Review

2017.05.03 13:08

『LOGAN/ローガン』に見るヒュー・ジャックマン最後の勇士

  • Mutsuki

2017年6月1日に日本公開されるヒュー・ジャックマン主演映画『LOGAN/ローガン』。映画『X-MEN』シリーズの最新作である本作は、人気キャラクター「ウルヴァリン(通称ローガン)」のスピンオフ第3弾、そして第1作よりこのウルヴァリンを演じ続けていたヒュー・ジャックマンと、プロフェッサーX役のパトリック・スチュワートのシリーズ“卒業作品”としてかねてより注目されていた。コミック「オールドマン・ローガン」を下敷きに、X-MENがいなくなりミュータントが絶滅しかけている世界で、年老いて治癒能力が衰えているウルヴァリン(ローガン)が描かれる。

 

なぜ“ウルヴァリン”ではないのか

本作品中心部にあるのは決してヒロイズムでは無い。人間の部分が占めている。私たちが今まで見てきた不死身のミュータントの面影は一切なく、子供たちを見守り行動してきた教授の影はない。彼らは死に瀕しているこの世界のミュータント達と同様に、命のカウントダウンが始まった弱い存在としての描かれる。

 

©2017 Marvel

 

わずかな生にしがみつくその姿は、忍びないし、かたくなに“ウルヴァリン”の名を否定し続けるローガンの姿は、シリーズを知っている者にとってはショックかもしれない。この映画は、主人公たちをヒーローとしての壮大な姿ではなく、スクリーンの前の私たち人間の姿にまで圧縮させることで、私たちと同様に“無力”であることを訴えてくる。

 

家族愛

X-MENは他のマーベルのヒーローチームとは異なり、「恵まれし子らの学園」(以下:学園)に属しているともいえる。X-MENのメンバーは学園の生徒や教師である。学園は、長い間、行き場をなくしたミュータントの居場所となってきた。このことから学園とX-MENには他のヒーローチーム以上に共同体として、家族的な繋がりが強い組織であった。

 

そのX-MENや学園などの組織を失い、ローガンは完全に孤立している。そんな中でローガンはリムジンのドライバーとして生計を立て、キャリバンとともに年老いたプロフェッサーXを保護している。ローガンの粗野な態度は、ふたりに感情をぶつけて辛辣に当たっているように見えるが、今の彼にとってはこのふたりこそがかけがえのない存在であることは間違いない。

 

この作品のもうひとりの主人公が本作初登場の少女ミュータント、ローラである。彼女の出生はローガンが深く関わっているし、彼女もローガン達との旅で新しい家族となっていく。まるで『レオン』(94年)でナタリー・ポートマンが演じたヒロインの少女のように、彼女にとってもローガンが拠りどころになっていく。ローガン最後の物語であると同時に、新たなる希望の物語でもある。

ウルヴァリンそしてX-MENの集大成(少しネタバレあり)

本作のストーリーは、シリーズに物語的なつながりはほとんどない。これは『X-MEN フューチャー&パスト』(14年)で起こったタイムラインの分岐の応用編とも言える。ひとつ世界にすべて詰め込むのではなく、そのキャラクターや作風に沿った世界観が改めて構築され、X-MENにふれたことがない人でも作品のキャラクターに感情移入ができるようになっている(というより、シリーズのファンにとってはこの映画の序盤はあまり楽しいものではないかもしれない)。

 

©2009 Marvel Characters, Inc.

 

だが、いままでのシリーズの要素が排除されたかというとそうではない。『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』で明かされたローガンの本名“ジェームズ・ハウレット”という名前は、作品のいたるところで目にすることができるし、ローガンの爪はアダマンチウムでコーティングされている。そして何より“アルカリ湖”はローガンにとって心地よい場所ではないようだ。

 

あと忘れてはならないのが小道具のコミック“X-MEN”。メタ的な演出ではあるがこれのおかげでローガンの口からX-MENの存在が明かされたし(その後プロフェッサーが学園を経営していたことも言及されている)、なによりウルヴァリンの登場が一切なかったデッドプールの要素も本作に加わっていることで、映画X-MENシリーズがヒューと共にあり続けたことを改めて示してくれた。

 

これからのX-MEN

本作でヒューがシリーズを卒業するということは、この後の映画でウルヴァリンの活躍は観ることができない可能性が高い(少なくともヒューが演じるものは)。本作も、ヒューが完全にシリーズを去る意気込みで参加していたことがひしひしと伝わってきた。だが本作でX-MENが完全に終わるわけではない。

 

2018年にはX-MENシリーズが3作劇場公開される見込みである。人気ヒーロー“デッドプール”の続編、新世代のミュータント達の戦いを描く『ニュー・ミュータンツ』、『X-MEN:アポカリプス』(16年)の続編『ダーク・フェニックス・サーガ』と、ヒューの卒業の悲しみを吹き飛ばすがごとく怒涛のラッシュが続く。

 

本作の独立性は、意味があるのだ。『フューチャー&パスト』のラスト、新しくなった2023年の世界でウルヴァリンは目覚める。改変前の記憶を持って、学園で。ということは続編の『アポカリプス』以降のタイミングで学園に赴き、X-MENに参加するということになる。『LOGAN/ローガン』として物語は終わるものの、X-MENのどこかにはこれからもウルヴァリンが居続けることができるのではないだろうか。

 

 

元々X-MENのコミックでアメコミに興味を持った私だが、ヒューが演じることが無ければウルヴァリンを好きになることはなかっただろう。従来のファンとしては、ヒュー最後の勇士をしっかりと見収めたい。

 

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©2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

『LOGAN/ローガン』

2029年。ミュータントは絶滅の危機に瀕している。“ウルヴァリン”という名で知られていたローガン(ジェームス・ハウレット)は、テキサスでリムジンの運転手として働きながら、メキシコとの国境近くの工場跡地で、キャリバンとともにチャールズ・エグゼビアの面倒をみていた。だが、ある日、看護婦のガブリエラからローラという名の少女を預けられる。ローラを狙う謎の武装集団に追われる身となるが……。

 

監督・製作総指揮・原案・脚本/ジェームス・マンゴールド

出演/ヒュー・ジャックマン、パトリック・スチュワート、ダフネ・キーン、ボイド・ホルブルック、スティーヴン・マーチャント、リチャード・E・グラント

日本公開/2017年6月1日(木)

公式サイト