。

月川監督「撮影時にメイキングの担当の方が撮って下さった映像を観ながら、みんなで話をしていきました。僕らは完成形、つまり編集が終わって完成した映画を覚えているので、撮影時のお芝居を見るとぜんぜん違うトーンで芝居しているテイクもあって、意外というか面白かったですね。浜辺さんのシーンは、とくにいっぱいテイクを撮ったんです。どうしたら女の子に嫌われずにああいった可愛らしいキャラクターを演じられるのか。桜良って見方によっては、ちょっとあざといじゃないですか。“あざと可愛い”ところに着地するまでにいろんな角度からトライをしていたんですよ。ただ『仲良しくん』って言うだけでも『えっこんな言い方してたっけ?』みたいなのが出てくるので、本人達も照れちゃってた。『あれ、こんなのあった!?』みたいな感じで撮影時の映像を観てましたねぇ。

 

――楽しそうですね。

月川監督「楽しかったですね。『真実と挑戦』ゲームをやっている場面で、途中でハイスピード・スローモーションになるところ。とても楽しそうに喋ってるじゃないですか。あそこは台本に無いものをアドリブで演じしているんですけれど、『てへっ』って言ったりして。本人達もカットかかるまでやんなきゃいけないから一生懸命やるんですねそれを。照れる距離間で。ものすごい瑞々しいものを見てるなぁって思いながらコメンタリーはやってまたした」

 

――俗に言う「お蔵入り」のシーンはどんなシーンがあったんでしょうか。

月川監督「通学路のシーンで、二手に分かれて一本になるY字の橋。ポスターにもなっているこの橋で登校してくるシーンは映画に入っているんですが、ふたりで下校していくシーンも撮ってたんですね。ちょっと胸キュンのシーンがあるんですけれどもカットしました。そのシーン単体では素敵だったんですけど、ちょっと恋愛要素が強いかなと思って。ビジュアルコメンタリー収録のときも話題になったんですよ、『あそこのシーンなくなったよねー』みたいな話をして。このシーンは、BD・DVD(豪華版)に入っているので、ぜひチェックしていただければと思います」

 

――学校風景は滋賀大学、先程の図書館の中は小学校を使用されたり等、ファンの中ではあのシーンはここだと場所を特定してロケ地をピックアップし、その場所を巡る”聖地巡礼”をする方も出てきてますね。

月川監督「注意点としては(キービジュアルを指して)この場所は、いつも桜が咲いてるわけじゃないです(笑)」

 

――実際のこの場所は桜の名所なのでしょうか。

月川監督「桜並木はあります。映画では実際の木に対して桜をCGで乗せているので多少盛ってますけど。だから4月のいい時期に行けばひょっとしたらと思うので、是非いい時期に行ってみてください(笑)」

 

ぜひ、行きたいです。この位置に立って写真を撮りたいですね!本日はどうもありがとうございました。

 

(聞き手:Ichigoma、Su)

 

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月川 翔(つきかわ・しょう)

1982年、東京生まれ。成城大学法学部在学中にJCF学生映画祭グランプリを受賞。卒業後、東京芸術大学大学院映像研究科にて、黒沢清、北野武教授に師事。2011年『きっかけはYOU!』で長編監督デビュー。TVドラマ、CM、ミュージック・ビデオなどの映像ディレクターとしても活躍。「LOUIS VUITTON Journeys Awards2009」ではショートフィルム「The Time Walker」で審査委員グランプリを受賞。

 

 

『君の膵臓をたべたい』 Blu-ray&DVDリリース!

「僕」は病院で、「共病文庫」というタイトルの日記帳を拾ったことをきっかけにクラスメイトである山内桜良(さくら)が、膵臓(すいぞう)病に侵され、余命が長くないことを知ってしまう。ひとりが好きでまったく目立たない存在の「僕」は、その日から、陽気で人気ものの桜良の人生に深く関わっていくことになる……。2015年に上梓された住野よるのデビュー小説の映画化。

 

監督/月川翔
脚本/吉田智子
原作/住野よる「君の膵臓をたべたい」(双葉社刊)
出演/浜辺美波、北村匠海、大友花恋、矢本悠馬、桜田 通、森下大地、上地雄輔、北川景子、小栗 旬

 

Blu-ray 豪華版 ¥6,700(税別)
DVD豪華版 ¥5,800(税別)

 

【共通特典】

●特典ディスク 映像特典
メイキングハイライト ビジュアルコメンタリー、「キャンペーンの軌跡」VTRビジュアルコメンタリー、映画『君の膵臓をたべたい』公開記念特番 キミスイがあなたに届くまで、イベント映像集

●本編ディスク 映像特典
予告編集(特報、予告、TVCM)

●封入特典
共病文庫メモリアルブックレット

 

2018年1月17日(水)発売

公式サイト