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2017.07.31 21:48

エドガー・ライト最新作『ベイビー・ドライバー』監督来日記者会見 全文ログ

  • Manatee

イギリスの気鋭エドガー・ライトが米国で撮った注目作『ベイビー・ドライバー』。6月28日の全米公開以来、世界中で大ヒットしている中、同監督が緊急来日。7月31日に記者会見を行いました。

 

 

Q 音楽と演技をあわせるために、撮影現場では曲をかけながら撮影されたと思いますが、具体的なシーンをあげて説明してもらえますか?

ライト監督「はい、現場では音楽をかけて撮影しました。音楽があるシーンの多くは事前に入念にリハーサルをして、セリフがないシーンでは大音量で曲を流して、アンセルがイヤフォンをつけて音楽を聞いているシーンはアンセル自身がイヤフォンで実際に音楽を聞いて、また、セリフがあって全ての登場人物が楽曲に反応しているシーンでは、”イヤー・ウィッグ(earwig)”という、カメラには写らない小さなトランジスタを演者の耳に入れて、音楽を流していました。ですので、全てのシーンを通じて、様々な手段を使って音楽を流していたことになります。ただここで鍵となるのは、演者は観客が聞いている音楽と同じものを実際に現場で聞いているという点で、現場で流された曲は全て作品に登場しています」

 

Q 今回の主人公の「後遺症を持っていて音楽を聞くことで集中する」という設定は、どういうところから生まれたのでしょうか?

ライト監督「様々なアイディアが交わり合ってできたのですが、まずはじめに、音楽を聞いたときだけ機能するキャラクターのアイディアがありました。オリバー・サックスが書いた「音楽嗜好症:脳神経科医と音楽に憑かれた人々」という本に耳鳴りについての記載があるのですが、(この本を読んで)自分も子供時代に耳鳴りがあったことを思い出しました。自分の家系には耳の障害があり、7、8歳の時に耳鳴りがあったのは覚えています。もう治ってしまいましたけど。この本によると、人によっては耳鳴りを抑えるために音楽を聞いている人がいる。そこからベイビーがずっと音楽を聞いている、というアイデアが生まれました。また私もベイビーのキャラクターと似ているところがあって、いつも音楽を聞いて、モチベーションを上げたりインスピレーションを得ています。こういった要素が混ざり合って、ベイビーの設定は生まれました」

 

Q 仲のよいカーアクション映画の巨匠と言われているウォルター・ヒル監督やジョージ・ミラー監督からなにかアドバイスはもらいましたか?

ライト監督「ここ6、7年かけてウォルターと仲良くなりましたが、特にアドバイスはもらわなかったですね。ウォルターとは友人同士として接していますが、『ベイビー・ドライバー』について尋ねるのは緊張しました。ある意味で”あなたの作品へのトリビュートだ”とも伝えましたが、緊張してアドバイスは求めなかったと記憶します。彼は映画を観てくれましたよ。ネタバレはしたくないですが、実は映画の終わり5分には彼の声が登場します。自分にインスピレーションをくれた監督に対する感謝の気持ちを表現できた気がして、とても嬉しいです。

 

もうひとつ面白いのは、ウォルターは本作のプレミアや試写などに全然来てくれないので、この作品を見たくないのかと気になっていたのですが、後から、”お金を払ってこの映画を観たいんだ。自分にとってこの映画を応援することが大事なのだから、公開初日にお金を払って観るんだ”と言われました。『ベイビー・ドライバー』を観るのに彼からお金なんて取れないと思いましたがね(笑)そして彼は実際に奥さんと一緒に公開初日にお金を払って観に行ってくれました。ロサンゼルスのセンチュリーシティ・モール内の劇場だったのですが、奇しくも、そのモールの地下駐車場は『ザ・ドライバー』の撮影現場の一つでした。その夜彼は電話をくれて、とても良かったと褒めてくれました。

 

でも、彼の映画にインスピレーションを受けた作品を観るのに彼自身がお金を払ったとなると、自分は少なくともディナー1回、いや10回は彼に奢らないといけなと思っています」

 

Q ギレルモ・デル・トロ監督も劇場で観てツイッターで反応していたのに驚きましたが、それに関してなにかお話されましたか?

「はい、彼はロンドンで観て、一連の彼のツイートも見たと思います。ツイートする前に電話をくれていました。他の監督達から反応には心が動かされますし、光栄に思っています。また、『フレンチ・コネクション』(71年)『L.A.大捜査線/狼たちの街』(85年)という史上最高のカーチェイス映画2本を撮ったウィリアム・フリードキン監督も『ベイビー・ドライバー』を強力に褒めてくれ、嬉しく思っています。

 

Q 『ショーン・オブ・ザ・デッド』でジュークボックスから流れるQueenの「Don’t Stop Me Now」にあわせてゾンビと戦うシーンが好きでした。『ベイビー・ドライバー』ではカーアクションと音楽が見事にマッチしていますが、そのアイディアはどのように生まれたのでしょうか?またそれに対するこだわりなどもあれば教えてください。

ライト監督「原石となるアイディアは、『ショーン・オブ・ザ・デッド』制作よりずっと前からありました。1995年、自分が21歳の時に、この作品のオープニングでかかることになる曲を聞いて、音楽とアクションをより継続した感じで融合させるというビジョンがひらめきました。『ショーン・オブ・ザ・デッド』や『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』(10年)『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』(13年)といった私の過去作品ではキャラクターが音楽にあわせて演出されるシーンが登場しますが、『ベイビー・ドライバー』では全編を通じてそれが続き、音楽が牽引するアクション映画となったわけです。でなので、『ベイビー・ドライバー』はどんな作品かと尋ねられたら、”『ショーン・オブ・ザ・デッド』のQueenのシーンを全編でやった感じ”と答えることもありますよ」

 

Q すでに続編のオファーを受けているというニュースが出ていますが、具体的なアイディア、イメージはあったりしますか?

ライト監督「続編の話は作品の公開前から出ていました。制作に着手するまでは考えていなかったのですが、実際に作品を制作し始めるとすごく楽しいキャラクター達で、次は何が起こりうるだろうと考え始めました。確実に言えることもなければなにも決まってはいませんが、検討はしています」

 

Q 日本のポップカルチャーによる影響について今まで言及されたことがありますし、今回スバルの車も登場しますが、日本で映画を撮るお気持ちはありますか?

ライト監督「ぜひ作りたく思います。具体的に何かがあるわけではないですが、いろいろな国へ旅行するのは好きですし、自国以外では2つの映画を作りましたが、非常に楽しい経験でした。なので、ちょうどよいストーリーがあればぜひ撮ってみたいと思います。

 

あと冒頭のシーンに出てくるスバルの話は面白くて、初期の脚本ではトヨタ・カローラだったのですが、スタントチームが、スバルWRXを推薦してくれました。セダンの大衆車に見えますが、全輪駆動で見た目とは裏腹にラリーカーのようなことができます。もちろん、スバルファンからは大変好評でした」

 

Q 先ほどベイビーと監督自身で共通点があるとおっしゃいましたが、ベイビー役にアンセル・エルゴートを起用した決め手、理由を教えてください。

ライト監督「アンセルは僕よりはるかに背が高いですよ(笑)私とベイビーをリンクする共通点と言えば、音楽に対する情熱や執着だと思います。私は運転も好きで、さらに音楽を聞きながら運転するのが好きです。また、私もやはり音楽を聞くことを愛していて、音楽を聞くことでモチベーションが高まりインスピレーションを得たりするので、その点がベイビーとの共通点と言えますね。

 

私は強盗集団の”逃がし屋”ドライバーをやったことはありませんが、映画作りで面白いのは、作品制作を通じてまったく慣れないシチュエーションに自分を置き、限りなく現実に近い形で疑似体験ができることだと思います。本作では事前に犯罪経験者にインタビューしましたが、こうしたリサーチを行うと驚くような新発見があります。

 

なぜアンセルが適任かと言えば、彼にはカリスマ性があって、若手俳優では珍しい、スクリーン上で映える自信があるからです。さらに、彼も音楽に対しては本当に情熱的なんです。音楽を通じて脚本に共感してもらえることは、私にとってとても大事でした」

 

Q 日本の映画でインスパイアされたものがあれば教えてください。

ライト監督「『ベイビー・ドライバー』でいえば、数名から『東京流れ者』(1966年、鈴木清順監督)を挙げられましたが、確かにあのスタイルは好きですし、妥当な指摘だと思います。

 

犯罪映画で言えば、10代の時は北野武やジョニー・トーの作品をよく観ていました。ロンドンは外国映画が数多く配給、上映されていて、『HANA-BI』(98年)や『ソナチネ』(93年)、『その男、凶暴につき』(89年)も映画館で観ました。今はロサンゼルスに住んでいて、残念ながらロンドンに比べて外国映画がなかなか劇場公開されずスクリーンで観るのが難しいこともあるのですが。日本人で好きな監督はいますよ。同じ鈴木監督の『殺しの烙印』(1967年)も」

 

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日本到着以来、頻繁にSNSを更新し、新潟県・苗場で開催された「フジロックフェスティバル ‘17」では、『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』に小山田圭吾が音楽を提供するなど親交のあるコーネリアスのライブを楽しんだり、渋谷・新宿の散策を満喫した様子も伺えたエドガー・ライト監督。

 

8月1日開催の、ライト監督によるトークセッション付きのFan’s Voice独占試写会のレポートも近々に掲載予定です!

 

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『ベイビー・ドライバー』

監督、脚本/エドガー・ライト

出演/アンセル・エルゴート、リリー・ジェームズ、ケヴィン・スペイシー、ジェイミー・フォックス、ジョン・ハム、エイザ・ゴンザレス ほか

日本公開/8月19日(土)新宿バルト9ほか全国ロードショー

配給/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

 

2017年アメリカ映画/スコープサイズ/1時間53分

原題:BabyDriver/字幕翻訳:栗原とみ子

公式サイト