Column

2018.03.26 15:54

【インタビュー】リュック・ベッソン監督が新作『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』を語る!

  • JOSHUA

※本記事には映画『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』のネタバレが一部含まれます。

 

「ここ10年間でヒーロー映画は沢山公開されてきた。でもこれらヒーロー映画はね、よく見てみると……エイリアンが常に敵なんだ。英語でエイリアンは”外国人”の意味だろう? 僕らは自分達の身を守らないといけないわけだ。そうなったときに助けてくれるのはいつだってアメリカ人。”世界を助けてやるぞ!お前も助けてやる!”ってな具合でね。そういうのは僕にとってはプロパガンダ映画で、僕が撮りたい映画じゃない。みんなと共生していく、エイリアンを遠ざけるための壁を作ることのない”壁の無い”世界、そんな映画を僕は作りたかったんだ」と語るのは映画『レオン』(94年)、『LUCY/ルーシー』(14年)などで知られるフランスの巨匠リュック・ベッソン監督だ。

 

 

SF超大作『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』(以下『ヴァレリアン』)は、『スター・ウォーズ』に大きな影響を与えたと言われ、しかも映像化不可能と言われたフランスのバンド・デシネ(コミック)「ヴァレリアンとローレリーヌ」を映画化したもので、リュック・ベッソンの熱烈なファン、通称ベッサーと呼ばれる人たちが毎日夜も眠れずに渇望した作品だ。(※ベッサーという言葉は僕が今1秒で作り出した言葉だけれど)

 

そんなベッサーのひとりでもある僕が監督へのインタビューで聞いた話を添えて、『ヴァレリアン』(3月30日(金)日本公開)の魅力を余すことなく解説していきたい。

 

 

ちょっと夜空を見上げてみよう。もしかしたら地上から400km上空を秒速7.7kmもの凄まじい速度で飛行している国際宇宙ステーションが光って見えるかもしれない。(東京の夜空だと視力24くらい必要かもしれない) 時が過ぎていき、サッカー場ほどの大きさしかない宇宙ステーションがみるみるうちに増築され大きくなっていくのを想像出来るだろうか?主人公のヴァレリアン達が暮らす”千の惑星都市アルファ”は約700年もの年月をかけて建設されたもので、冒頭にその歴史をデビッドボーイの1969年の曲”スペース オディティ”とともになんともロマンチックに紹介していく。僕が目の前で観ているのは最新のSF映画だというのに使われている曲は40年以上の前の曲だ。しかしそれにも関わらずなんとも心地が良いのはなぜだろうか。

 

 

監督になぜこんなにも古い曲を使ったのか尋ねてみると監督は少し考え、こう答えた。「‥たとえば”Will you marry me?”と言えばいいのに女性に対してなかなかプロポーズが上手く出来ない男性は12世紀の頃も変わらずいたと思うんだ。それが千年前であっても、インターネットや電話が無い時代であっても、どれだけ時代が違っても”Do you want to marry me?(俺と結婚したいか?)”と言っちゃうような男は今と変わらずいただろうと思うんだ(笑)。僕が信じているのは、時代や場所が違ったとしても人間のそういった人間性みたいなところは変わらないってことなんだよ。そこが僕のヴァレリアンの好きなところで、その”小さい物語”は僕らにとっては馴染み深いものなんだ。敵に見つかりそうだから隠れたり、大量殺戮兵器があるらしいぞ!やっつけに行かないと!って行ってみたらそんな兵器は実は無かった。何か聞いたことのある話だろう?未来のことであっても、それはただの過去の繰り返しなんだ。だから昔の曲を未来の作品に対して使うのは僕にとっては自然なことだと思うんだよ。」

 

1977年に打ち上げられた2機のボイジャー宇宙探査機には、地球外生命体や未来の人類が発見した場合を考えて地球の文化を伝えるために音楽を録音したレコードが搭載されている。天文学者でありSF作家のカール・セーガンはこれを「虚空に放たれたラブ・ソング」と表現していたが、たとえ何百年後の未来に発見されたとしても我々はいつまでも変わらない人間性のようなものを伝えられるだろうか?(ちなみにボイジャーのレコードにはアグネス・チャンの「ひなげしの花」もきちんと収録されている。ウソだ。)

 

 

監督の話を聞いてそんなことに想いを馳せていると、監督が突然「そう言えば日本の寿司って起源はいつ頃なんだい?」と尋ねてきた。そんなことはもちろん知らないので僕ら記者陣は「江戸‥時代くらいじゃないでしょうか……」ととっさに返したが、監督は続けて「昨夜、僕はビルの55階の寿司屋で寿司を食べたんだ。そう、その16世紀からある寿司をね。過去と未来ってのはそういう関係なんだよ。もし突然16世紀の江戸時代の人間が現代にタイムスリップして来たのを想像してみて。そしたら彼が唯一分かるのは多分この寿司だけだよね(笑)”あぁ!これ知ってるっ!”って言うと思うよ(笑)」と茶目っ気たっぷりに語った。

 

ちなみにインタビュー後に気になって寿司の起源を調べたところ、奈良時代にはすでに存在していたようだ。未来と過去はもっとずっと永く繋がっていたみたいだベッソン!

 

 

広大な砂漠が広がる惑星キリアンのシーンは、その圧巻の映像美に圧倒されてしまうのは間違いないだろう。というか個人的には惑星キリアンのシーンよりもカーラ・デルビューニュの方が綺麗だったと思うのだが、ちょっとそれは置いておいて、監督はこのシーンを撮ることの難しさについて言及した。

 

「そう、一番大変だったのはこの惑星キリアンのシーンだったんだ。分かると思うけどね(笑)このシーンは2つの世界、つまり砂漠の世界とビッグ・マーケットの世界(※異次元の巨大市場。VRをつけたら商店街が広がる、みたいなイメージに近い)が並行して話が進んでいくからね、難しいんだ。たった15分のシーンだったのに撮影に6週間もかかっちゃったんだ。このシーンを撮影する前に関係する技術者を全員集めてどんなシーンをこれから撮影するのかストーリーボード(絵コンテ)を使って説明したんだ、1時間もかけて!そしたらね、誰も理解してくれなかったんだよ!僕はもう『どうしたらいいんだ?どうやって伝えたらいいんだ?』って頭を抱えたよ(笑)」

 

監督は何とか自分の言っていることを技術者達に伝えるため、自分が教える学生たちに動画の絵コンテを一週間で作ってもらったらしく、その絵コンテに音楽などをのせて編集したものを技術者全員に再び見せたところやっと理解してもらえたと語った。「だから撮影前の準備が一番大変だったんだ。なにせ伝わらないからね(笑)それにビッグ・マーケットには5000種類以上もの宇宙人が出てくる。それだけでこのシーンを10回以上観る価値はあると思うよ」

 

作品に登場する宇宙人それぞれにきちんとした設定がなされているみたいだ。中でも驚いたのが宇宙人それぞれに住んでいる場所の住所も設定されているらしく、その住所は実在する星に対応しているらしい。う~む、やりすぎだ!(笑)

 

 

『フィフス・エレメント』や『LUCY』はCGIのよい練習になったという。2009年に映像界に衝撃を与えた『アバター』が登場するまでベッソンは、何千ものエイリアンが出てくるような『ヴァレリアン』を映像化するのは技術的に不可能だと思っていたとのこと。実際『フィフス・エレメント』のヴィジュアルエフェクトショット数は250程度だったのに比べ、「ヴァレリアン」のショット数が2355だったことを考えるとベッソンの言う通り当時は”不可能”だったようだ。ちなみに2355ショットという数はあの『ローグ・ワン/スター・ウォーズ ・ストーリー』のショット数より600も大きい。

 

実は『フィフス・エレメント』と『ヴァレリアン』は非常によく似たエンディングを持っている。どちらとも主人公とヒロインのキスで幕を閉じるのだ。これは単なる偶然だろうか?それともベッソンが何か特別な意味をこめたものなのだろうか?

 

「そうだね‥フィフスはもう20年も前の映画だからきっと偶然だろうね。でも僕がいいなと思うのは‥ヴァレリアンは物語の序盤からしつこくローレインに結婚を申し込んでいたよね、でもヴァレリアンは馬鹿だから”結婚”の意味が良く分かってないんだ。ハネムーンが結婚の前にやることだと思ってたりするわけだから本当に馬鹿でしょ?(笑)でも、彼らは冒険を通して愛の本当の意味を知るんだ。ヴァレリアンはローレインを助けたし、ローレインはヴァレリアンを助けることが出来たからね。お互いが大事な存在だと認め合ったとき、キスをするんだ。とてもロジカルだよね」

 

さらにキスシーンに関する撮影の裏話も聞くことが出来た。「あともう一つ。僕らは毎日撮影をするわけだけど、実は一番最後に撮影したのがこのキスシーンだったんだ。カーラとデハーンは何ヶ月も一緒に過ごした仲だからお互いのことが凄く好きなんだ。カーラにもデハーンにも愛する人がいただろうけど、友達として凄く仲が良かった。撮影最終日が終わってしまうともう二人は会えないよね、僕はその『あぁ!もう毎日会えないんだ!』って思うことの痛みをキスシーンに利用したかったんだ。だからあのキスは実はグッバイキスだったんだ」

 

地球外生命探査計画の父として知られるフランク・ドレーク博士という天文学者がいる。彼はそのキャリアを全て地球外生命体の発見に費やした。巨大なアンテナで銀河系の星々から届く電波を受信しようと試みたり、考えうる様々な手法で地球外生命体との交信を成功させようとしてきた。

 

現在21世紀の時代になっても地球外生命体、つまりエイリアンは発見されていない。ヴァレリアン達が住む都”アルファ”には人間以外のあらゆる種族のエイリアン達が共存しているが西暦2740年とはまだ700年以上も後の話である。しかしもしもこの先の未来、人類が最初のエイリアンと邂逅を果たしたとき、人類は彼らがさしのべてきた手に応えることが出来るだろうか?

 

 

「今まで会ったことのない人に初めて出会うとき、僕はRichness(豊かさ)を感じるんだ。もし僕が日本人に出会えなかったら寿司のことは知らなかっただろうし、着物のことも書道のことも知ることは出来なかっただろうね。君たちが知っていることや持っているものをテーブルの上に置いてくれれば、代わりに僕らフランス人からはパンやカマンベールチーズ……クロワッサンなんかもいいね! そういったものをテーブルの上に置くことが出来る。ファッション関係のものをあげたっていいかもしれない。君らが持っているものをテーブルの上に置いて、僕らが持っているものもテーブルの上に置けば……ほら!僕らはRicher(より豊か)になるね!そう、僕が映画でやりたいことも同じなんだ。『ヴァレリアン』では冒頭、色々な宇宙人達と握手するシーンがあるだろう?中には気持ち悪い宇宙人もいたと思うけどね、それでも握手しないといけないんだ(笑)ウェルカムってね!それが僕にとっての未来なんだ。」とベッソンは楽しそうに語った。

 

==

 

『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』(原題:Valerian and the City of a Thousand Planets)

西暦2740年。宇宙を守る任務を帯びたエージェントのヴァレリアン(デイン・デハーン)とローレリーヌ(カーラ・デルヴィーニュ)。二人が向かったのは、長い年月を経て拡張を続け、あらゆる生命が共存する宇宙ステーション・アルファ、別名“千の惑星の都市”。しかし、その深部には謎の放射線反応が見られ、3,000を超える種族が死滅の危機にあったのだ。「10時間以内にその原因を究明せよ」という極秘ミッションを託された2人の前に突如現れたのは、30年前に消滅したはずの惑星の住人たち。彼らの思惑とは一体…? 果たしてヴァレリアンとローレリーヌは“千の惑星の都市”の危機を救うことができるのか―!?

 

監督・脚本/リュック・ベッソン

原作/「ヴァレリアン」ピエール・クリスタン(作)、ジャン=クロード・メジエール(画)

※小学館集英社プロダクションより2月7日頃発売予定

キャスト/デイン・デハーン、カーラ・デルヴィーニュ、クライヴ・オーウェン、リアーナ、イーサン・ホーク、クリス・ウー、ジョン・グッドマン、ハービー・ハンコック、ルトガー・ハウアー

2017年/フランス/英語/スコープサイズ/137分

 

日本公開/2018年3月30日(金)全国ロードショー

配給/キノフィルムズ

公式サイト
© 2017 VALERIAN S.A.S. – TF1 FILMS PRODUCTION